3 / 4
第1章
第3話 羽生飛鳥さんのカエル化のお話
しおりを挟む
「それじゃぁ、心して聞けよ」
「はい」
羽生さんは、少し声を低くして話し出す。
重苦しい語り口調に、僕はゴクッと息を呑んだ
「俺がカエルになった時、偶然、隣に四聖賢者のオッサンがいて<<人間に戻る方法>>を教えてもらったのだ。以上!」
「……試練は?」
「ないな!」
なんだそれ!?
ズルくねぇ?
「ズルくないっすかね?」
「なんでだ? 偶然、四聖賢者のおっさんの側でカエルになっちまったんだから、仕方ないだろう?」
「そうかもしれないっすけどぉー。納得いかねー!」
ジトッとした目線を羽生さんに送りつける
「で、肝心の<<人間に戻る方法>>は、結局何なんですか?」
「ああ、それはな。ほれ、そこに人間のお前が寝ているだろう?」
「ええ、居ますね」
「アレを喰えば元に戻れるらしいぜ?」
「はぁ?」
「だから、カエル化した人間が元に戻るには、自分自身、つまり人間の自分を喰えばいいってことだな」
「無理ゲーじゃないっスか?」
「ああ、だから俺は諦めたね」
「……」
どう考えても無理だろう?
大体にして、サイズ的に無理な話だと思う。
なんか今は、そのことを考えたくなくなるなー。
うん。ちょっと、話を変えよう
「そういや羽生さんって、どういう状況でカエルになったんですか?」
「ああ、それ聞いとく?」
「ええ、聞きたいですね」
「ふむ。いいだろう。なんせ暇だしな!」
少し長くなりそうなので、僕らはよくあるインドネシアだかのカエルの置物の如く、水槽に設置されている木に並んで腰掛けた。
普通のカエルに出来る姿勢では無い気がするけれど、そこら辺は人間の思考があるからか、やろうと思えば出来るらしいかった。
「それじゃぁ話すが、アレは21年前……」
「はいストップ!」
「なんだよー。いきなり話を折るなよな!」
「長くないっすか!? 21年前って……どんだけカエルやってんすか」
「だから21年間だろうが」
「あ、そうか、そりゃそうだ。スンマセン」
「うむ」
「つーか、羽生さんって何歳なんですか?」
「38歳になるな。17んときにカエルになったからな」
「なんかスイマセン……生意気な口を聞いてしまって……」
「気にするな。俺はお前のペットだったわけだし?」
そうか、よく考えれば、俺は30代後半のおっさんを飼育していたってわけだ……なんか妙に気分が沈んだ
「話を戻すぞ? 21年前、17歳だった俺は、地元の茨城県の河原でカエルに餌をやっていたのだよ」
「カエルが好きなんですねー」
「いや大っ嫌いだな!」
「意味がわかんねっす」
「俺はな、カエルが本当に苦手でな。奴らを見ると悲鳴を上げてしまうぐらい嫌いだったんだよ」
「でも餌をあげていたんですよね?」
「俺にはそん時、彼女がいてなぁ。そいつと河原で歩いていた時、カエルが飛び出てきやがってな、案の定、俺は女の子みたいな悲鳴を上げちまったってわけだ。硬派な不良を気取っていた俺がだぜ?」
「彼女さんはドン引きっすスね。あ、あと彼女がいたってところに憎しみを覚えました」
「それで、あっけなく振られちまってなぁ。だから俺はカエル嫌いを克服したくなって、近所のペットショップでカエルの餌……ペレットっていうの? 固形の餌を買ってきて、河原でカエルに餌付けしてみようと思ったわけだ」
「なるほど、カエルに慣れていこうって思ったわけですね」
「うむ。だが俺は飛び出てきた大量のガマガエルに気絶しちまったわけだ」
「うわーダセぇ……」
「返す言葉もないな! それで目を覚ましたらガマガエルになっていて、隣に四聖賢者のオッサンがいたから、その人に色々教わって生きてきたってわけだ」
「た、大変でしたね……」
「んー賢者のオッサンがいなかったら、大変だったろうなぁ……多分すぐに死んでたんじゃないかな? オッサンの脛かじって生きてたから、お前が思うほど大変じゃなかったな」
「不幸中の幸いってやつですね」
「まぁな。そんで3年前だっけか? 高校生だったお前にその河原で捕まって、今に至るって感じだな」
「ほんとスイマセンでした」
「いやいや、外で生きるよりも快適な生活だったぜ? 基本食っちゃ寝してりゃいいわけだし」
「そういってもらえると救われます……ん」
ちょっと待て!
ってことはだ……色々マズくないか?
「あの……ということはですね」
「なにかな?」
羽生さんがニヤニヤしている。
僕が言いたいことが分かっている顔だ……
「僕の多感な高校時代のアレヤコレヤを、全部……見てきたってことッスよね?」
「ギャッハッハ! そうだぞぉ……そういうことだぞぉ……あんなことやこんなこと、全部見てきたぜ!!」
「うわぁぁぁあああ」
死にたい。
誰か僕を殺して下さい!!
「はい」
羽生さんは、少し声を低くして話し出す。
重苦しい語り口調に、僕はゴクッと息を呑んだ
「俺がカエルになった時、偶然、隣に四聖賢者のオッサンがいて<<人間に戻る方法>>を教えてもらったのだ。以上!」
「……試練は?」
「ないな!」
なんだそれ!?
