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シーズン2
episode2「Nuance」
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1986年 1月1日 15 時30分 洽崎警察署前。
家からどこにも寄り道せずに警察署に直行した。まさか自分の職業がこんな時に役立つ日が来るなんて思いもしなかった。いつも事件に関わる時は自分ごとじゃなかったため、そろそろこの職業も潮時かと思っていたんだが、まだまだ俺はこの仕事を辞められないらしい。和希がいなかったら俺はとっくにくたばっていたかもな。
もともと和希と俺は有名な名前だった。名探偵の小説家と名探偵の刑事って呼ばれていた。長塚、あいつは探偵をしつつそこで得た知識で小説に書き出版したりしていたためそんな名前がついたわけだ。俺でもわからない事件をあっさり解いてしまうあいつに俺は一目置いていた。
いつもうざったらしかった自動ドアとの後に流れてくる署内アナウンスが今はとても頼りに聞こえ、俺が刑事であることを再確認させてくれる。
俺は自分の自室があるところまでに何人かの刑事や警察官に話しかけられるのをなんとか誤魔化しつつ捕まらずに行けた。ここの警察官たちは暇人なのか話に捕まるとそうそう逃してくれない特に普通ではない俺みたいなやつはな。
「怜恩先輩……遅刻です、こんな事態でも遅刻は治らないんですね」
部屋に行くと既に樒花はいていつも通り説教してくる。
「はいはい、わかったよ俺が悪かった。それより時間がないんだろう?調査に取り掛かるぞ」
「全くこの人は何でこうも無責任で能天気何でしょうか……ままいつも通りでいいですけど……」
少し聴こえた悪口は少し癪だったが、ここでどうこう言っても何にも起きないしいつもの日課みたいなノリなので突っ込むのは辞めておく。
「じゃあ、体ほぐし程度に一冊行きますか……」
俺の能力は練習がてらに軽くやっておかないと最初からきつめので行くとすぐ体が壊れるので最初は軽めに行く。
「最初は何を書くんですか?」
樒花が聞いてくる。
「うーん、最初は昔の思い出たちを描いてみるか」
少しあいつらを失ってから思い出したくなかったがもしかすると何かの手がかりになるかもしれないと言う気持ちで書いてみることに。
「じゃあキーワードは''俺の、昔の、思い出''だ」
俺の能力はキーワードが必要で、全部で三つ、たまに四つぐらいになるが普通は三つだ。''誰が、いつ、???と言った5w1hの内容を含んだキーワードを当てはめることで俺の能力は発動する。
「持っていかれないようにきおつけてください」
「ああ、わかってる」
そしてこの能力のデメリット、あまりにもそのキーワードに沿った物語に感情移入というか。突っ込みすぎると俺はその記憶の中から出れなくなり一生体を動かし続けるという状態になる。一度だけ体験しており、その時は腕が麻痺して骨折するほどにはボロボロになっていた。
「じゃあ、行くぞ」
「はい!」
そして意識を集中させて、キーワードをしっかりと頭に刻み込み。ペンを紙に下ろした。
1976年 洽崎高等学校。中藤怜恩 当時16歳 高校1年
夏が終わり、秋が訪れ、冬に備えてこたつを出したり、そんなことに一日中時間を使い果たし、今の自分がいる。
「いってきまーす」
「はーい」
いつも通りに母さんに挨拶して家を出る。最近はよく冷える。手を擦り合わせたり息を吹きかけたりして寒さに耐えていた。
「よっ!!元気してるか怜恩!」
背中をバシッと叩かれて聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「和希こそ元気そうで何よりだよ」
そういうと白い歯を見せながら笑った。
「何だよいつにもまして元気がないな」
「寒くて元気とかそれどころでじゃないんだよ……」
そうかそうかとまた笑った。本当によく笑うやつだ
「でも信じられねぇよな俺らもう一ヶ月後は高二だぜ?頭悪いの三巨頭と呼ばれた俺らがここまでこれるとは」
「おいおい、三巨頭に入ってるのは和希と西山と佐野だろ?勝手に俺を入れるな」
えー、と言いまた背中を叩いてくる。本当に元気がありすぎて俺だけじゃ制御できんよ、まだうちの犬の方がおとなしくて可愛いやつなのにな。
「おーい二人とも!」
制御できない和希から逃げつついつも通り喋っていたら目の前に双子の女が立っていた。さらに騒がしくなるのを覚悟し挨拶をした。
「おはよう、この後ろにいる暴れ牛をどうにかしてくれ」
