小さなお嬢様が繋ぐ、エリート医師とのお隣生活 

ささきさき

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23:三度目の夜

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 コンドームが入った袋を手に、武流が気恥ずかしそうに、それでいてどこか嬉しそうな苦笑を浮かべた。

「俺も用意していたんです。凪咲さんの体の負担もあるし、……それに心のどこかでまた貴女を抱きたいと思っていたから」
「……武流さん」
「俺の独りよがりになったらどうしようとか、用意したことで凪咲さんに引かれたらどうしようとか、そういう事も考えていたんです。だから、凪咲さんも『次』を考えてくれていて良かった」

 武流がはにかむように笑う。年上なのにあどけなく感じさせる照れ笑い、それでいて彼の手にはコンドームがある。
 そのギャップは凪咲まで気恥ずかしくさせてしまう。武流の気持ちも嬉しく、そして同じことを考えていたことが面白く、凪咲もまた小さく笑みを零した。
 ベッドの上で肌を晒しながらコンドームについて話すのは恥ずかしい。だが今はこの恥ずかしさすら心地良い。

 そんな心地良さを感じていると、武流がそっと身を寄せてキスをしてきた。慌てる凪咲を宥める時の軽いキスではなく、時間を掛けた、深いキス。
 部屋の中に満ちていた穏やかな空気が毛色を変える。密事の再開を感じさせる艶めかしい空気に、凪咲は解放された唇で微かに武流を呼んだ。
 照れ臭そうに笑っていた彼はいつの間にか真剣な表情に戻っており、じっと凪咲を見つめると、深いキスと共にゆっくりと押し倒してきた。

「んっ……」

 舌を絡め合う官能的なキスを終えて唇を放すと、武流は今度は首と肩に何度も唇を寄せ、耳にも軽いキスを贈ってきた。
 耳元から聞こえるリップ音はまるで耳の中から入り込んで体中に染み込むかのようで、くすぐったさと快感の狭間のような感覚。そのもどかしさに鼻にかかった小さな声をあげながら、シーツに投げ出していた腕を武流の背へと回した。
 ぎゅっと抱き着く。耳元に唇を寄せて名前を呼べば、武流の体がピクリと小さく震えたのが分かった。

「武流さん……、早く……」

 恥ずかしさを意識の隅に追いやり素直に求める。
 首筋にキスをしていた武流がゆっくりと顔を上げ、瞳の奥にぎらついた色を見せた。返事の代わりに唇にキスを一度贈ってくる。
 そのキスが離れると凪咲は軽く吐息を漏らし……、「あっ!」と声を漏らした。

 はいってくる。
 硬い熱が。己の一番弱くやらかなところに。

「は、ぁ……、ん……」
「凪咲さん、大丈夫ですか?」
「……大丈夫、だから……、動いて」

 凪咲の体を気遣い、武流は時間を掛けて挿入を深めようとしている。
 本当ならすぐに動きだしたいはずだ。今この瞬間にも凪咲の最奥を突き、荒々しく抜き差しして快感を貪りたいはず。それでも武流は我慢している。
 大事にしてくれているのだ。それが分かるからこそ彼の荒々しい欲さえも受け入れたいと思う。

「武流さんの、望むように……、ん、動いて、大丈夫です」

 彼の背中に腕を回し撫でるように触れながら告げれば、武流が返事替わりに一度頷いた。
 彼の瞳に浮かんでいた欲の色が濃くなった気がする。知的な顔付きの中にそれでも欲望に突き動かされる男の性を感じ、凪咲の体にそわりと言い知れぬ感覚が走った。普段は理性で隠している彼の奥底にある純粋でいて抗いがたい欲を見た気がする。
 次の瞬間、凪咲の中に納まっていた熱がぐっと奥を突いた。自然と凪咲の背が逸れるが、熱はそれを許すまいと更に奥を押し、かと思えば引き抜かれ、中を擦り上げるようにして再び押し入ってくる。

「あっ、は、ぁあ! んぅ、んっ」

 雄々しい熱が抽送されるたび凪咲の口から声が漏れる。
 前戯よりも激しい快感が意識をも飲み込むかのように体中に溢れ堪らず武流の体にしがみつくも、しがみついた体ごと揺さぶるかのように荒々しく突かれる。

「凪咲さん……!」
「んっ、あん、あぁ、武流さんっ、んぅ、気持ち、いい……、あっ」
「俺も気持ち良いです。凪咲さんの中、熱くて、絡みついてくる……」

 熱に浮かされるように武流が話す。その最中にも抽挿を続けており、快感と動いているからか彼の額に薄っすらと汗が浮かんでいる。
 快感を貪りながらも意識を保とうとする彼の表情は男らしく、すっかりと快感に溺れた凪咲は揺らいだ視界でそれを眺め、自ら顔を寄せて彼にキスをした。深く唇を重ね、離れると「は、あっ」と嬌声をあげ、続く声を飲み込まれるように今度は彼からキスをされる。
 舌を絡め合えば口内を愛撫される快感が湧き、腹部からせり上がる快感と混ざり合う。体中が快感に満たされ、触れていない場所さえも溶けてしまったかのように気持ち良い。

