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第三章 真実
現実※-②
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「まだ久保から連絡は来てないよ」
「そうですか」
二人は、それを待っていた。
彼だけに期待をするのは危いと分かってはいるが、柚琉がほかで動いている件も、芳しくはないようだ。
それもあってか、彼女はどこかぼうっとして、手持ち無沙汰な様子だった。
「……柚琉」
食事を終えたあと、そんな彼女が膝に頭を乗せてきたから、正臣はぴたりと動きを止めた。
髪を優しく撫でると、気持ち良さそうに顔を擦り付けてくる。
――ちょっと待って。
顔がじわじわと赤くなる。
こんなに甘えられると……。
心臓がぎゅうと締め付けられるような感覚を、いい年して何を、と振り払う。
「先生……」
だが、すでに甘さを含んだ瞳で彼女両手を伸ばしてくるから、頭を抱えたくなった。
(だめだって)
顔を下ろしてその口づけを受け入れる。先ほどの決意が、ぐらりと揺らいだ。
(いや、さすがに、ヤりすぎ)
そう思い、正臣は顔を上げた。彼女が発する甘い空気を振り払うように、テレビのリモコンに手を伸ばす。その瞬間だった。
くすぐったい感触に、正臣は視線を下げて硬直した。
「柚琉」
動きは止まらない。ごそごそと彼女が手を動かす。
「柚琉……こら」
ズボンの前を開き、下着の上から直接顔をこすりつけられて、溜め息が出た。
欲望が熱を持ち、ぐ、固さを増す。
「う」
下着ごと、はむはむと甘噛みされる。もう、別のことなんてできない。だからと言って、彼女を止めることもできない。
いいですか? というように、彼女が首を傾けてこちらを見上げてくる。
正臣は目の下を赤く染めて、彼女を睨んだ。
彼女は目を細めて微笑んだ。下着から出されたそれは、すっかり勃ち上がってしまっている。
その間抜けさに、片手で顔を覆った。
「あ……」
溜め息のような喘ぎ声が漏れる。彼女の口が先端を含んだのだ。
ちゅぷ、ちゅぷ、と小さな水音が部屋に響く。
「う……く……」
彼女の頭を撫でながら、正臣はじわじわと押し寄せる欲望に抗おうとして、そして気づいた。
「ねぇ、……こら」
ちゅぷ、ちゅぷ、と先端を舐める音が続く。柚琉はちらりとこちらを見たが、また目の前のものに視線を戻してしまった。
「それ、わざと……?」
柚琉は答えない。
もう正臣のものは、血管が浮き出て、がちがちに天を向いている。
「先ばっか、やめ……」
とうとう懇願するような声を出すと、彼女が口を離した。
「でも……気持ちよさそうです」
「気持ちいいけどさ、そこばっか丁寧に舐められると、……あ」
嫌そうな口淫ではなく、美味しそうに、丁寧に段のところまで舌を沿わされる。
は、は、と短く息が漏れてきた。
「無理」
「あ……っ」
耐えきれず、彼女を床に押し倒した。
机の引き出しに手を伸ばし、コンドームの箱を取り出す。
「あっ、せんせ……っ」
彼女のズボンを下着ごと引き下ろして足を広げる。
その声は、制止というよりは、期待で漏れた声だった。
「……ったく」
「あああぁ」
そのまま奥まで一気に挿入した。
朝も夜も、二人でいればほとんど交わり続けているから、そこは簡単に正臣のものを飲み込んでしまう。
「こっちも買い足さなきゃ」
箱を振ると、カラカラと一つだけ残ったコンドームが音を立てた。
寝室も脱衣所も、買い足しても買い足してもキリがない。
「困ったね」
「あ……っ、あ~~ッ」
腰を動かしてやると、ぶんぶんと首を振って喘ぐ。その快楽に浸る表情に、ぞくぞくっ、と背筋が震えた。
(今は、仕方ない)