「なに?また二人で遊んでたんだね?本当仲良しだよねー」
人の話を聞け。今話しているのは和泉樒花、双子の姉だ。
「おはようございます、怜恩さん」
そして後ろの方でペコペコと頭を下げているこの場で唯一話のできるまともな子の和泉葎花、双子の妹だ。全くどうしならこんなにも性格が違うのかね。
「よっ!!樒花姉ぇと葎花!!」
なぜか和希は樒花のことを慕っており姉貴だと言っている。まあ確かに高校の先生にも兄弟みたいだって言われたことがある。俺が兄貴で樒花が姉貴、和希が弟、葎花が妹ってな。言われてみればそんな感じかもしれない。
朝から騒がしく周りを通学している生徒の目線が痛いが、なんだかんだで俺もこの四人で集まって話すのは楽しいし、こいつらがいなかったら高校に行かないかもしれないと言い切れるほどには仲が良くて安心感のある日常だ。
・
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・
学校が終わり、下校している途中の出来事。
「いやあ、夕方になると暖かくていいねぇ!!」
「ああ全くだ、寒いのは嫌いだからな」
いつも通りに騒がしく家路についていたが、少しの違和感。それはいつもうるさい樒花が黙り込んでいることだ。
「何だよ樒花、クラス別れたのがそんなに嫌だったのか?」
そう今日は二年に上がるためにクラス替えがあり、俺が一組、樒花が二組、和希と葎花が同じ組で三組になり、そのことに対していじけていたのだ。
「一年生の間だけでもみんな同じクラスだっただけ先生に感謝しろよ、今年は運がなかった。それだけじゃないか」
「まあ、そりゃそうだけど。やっぱり一緒がよかった」
「朝会えるじゃん」
「そうだけど、クラスも一緒がよかった。ていうか!和希と葎花だけ同じクラスなのずるいよ!!」
和希がありがたそうに笑う。
「いやいや、本当にラッキーだよ!!じゃあありがたく葎花を貰おうかな!!」
そういうといつも通り追う樒花、逃げる和希の構成が完成し先に突っ走って、見えなくなる。
俺は鼻で笑った。
「どうしたんですか?怜恩さんニヤニヤしてますけど?」
葎花が聞いてきた。そんなににやにやしてたかな?意外と顔に出やすい性格なのかもしれない。
「いや、思ったんだ。クラスが違ってもいつも通りにこんなに楽しい日常が続けばいいなって……」
俺は夕暮れに沈む橙色をした太陽に向かって、そう。呟いた。
シーズン2 エピソード2「様々な意味合い」
家からどこにも寄り道せずに警察署に直行した。まさか自分の職業がこんな時に役立つ日が来るなんて思いもしなかった。いつも事件に関わる時は自分ごとじゃなかったため、そろそろこの職業も潮時かと思っていたんだが、まだまだ俺はこの仕事を辞められないらしい。和希がいなかったら俺はとっくにくたばっていたかもな。
もともと和希と俺は有名な名前だった。名探偵の小説家と名探偵の刑事って呼ばれていた。長塚、あいつは探偵をしつつそこで得た知識で小説に書き出版したりしていたためそんな名前がついたわけだ。俺でもわからない事件をあっさり解いてしまうあいつに俺は一目置いていた。
いつもうざったらしかった自動ドアとの後に流れてくる署内アナウンスが今はとても頼りに聞こえ、俺が刑事であることを再確認させてくれる。
俺は自分の自室があるところまでに何人かの刑事や警察官に話しかけられるのをなんとか誤魔化しつつ捕まらずに行けた。ここの警察官たちは暇人なのか話に捕まるとそうそう逃してくれない特に普通ではない俺みたいなやつはな。
「怜恩先輩……遅刻です、こんな事態でも遅刻は治らないんですね」
部屋に行くと既に樒花はいていつも通り説教してくる。
「はいはい、わかったよ俺が悪かった。それより時間がないんだろう?調査に取り掛かるぞ」
「全くこの人は何でこうも無責任で能天気何でしょうか……ままいつも通りでいいですけど……」
少し聴こえた悪口は少し癪だったが、ここでどうこう言っても何にも起きないしいつもの日課みたいなノリなので突っ込むのは辞めておく。
「じゃあ、体ほぐし程度に一冊行きますか……」
俺の能力は練習がてらに軽くやっておかないと最初からきつめので行くとすぐ体が壊れるので最初は軽めに行く。
「最初は何を書くんですか?」
樒花が聞いてくる。
「うーん、最初は昔の思い出たちを描いてみるか」
少しあいつらを失ってから思い出したくなかったがもしかすると何かの手がかりになるかもしれないと言う気持ちで書いてみることに。
「じゃあキーワードは''俺の、昔の、思い出''だ」
俺の能力はキーワードが必要で、全部で三つ、たまに四つぐらいになるが普通は三つだ。''誰が、いつ、???と言った5w1hの内容を含んだキーワードを当てはめることで俺の能力は発動する。