ズルくねぇ?
「ズルくないっすかね?」
「なんでだ? 偶然、四聖賢者のおっさんの側でカエルになっちまったんだから、仕方ないだろう?」
「そうかもしれないっすけどぉー。納得いかねー!」
ジトッとした目線を羽生さんに送りつける
「で、肝心の<<人間に戻る方法>>は、結局何なんですか?」
「ああ、それはな。ほれ、そこに人間のお前が寝ているだろう?」
「ええ、居ますね」
「アレを喰えば元に戻れるらしいぜ?」
「はぁ?」
「だから、カエル化した人間が元に戻るには、自分自身、つまり人間の自分を喰えばいいってことだな」
「無理ゲーじゃないっスか?」
「ああ、だから俺は諦めたね」
「……」
どう考えても無理だろう?
大体にして、サイズ的に無理な話だと思う。
なんか今は、そのことを考えたくなくなるなー。
うん。ちょっと、話を変えよう
「そういや羽生さんって、どういう状況でカエルになったんですか?」
「ああ、それ聞いとく?」
「ええ、聞きたいですね」
「ふむ。いいだろう。なんせ暇だしな!」
少し長くなりそうなので、僕らはよくあるインドネシアだかのカエルの置物の如く、水槽に設置されている木に並んで腰掛けた。
普通のカエルに出来る姿勢では無い気がするけれど、そこら辺は人間の思考があるからか、やろうと思えば出来るらしいかった。
「それじゃぁ話すが、アレは21年前……」
「はいストップ!」
「なんだよー。いきなり話を折るなよな!」
「長くないっすか!? 21年前って……どんだけカエルやってんすか」
「だから21年間だろうが」
「あ、そうか、そりゃそうだ。スンマセン」
「うむ」
「つーか、羽生さんって何歳なんですか?」
「38歳になるな。17んときにカエルになったからな」
「なんかスイマセン……生意気な口を聞いてしまって……」
「気にするな。俺はお前のペットだったわけだし?」
そうか、よく考えれば、俺は30代後半のおっさんを飼育していたってわけだ……なんか妙に気分が沈んだ
「話を戻すぞ? 21年前、17歳だった俺は、地元の茨城県の河原でカエルに餌をやっていたのだよ」
「カエルが好きなんですねー」
「いや大っ嫌いだな!」
「意味がわかんねっす」
「俺はな、カエルが本当に苦手でな。奴らを見ると悲鳴を上げてしまうぐらい嫌いだったんだよ」
「でも餌をあげていたんですよね?」
「俺にはそん時、彼女がいてなぁ。そいつと河原で歩いていた時、カエルが飛び出てきやがってな、案の定、俺は女の子みたいな悲鳴を上げちまったってわけだ。硬派な不良を気取っていた俺がだぜ?」
「彼女さんはドン引きっすスね。あ、あと彼女がいたってところに憎しみを覚えました」
「それで、あっけなく振られちまってなぁ。だから俺はカエル嫌いを克服したくなって、近所のペットショップでカエルの餌……ペレットっていうの? 固形の餌を買ってきて、河原でカエルに餌付けしてみようと思ったわけだ」
「なるほど、カエルに慣れていこうって思ったわけですね」
「うむ。だが俺は飛び出てきた大量のガマガエルに気絶しちまったわけだ」
「うわーダセぇ……」
「返す言葉もないな! それで目を覚ましたらガマガエルになっていて、隣に四聖賢者のオッサンがいたから、その人に色々教わって生きてきたってわけだ」
「た、大変でしたね……」
「んー賢者のオッサンがいなかったら、大変だったろうなぁ……多分すぐに死んでたんじゃないかな? オッサンの脛かじって生きてたから、お前が思うほど大変じゃなかったな」
「不幸中の幸いってやつですね」
「まぁな。そんで3年前だっけか? 高校生だったお前にその河原で捕まって、今に至るって感じだな」
「ほんとスイマセンでした」
「いやいや、外で生きるよりも快適な生活だったぜ? 基本食っちゃ寝してりゃいいわけだし」
「そういってもらえると救われます……ん」
ちょっと待て!
ってことはだ……色々マズくないか?
「あの……ということはですね」
「なにかな?」
羽生さんがニヤニヤしている。
僕が言いたいことが分かっている顔だ……
「僕の多感な高校時代のアレヤコレヤを、全部……見てきたってことッスよね?」
「ギャッハッハ! そうだぞぉ……そういうことだぞぉ……あんなことやこんなこと、全部見てきたぜ!!」
「うわぁぁぁあああ」
死にたい。
誰か僕を殺して下さい!!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

ある平民生徒のお話
よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。
伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。
それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

幻獣使いの英雄譚
小狐丸
ファンタジー
昔世界を救う為に戦った英雄が、魔物に襲われた事が原因で亡くなった娘の忘れ形見の赤ん坊を育てることになる。嘗て英雄だった老人は、娘の二の舞にせぬよう強く育てることを決めた。英雄だった老人と嘗ての仲間に育てられた少年は、老人の予想を超えて成長していく。6人の英雄達に育てられたチートな少年が、相棒の幻獣や仲間達と大きな力に立ち向かう。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる