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王道少女には敵いません、と思っていたけれど(高校生、三角関係?)

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今、先程、彼氏に振られました。
理由は至ってシンプル、他に好きな人が出来たから、である。

彼は、所謂かっこいい問題児。
見た目の良さが飛び抜けて良い。
ただ助平な遊び人で、彼女を取っ替え引っ替え。
深入りを好まず、淡い付き合いを好むタイプ。

どうして、そんな人を好きになってしまったのか、自分でも訳分からない。
無謀なのは最初から知っていた。
けど、努力だけはしてみようかなって思ったの。
黒髪は茶髪に変え、眼鏡はコンタクトへ。
校則違反にならない程度には、化粧も覚えた。
性格も、ラフな感じに作り変えてみた。
とにかく、彼好みの、束縛しない軽い女を私なりに演じてみる事にした。

当たって砕けろな心意気に告白したら、まさかのOKで驚いた。
タイミングよく、前の彼女と別れたかったから丁度良いとの事だ。

OKは貰ったが、おそらく私も短い付き合いでお別れさせられるんだろうな、思っていた・・・が、何やかんやで半年。
逆に周りから「最長記録おめでとう」と拍手を頂いてしまった。
半年も付き合って入れば、行事毎のイベントや、それなりに男女の情事は経験するものだ。
私の初めては、全てその彼が奪って行った。

そして訪れた、最終通告ーーーー「ごめん、好きな子が出来たみたいだ」
改めて、楽しかったのは私だけだったのだと、思い知らされた瞬間だった。

彼が好きになった子は、一つ下の後輩。
よくある少女漫画の様な展開だ。
モテ男で難破な男子が、素っ気ない態度をされたり、自分に興味を持たない素朴女子に出会い、今まで周りに居なかったタイプだと関心を持ち、恋に落ちてしまった、と言う事が彼の身に起こったらしい。

遊び人を惚れさせた子って事で、良い意味でも悪い意味でも、注目の的になってるその少女。
私も遠目で見ただけだけど、小柄で、表情が動かない少女に思えた。
なんだか、守ってあげたくなる様な可愛らしさがある。
彼は、その少女を構いに行っては、振られている様だ。


*****


本当に世の中、タイミングというものは恐ろしい。
放課後、裏庭、ゴミ捨てに行けば、髪の毛から爪先まで水浸しになっている、その少女。
彼のファンからの嫌がらせにでもあったのだろうか。

「えっと、大丈夫?」

思わず声を掛けてしまった。
その少女が私を見る。
悲しんでる様にも、困った様にも見えず、どうにもこうにも感情が読み取れない。

「大丈夫です、お気遣いなく」

アルトボイスの聞き取りやすい綺麗な声。

「大丈夫じゃないから、こっち来て」

強引に腕を引っ張り、部室へと。
予備の私のジャージがあった筈。

「これに着替えて」
「ほんと、大丈夫なんで」

ジャージとタオルを、少女へと渡す。
微動だにしない少女。
遠慮しなくいいのに。

「先輩って良い人ですね。あの煩い人の元カノさんでしょ?」
「煩い人って、まぁそうね」
「そんな良い人な先輩を見込んで。是非、俺の協力者になって貰えませんか?行方知れずとなった姉探しに協力して欲しいんです」
「はい?俺?姉?協力?」

私は今、このびしょ濡れの少女から何を聞かされているんだ。

「俺、九条クジョウノゾムと言います。九条ヒジリの弟です、本年齢は13歳の中学二年生です」
「ん?」

あれ?もしかして私、とんでも事案に巻き込まれそうになってたりする?



《了》
設定考えて、出だしだけ書いたら満足してしまったのでショートストーリーの中で保存させて貰いました。
姉探しの女装男子に巻き込まれる、女主人公と、女装男子に恋してしまった女主人公の元彼。
最終的には、女主人公と元彼が色々有り再び恋人関係に戻るけど、愛情の深さ加減が逆転してる的な。
元彼について遊び人の様に書いてますが(出だしでは裏事情まで書けないので)、彼なりの複雑事情を抱える良い奴なのです。
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