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天然娘と悪い魔法使いの話(おとぎ話風、歳下少年、片恋)
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森の奥にある小屋。
そこでは、娘が一人で暮らしている。
「あら、いらっしゃい。悪い魔法使いさん。ちょうどね、クッキーを焼き上がったとこなの。どうぞあがって」
「そうです、僕は悪い魔法使いなんですよ。そんな相手を気軽に招いてはいけません!」
僕は、このシルク姉様に眠りの梨を食べさせに来た悪い魔法使い。
本当は僕だってしたくないさ、そんな事。
だけど、王様から依頼料をたんまり頂いてしまったんだ、僕の親が。
「大変ですね、『悪い魔法使い』と言う家業は。大丈夫ですよ、先に王宮より頼りを頂いて居るので、事情は把握しています。貴方を困らせる事は致しません。その梨は美味しく頂戴します。その代わり、私のクッキーも召し上がって下さいね、自信作なの」
「シルク姉様が眠っている間、君の身の安全は保障するから。本当にごめんなさい」
「王命じゃ仕方有りませんよ、貴方も、私もね」
シルク姉様は僕から梨を受け取り、一口かじる。
眠りに落ちる間際、優しい笑顔を僕に向けてくれた。
「おやすみシルク。良い夢を」
僕は、シルク姉様をベッドに寝かせ、キッチンに向かう。
皿の上には出来立てのクッキー。
「おいしそ、頂きます」
相変わらず、シルク姉様のクッキーは子供用で甘すぎる。
*****
シルク姉様は今より10年の時を止め、運命の王子様の口づけで目を覚ます。
そしてシルク姉様と王子様は結ばれハッピーエンド。
となる予定だった。
*****
「ん~よく寝た。10年経ったのかしら」
「おはよ、シルク」
「・・・え?どちらさま?王子様?でも、誰かに似てる様な」
「悪い魔法使いのファイです」
「大人になってる」
「10年後ですからね。今では、俺の方が年上ですよ」
俺の幼なじみで同い年だった王子は、可愛らしいシルクに恋をした。
けれどシルクは僕らよりも6つも上で子供扱い。
それを気にくわなかった王子は、シルクを眠らせる事にした、父である王におねだりして。
でもま、10年間色々あり、王子は結局別の方を妃に選んだのだけど。
「ファイが起こしてくれたの?その、キスで?」
「俺じゃ不服ですか?」
「ふふ、嬉しい」
10年ぶりに見る彼女の笑顔。
寝顔も嫌いじゃないけど、やっぱり笑顔の方が似合う。
でも、大人になった俺は、君の笑顔だけでは満足出来ないらしい。
起きたばかりのシルクに跨がり、再び彼女をベッドに沈める。
「え?え?ファイ?」
俺を異性として認識して貰わないと。
子供扱いはされたくないんでね。
「クッキーに仕込んであった惚れ薬のせいで、俺は10年間、貴女の事を思わない日はなかった。俺の心を束縛した責任、とって下さいね」
惚れ薬なんて小細工しなくても、俺はずっと貴女を好いてましたけどね。
「ご、ごめんね、ファイ君。怒ってるよね?でも、10年間を思うと不安だったんだもの、誰も私に関心を持ってくれず、放置されるんじゃないかって。別にファイを束縛したかった訳じゃないの、許して?」
「・・・」
シルクは、やっぱりシルクだ。
あの惚れ薬に、もしかしたら特別な意味があったんじゃないかって、勝手に思いこんで舞い上がっていた自分に泣けてくる。
関心を持ち続けてくれる相手なら、誰でも良かったってか?
「でも、こうやって押し倒されるとドキドキするね。ファイ、凄く格好良くなったし」
「・・・シルク。いい加減に、危機感と言うものを身につけて下さい。今、貴女は男に押し倒されてるんですからね。迂闊な発言はしない」
「ファイ、私、お腹空いちゃった」
俺はまた、この天然娘に振り回される日々が始まる予感がした。
まぁ悪くはないけど。
「腹ごしらえしたら続きしようね、ファイ」
何の?