「武流さん、あぁっ、んぅ、んっ、ふぁ」

 荒く突かれれば喉から甘い声が漏れ、快感が体の中で弾け、蕩け、体中に満ちていく。
 無意識に涙が溜まり視界が潤み、目尻から涙が零れた。それに気付いた武流が顔を寄せ、肌を伝い落ちる涙が耳に掛かる時になめとってきた。熱い舌が耳に触れ、その感覚に思わず凪咲の口から「んぁ」と声が漏れた。
 その声に気を良くしたのか武流が笑みを零し、もう一度耳にキスをし、唇で耳朶を食む。
 耳への愛撫という初めての感覚、それに合わせて中を突かれると快感が繋がり合う。耳に武流の熱い吐息がかかった瞬間に自分の下腹部がうずいたのが分かった。無意識に締め付けてしまったのか、一瞬、武流が小さく息を呑んだ。

「耳、気持ち良いんですか? すごい締め付けて……んっ、」
「あ、や、やだ、そんな……、恥ずかしい……こと……」

 恥ずかしいことを言わないでと訴えようにも喘ぎ声にしかならない。
 それどころかその反応もまた武流の欲を誘うようで、彼はわざと耳元で名前を呼んできた。

「凪咲さん」

 と、その声は耳を、それどころか耳から流れ込んで体全てを、心までを愛撫するように凪咲の体中を巡る。
 堪らず彼の背に回した腕に力を入れて強く抱き着いた。
 体の中で快感が弾ける。もう無理、と感じるのと同時に、体の中で暴れていた大きな波が意識ごと飲み込んだ。

「ん、ぁ! ふあぁ!」

 快感が限界を迎えた大きな衝動に耐え切れず声をあげ、体が強張るままに武流の体に抱き着く。
 凪咲の体が小さく震え、次の瞬間、覆いかぶさっていた武流が眉根を寄せ「……っ!」と詰まった声をあげた。彼の背がふるりと震えるのと同時に、凪咲の中に埋まっていた荒々しい熱がドクンと脈打った。



「……ふぅ、ん……、あ……」

 強張っていた体から一気に力が抜け、武流の背に回していた腕をポスンとシーツに戻して短い呼吸を繰り返す。
 武流の名前を呼ぼうとするも吐息が漏れ、それでもといまだ自分の上に覆いかぶさった武流をゆっくりと見上げた。
 彼の中にもまだ余韻が残っているのか、武流は疲労と微睡の半ばといった様子で目を細め、凪咲の視線に気付くと少し掠れた声で「凪咲さん」と名前を呼んできた。性交の後とは思えない穏やかで優しい声、それでいて額には薄っすらと汗が浮かんでおり、細められた瞳の奥にはまだ密事の燻りのような熱がちらついている。

「体、大丈夫ですか?」
「はい……、大丈夫です」

 武流からの気遣いに返せば、覆いかぶさっていた彼が一度額にキスをしてゆっくりと身を離した。
 秘部から熱が抜かれる。ぬるりと異物が引き抜かれる感覚にそわと体が小さく震えた。痛くも苦しくも無い、快感の名残りのような不思議な感覚。
 終わったのだと思えば心地良い疲労感が増し、体の中を焦がすほどに暴れていた熱が落ち着いていく。

「いま、時間……」

 ふと気になって、ヘッドボードの時計を見るために体を起こした。
 だがその途中、武流の手が肩を掴んで抱き寄せてきた。元より力が抜けていた凪咲の体は促されるままに彼の腕の中に納まってしまう。
 肌と肌が触れ合う。まだ武流の体は熱を残しているが、きっとそれは凪咲の体も同じだろう。
 真冬の夜、暖房も着けていない部屋だというのに暑い。

「まだそこまで遅くありません。……だから」
「武流さん……」
「だから、もう一度良いですか?」

 耳元で囁かれるように求められ、凪咲はくすぐったさに小さく「んっ」と声を漏らしてしまった。
 彼の手がそっと体を撫でてくる。宥めるように、それでいて誘うように。先程までの熱を再び灯そうとしているのだ。そうして乞うように耳元で「凪咲さん」と呼んでくる。
 武流の声が体中に流れ込み、凪咲の体が疼きに似た期待を宿し始めた。その熱に浮かされるように、凪咲はそっと武流の背に腕を回して自ら彼に擦り寄った。

「武流さん、ずるいです。そんな風に言われたら断れるわけない……」

 そう訴えれば、武流が柔らかく笑ったのが耳元で聞こえてきた。


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