「持っていかれないようにきおつけてください」
「ああ、わかってる」
そしてこの能力のデメリット、あまりにもそのキーワードに沿った物語に感情移入というか。突っ込みすぎると俺はその記憶の中から出れなくなり一生体を動かし続けるという状態になる。一度だけ体験しており、その時は腕が麻痺して骨折するほどにはボロボロになっていた。
「じゃあ、行くぞ」
「はい!」
そして意識を集中させて、キーワードをしっかりと頭に刻み込み。ペンを紙に下ろした。
1976年 洽崎高等学校。中藤怜恩 当時16歳 高校1年
夏が終わり、秋が訪れ、冬に備えてこたつを出したり、そんなことに一日中時間を使い果たし、今の自分がいる。
「いってきまーす」
「はーい」
いつも通りに母さんに挨拶して家を出る。最近はよく冷える。手を擦り合わせたり息を吹きかけたりして寒さに耐えていた。
「よっ!!元気してるか怜恩!」
背中をバシッと叩かれて聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「和希こそ元気そうで何よりだよ」
そういうと白い歯を見せながら笑った。
「何だよいつにもまして元気がないな」
「寒くて元気とかそれどころでじゃないんだよ……」
そうかそうかとまた笑った。本当によく笑うやつだ
「でも信じられねぇよな俺らもう一ヶ月後は高二だぜ?頭悪いの三巨頭と呼ばれた俺らがここまでこれるとは」
「おいおい、三巨頭に入ってるのは和希と西山と佐野だろ?勝手に俺を入れるな」
えー、と言いまた背中を叩いてくる。本当に元気がありすぎて俺だけじゃ制御できんよ、まだうちの犬の方がおとなしくて可愛いやつなのにな。
「おーい二人とも!」
制御できない和希から逃げつついつも通り喋っていたら目の前に双子の女が立っていた。さらに騒がしくなるのを覚悟し挨拶をした。
「おはよう、この後ろにいる暴れ牛をどうにかしてくれ」
「なに?また二人で遊んでたんだね?本当仲良しだよねー」
人の話を聞け。今話しているのは和泉樒花、双子の姉だ。
「おはようございます、怜恩さん」
そして後ろの方でペコペコと頭を下げているこの場で唯一話のできるまともな子の和泉葎花、双子の妹だ。全くどうしならこんなにも性格が違うのかね。
「よっ!!樒花姉ぇと葎花!!」
なぜか和希は樒花のことを慕っており姉貴だと言っている。まあ確かに高校の先生にも兄弟みたいだって言われたことがある。俺が兄貴で樒花が姉貴、和希が弟、葎花が妹ってな。言われてみればそんな感じかもしれない。
朝から騒がしく周りを通学している生徒の目線が痛いが、なんだかんだで俺もこの四人で集まって話すのは楽しいし、こいつらがいなかったら高校に行かないかもしれないと言い切れるほどには仲が良くて安心感のある日常だ。
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学校が終わり、下校している途中の出来事。
「いやあ、夕方になると暖かくていいねぇ!!」
「ああ全くだ、寒いのは嫌いだからな」
いつも通りに騒がしく家路についていたが、少しの違和感。それはいつもうるさい樒花が黙り込んでいることだ。
「何だよ樒花、クラス別れたのがそんなに嫌だったのか?」
そう今日は二年に上がるためにクラス替えがあり、俺が一組、樒花が二組、和希と葎花が同じ組で三組になり、そのことに対していじけていたのだ。
「一年生の間だけでもみんな同じクラスだっただけ先生に感謝しろよ、今年は運がなかった。それだけじゃないか」
「まあ、そりゃそうだけど。やっぱり一緒がよかった」
「朝会えるじゃん」
「そうだけど、クラスも一緒がよかった。ていうか!和希と葎花だけ同じクラスなのずるいよ!!」
和希がありがたそうに笑う。
「いやいや、本当にラッキーだよ!!じゃあありがたく葎花を貰おうかな!!」
そういうといつも通り追う樒花、逃げる和希の構成が完成し先に突っ走って、見えなくなる。
俺は鼻で笑った。
「どうしたんですか?怜恩さんニヤニヤしてますけど?」
葎花が聞いてきた。そんなににやにやしてたかな?意外と顔に出やすい性格なのかもしれない。
「いや、思ったんだ。クラスが違ってもいつも通りにこんなに楽しい日常が続けばいいなって……」
俺は夕暮れに沈む橙色をした太陽に向かって、そう。呟いた。
シーズン2 エピソード2「様々な意味合い」
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