了
細かい設定は特に考えず書いたもの。
そこでは、娘が一人で暮らしている。
「あら、いらっしゃい。悪い魔法使いさん。ちょうどね、クッキーを焼き上がったとこなの。どうぞあがって」
「そうです、僕は悪い魔法使いなんですよ。そんな相手を気軽に招いてはいけません!」
僕は、このシルク姉様に眠りの梨を食べさせに来た悪い魔法使い。
本当は僕だってしたくないさ、そんな事。
だけど、王様から依頼料をたんまり頂いてしまったんだ、僕の親が。
「大変ですね、『悪い魔法使い』と言う家業は。大丈夫ですよ、先に王宮より頼りを頂いて居るので、事情は把握しています。貴方を困らせる事は致しません。その梨は美味しく頂戴します。その代わり、私のクッキーも召し上がって下さいね、自信作なの」
「シルク姉様が眠っている間、君の身の安全は保障するから。本当にごめんなさい」
「王命じゃ仕方有りませんよ、貴方も、私もね」
シルク姉様は僕から梨を受け取り、一口かじる。
眠りに落ちる間際、優しい笑顔を僕に向けてくれた。
「おやすみシルク。良い夢を」
僕は、シルク姉様をベッドに寝かせ、キッチンに向かう。
皿の上には出来立てのクッキー。
「おいしそ、頂きます」
相変わらず、シルク姉様のクッキーは子供用で甘すぎる。
*****
シルク姉様は今より10年の時を止め、運命の王子様の口づけで目を覚ます。
そしてシルク姉様と王子様は結ばれハッピーエンド。
となる予定だった。
*****
「ん~よく寝た。10年経ったのかしら」
「おはよ、シルク」
「・・・え?どちらさま?王子様?でも、誰かに似てる様な」
「悪い魔法使いのファイです」
「大人になってる」
「10年後ですからね。今では、俺の方が年上ですよ」
俺の幼なじみで同い年だった王子は、可愛らしいシルクに恋をした。
けれどシルクは僕らよりも6つも上で子供扱い。
それを気にくわなかった王子は、シルクを眠らせる事にした、父である王におねだりして。
でもま、10年間色々あり、王子は結局別の方を妃に選んだのだけど。
「ファイが起こしてくれたの?その、キスで?」
「俺じゃ不服ですか?」
「ふふ、嬉しい」
10年ぶりに見る彼女の笑顔。
寝顔も嫌いじゃないけど、やっぱり笑顔の方が似合う。
でも、大人になった俺は、君の笑顔だけでは満足出来ないらしい。
起きたばかりのシルクに跨がり、再び彼女をベッドに沈める。
「え?え?ファイ?」
俺を異性として認識して貰わないと。
子供扱いはされたくないんでね。
「クッキーに仕込んであった惚れ薬のせいで、俺は10年間、貴女の事を思わない日はなかった。俺の心を束縛した責任、とって下さいね」
惚れ薬なんて小細工しなくても、俺はずっと貴女を好いてましたけどね。
「ご、ごめんね、ファイ君。怒ってるよね?でも、10年間を思うと不安だったんだもの、誰も私に関心を持ってくれず、放置されるんじゃないかって。別にファイを束縛したかった訳じゃないの、許して?」
「・・・」
シルクは、やっぱりシルクだ。
あの惚れ薬に、もしかしたら特別な意味があったんじゃないかって、勝手に思いこんで舞い上がっていた自分に泣けてくる。
関心を持ち続けてくれる相手なら、誰でも良かったってか?
「でも、こうやって押し倒されるとドキドキするね。ファイ、凄く格好良くなったし」
「・・・シルク。いい加減に、危機感と言うものを身につけて下さい。今、貴女は男に押し倒されてるんですからね。迂闊な発言はしない」
「ファイ、私、お腹空いちゃった」
俺はまた、この天然娘に振り回される日々が始まる予感がした。
まぁ悪くはないけど。
「腹ごしらえしたら続きしようね、ファイ」
何の?
了
細かい設定は特に考えず書いたもの。
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