正臣はそう自分に言い訳をして、この甘い幸福を享受することにした。
おそらくこれは、彼女にとって束の間の現実逃避だ。
「そうですか」
二人は、それを待っていた。
彼だけに期待をするのは危いと分かってはいるが、柚琉がほかで動いている件も、芳しくはないようだ。
それもあってか、彼女はどこかぼうっとして、手持ち無沙汰な様子だった。
「……柚琉」
食事を終えたあと、そんな彼女が膝に頭を乗せてきたから、正臣はぴたりと動きを止めた。
髪を優しく撫でると、気持ち良さそうに顔を擦り付けてくる。
――ちょっと待って。
顔がじわじわと赤くなる。
こんなに甘えられると……。
心臓がぎゅうと締め付けられるような感覚を、いい年して何を、と振り払う。
「先生……」
だが、すでに甘さを含んだ瞳で彼女両手を伸ばしてくるから、頭を抱えたくなった。
(だめだって)
顔を下ろしてその口づけを受け入れる。先ほどの決意が、ぐらりと揺らいだ。
(いや、さすがに、ヤりすぎ)
そう思い、正臣は顔を上げた。彼女が発する甘い空気を振り払うように、テレビのリモコンに手を伸ばす。その瞬間だった。
くすぐったい感触に、正臣は視線を下げて硬直した。
「柚琉」
動きは止まらない。ごそごそと彼女が手を動かす。
「柚琉……こら」
ズボンの前を開き、下着の上から直接顔をこすりつけられて、溜め息が出た。
欲望が熱を持ち、ぐ、固さを増す。
「う」
下着ごと、はむはむと甘噛みされる。もう、別のことなんてできない。だからと言って、彼女を止めることもできない。
いいですか? というように、彼女が首を傾けてこちらを見上げてくる。
正臣は目の下を赤く染めて、彼女を睨んだ。
彼女は目を細めて微笑んだ。下着から出されたそれは、すっかり勃ち上がってしまっている。
その間抜けさに、片手で顔を覆った。
「あ……」
溜め息のような喘ぎ声が漏れる。彼女の口が先端を含んだのだ。
ちゅぷ、ちゅぷ、と小さな水音が部屋に響く。
「う……く……」
彼女の頭を撫でながら、正臣はじわじわと押し寄せる欲望に抗おうとして、そして気づいた。
「ねぇ、……こら」
ちゅぷ、ちゅぷ、と先端を舐める音が続く。柚琉はちらりとこちらを見たが、また目の前のものに視線を戻してしまった。
「それ、わざと……?」
柚琉は答えない。
もう正臣のものは、血管が浮き出て、がちがちに天を向いている。
「先ばっか、やめ……」
とうとう懇願するような声を出すと、彼女が口を離した。
「でも……気持ちよさそうです」
「気持ちいいけどさ、そこばっか丁寧に舐められると、……あ」
嫌そうな口淫ではなく、美味しそうに、丁寧に段のところまで舌を沿わされる。
は、は、と短く息が漏れてきた。
「無理」
「あ……っ」
耐えきれず、彼女を床に押し倒した。
机の引き出しに手を伸ばし、コンドームの箱を取り出す。
「あっ、せんせ……っ」
彼女のズボンを下着ごと引き下ろして足を広げる。
その声は、制止というよりは、期待で漏れた声だった。
「……ったく」
「あああぁ」
そのまま奥まで一気に挿入した。
朝も夜も、二人でいればほとんど交わり続けているから、そこは簡単に正臣のものを飲み込んでしまう。
「こっちも買い足さなきゃ」
箱を振ると、カラカラと一つだけ残ったコンドームが音を立てた。
寝室も脱衣所も、買い足しても買い足してもキリがない。
「困ったね」
「あ……っ、あ~~ッ」
腰を動かしてやると、ぶんぶんと首を振って喘ぐ。その快楽に浸る表情に、ぞくぞくっ、と背筋が震えた。
(今は、仕方ない)
正臣はそう自分に言い訳をして、この甘い幸福を享受することにした。
おそらくこれは、彼女にとって束の間の現実逃避だ。
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