それでも彼は幸せという

雪咲 彩

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2 家族の崩壊と対立

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 優子は入院をすることになった今、サヤ子は優子の看病をするということで、付きっきりの生活となった。

 修一さんは、きみ子を見ることもできたが、サヤ子さんは、みやこさんに頼んで、きみ子と過ごす日々となった。

 きみ子さんは、この時、小学校三年生。九歳になる。一方の優子さんは、幼稚園、年少で三歳くらいだ。

 きみ子は小学校三年生で一番大事な時期でもある。早い人だと、もう思春期に入るころだ。その時期に、母親のサヤ子は、優子の看病で手がいっぱいなために、母親の存在は、ほぼないに等しい。


 学校行事では、サヤ子の母親、みやこさんが、きみ子を見ているがために、きみ子にとっては、みやこさんは母親同然みたいな存在になっていた。

 きみ子は、実の母親であるサヤ子を、母親とはあまり思えなくなっていた。学校行事に来てほしくない人もいるだろう。でもやっぱり、一回は自分の良いところや頑張っているところをみせてあげたい。

 運動会なら一番を取る姿。競技大会では優勝でなくても、優勝を取りに行く姿など、この年頃となれば親の存在というのはとても大きい。サヤ子は優子の看病により、学校行事の参加は実現しなかった。

 それもあって、きみ子さんは実の母親に頼ることをやめて、自分の力で生きていこうと、小学校三年生の九歳の幼い時期から決めてしまったのだ。その影響は、家族関係にも影響した。



 優子は一向に治らない病気。病院や母親、サヤ子のがんばりにより、優子の長い闘病生活は終わりを迎えた。

 サヤ子の看病が終わると、優子と、サヤ子は、いつもの日常生活に戻るかと思いきやそうではなかった。それは、とても長い年月もの間、続くことを誰も想像しなかっただろう。



 優子は幼稚園をあまり行かないまま小学校に入学した。きみ子は小学校六年生になっていた。それまでは、サヤ子が優子を見ていて、みやこさんは、きみ子を見てきた。

 そして、日常生活に戻った今、優子に付きっきりで看病をしていたサヤ子が突然、きみ子に対して親面してきたのだ。周りから見れば、それが普通のことだと思うだろう。だが、きみ子にしてみれば、それは違っていたのだ。

 

 大事な時期に、サヤ子は優子に看病していたため、親が必要なきみ子のもとには、サヤ子はいなかった。そんな状況下で、サヤ子の母親の、みやこさんに育てられていたがために、このような状態になってしまった。それからは、きみ子はサヤ子に対して反共的な態度をとるようになった。結果、もう前のような日常生活に戻ることはなかった。



 みやこさんと、サヤ子の、子育ては当たり前だが違い、食い違う場面も出てくる。突然、サヤ子は、きみ子に対し、サヤ子の子育て方針に従わなければならない。そうとなれば、きみ子にしてみれば反抗的な態度が出るのも仕方ない。

 サヤ子と、きみ子は性格が似ているがあまり、余計に両者ともに反抗的な態度が飛び交う。それが、日常茶飯事になってしまった。

 優子もその姿を見ることはよくあった。優子はそこに口を挟むことはせず、ただただ、時間が過ぎるのを待つしかなかった。それは修一も同じだ。仮に止めたとしても、その争いが収まることがないのは直感でわかっていたからだ。



 きみ子は、どの子よりも早く小さいころから大人になっていた。すべて自分でやらなければいけない。やらないと誰もやってくれない。そう決意し、今まで育ってきたのだ。

 優子からしたら、きみ子は、面倒見の良い姉と思っていた。姉のきみ子も、可愛い妹としてよくお世話をしていた。学校の帰りが遅かったら、待っていた。何か忘れ物があるなら届けてくれた。姉妹としては仲が良かった。



 一方で、みやこさんと、サヤ子は違っていた。対立がうまれてしまったのだ。

 もともと、サヤ子は実の母親、みやこさんのことを、あまり頼りない人と思っていた。そんなみやこさんが、きみ子を甘えやかし、実の子のように育てていた。サヤ子は優子の看病をしている間、 サヤ子は、みやこさんに対して、

 「反抗的になったのも、お母さん(みやこさん)の責任だ」 

 そう言い放ってしまったのだ。



 そんなつもりではないと、みやこさんは思ったかもしれない。しかし、サヤ子にしてみれば「実の子」に対して、反発してしまった原因はみやこさんにあると思ってしまったのだ。

 客観的に見ればサヤ子さんの印象は良くないかもしれない。家庭を離れている時間が長いがための食い違い、きみ子さんを一人にしてしまった時間が長すぎた。それが、原因の一つなのかもしれない。



 それからというと、サヤ子はきみ子に物事を言っても言い返すだけで、分かり合うことはできないと悟ったのか、それ以降はきみ子に対しては、何にか特別なことをすることはなかった。

 同じくきみ子も、サヤ子と同じ考えだった。何かを言えば、必ず反抗的なことが返ってくる。だから、サヤ子に対して何もしなくなってしまった。それは、本当に長い、長い年月が幕を開けたのだった。
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