君とリスタート〜剣士様は抱き枕を所望する〜

愛宮

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第四話「雑談は団子を食べながら」

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ラビア国、国王陛下の第三女、サクラコ。
淑やかで穏やかで、笑顔に可憐さがある美しいお姫様。
しかし、婚約者と正式に夫婦契約間際に、サクラコは城からその姿を忽然と消した。

国全土にサクラコ姫の失踪は伝えられた。
有力な情報提供者には報奨金が贈られると言うのもあり、サクラコ捜索に沢山の者達が参加協力したが、数ヶ月経ってもサクラコの所在を掴める者は居なかった。

そしてある日、ラビア城にサクラコから手紙が届けられた。
それは、魔王城に居ると言う知らせだった。
内容も驚くべき物だったが、相手が相手なだけに、国王も慎重に動かざる終えず、腕が確かな信頼ある者達だけを召集し、協力を求めた。

姫の安否は勿論、手紙の内容の真偽を見極めて欲しいと。


*****


「そういやさ、シオンは何であんな森を通ってたんだ?」

道中で買った焼き団子を頬張りながら、何気なしにライが問う。

「王都に行く途中だったの。あの森、近道だから通ろうと思ったら迷った」
「王都に?」
「仕事よ。王都に入り、人間が魔族に対する好感度を調査する様に頼まれたの」
「色んな任務があるんだな。でもさ、警備隊の移動手段って相棒の魔鳥で空を飛んで移動するんじゃなかったっけ?」
「・・・」
「・・・?」
「ま、魔王様が、急ぎじゃないから、旅気分でゆっくり調査しておいでと言って下さったから、お言葉に甘えさせて貰おうかと思って」
「もしかして、高い所、苦手だったりする?」
「・・・」
「当たりか」

ライに弱点を見事に言い当てられ、シオンは恥ずかしげに顔を染める。
俯き加減のまま、シオンは拗ねた目でライに上目遣いで睨む。

「誰にだって苦手な事はあるでしょ?空移動は、どうしても酔うし目は回るしで・・・その、やっぱり怖くて。克服しようと努力したけど、難しくて」
「・・・」
「ライ?」
「その上目遣い、癖になりそう」
「え?あ、そうだ、ライに教えておきたい事があったんだった」
「何?」

もし、この事実を教えたら、惚れ薬なんて手間が掛かる作業をする事なく、ライはサクラコを諦めてくれるのではと、そんな期待を込めながらシオンは述べる。

「サクラコは別に無理して魔王城に居るわけじゃないわ。サクラコは魔王様の“運命の番“で、夫婦として魔王城で暮らしてるの」
「らしいな、手紙にもそう書いてあったみたいだし」

団子を齧りながら、ライは淡白な反応を見せる。

シオンは足を止めると、あからさまに不機嫌顔をしてライを睨む。

「サイッテー。想い合う二人を強引に引き離そうと、魔王城を目指してたんだ。ライは遊び人だけど、心根はいい奴だと思ってたのに、むぐっ」

シオンの口元に、食べ掛けの団子が押し付けられる。
ライは受け取れとばかりに、シオンの手を掬い持ち上げ、団子の串を持つ様に促す。
仕方なしに、シオンは団子を受け取り、小口で団子を食べ始める。

「手紙が届いて、そう書いてあったとしても、それが真実かどうか定かではないだろ?もしかして、魔王に脅されて無理矢理そう書かされたとも限らない」
「魔王様はそんな事しません!とてもお優しい方です!」
「可能性の話だよ。国王も、頭ごなしに手紙を否定している訳じゃない。魔王一派が平和主義者と言う事も理解してるさ。でも、父親なんだよ、娘が心配で仕方ないんだ。姫を連れ帰り、姫の口から直接真実を告げれば、国王も安心するだろ。王も優しい人だ、姫の意思を邪険にする事はないさ」
「なら、私がサクラコにその旨を説明し、一度ラビア城に戻って頂けないかと頼んでみる。なので、後は私を信頼して任せて欲しい。だからライは、此処で引き返して」
「それとこれとは話が別」
「何で?」
「姫と一緒に、ラビア城に戻るって事に意味があるの。じゃないと褒美が貰えないからな?」
「・・・守銭奴め」
「さっさと気楽な隠居生活を楽しみたいんでね」
「怠け者なんだから。まだライが女性だったら、魔王城に客として招く事も可能な範囲内だったんだけどな」
「どういう事?」
「魔王様ね、サクラコに男性が近づくと心配の余り、身が入らず上の空状態になって、業務に支障をきたす程、可哀想な事になるの」
「可愛い魔王だな」
「えぇ、とても可愛らしいわ、捨てられる事に不安がる子猫の様。でも、サクラコが関わらなければ、とっても素敵で格好いい方よ、魔王様は」
「・・・へぇ、そう」

要らぬ不安を与え、魔王の心を乱して欲しくないシオンは、やっぱりライにはサクラコの事を諦めて貰うしかないなと、改めて思うのだった。
シオンの惚れ薬作戦はまだまだ継続されそうだ。

「シオン、俺の前で魔王を褒めるな」
「どうして?魔王様は素敵な方だし、ライにも魔王様の魅力を感じて欲しいんだけど」

ライは、焼き団子を口に含み、モクモク食しているシオンの唇に強引に口付ける。
驚ろくシオンをお構いなしに、舌を捩じ込ませ、団子を一緒に味わい出す。

「魔王自慢する度に、口付け一回な」

唇が離れたと思うと、憎たらしい顔付きでライがそう告げる。

「わ、私、初めてだったのに・・・」
「シオンの初めては、既に出会い頭のあの森で奪っているから、そう気にするな」
「狼でももう少し自重するわよ、この阿保、助平!!」


第四話「雑談は団子を食べたながら」終
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