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1、飛び降り自殺ー多い屋上
第二昼 「部活の怪」
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光が降り注ぐ、暗く重い瞼に閉じられた目を刺激して俺を起こそうとしている。日頃の疲れが溜まっているのか?最近は夜の活動が多くて睡眠不足になっていたみたいだ。
「カズ…………」
「どうしたの、ユキ?」
眠気が一気に引いた。横見て見れば俺の隣に座ってカズが顔を覗き込んでいる。
「い、いつから…………?」
「うーん。十分くらい?」
「なんで起こしてくれなかったんだよ」
どうやらカズを待っている間に屋上で眠っていたらしい。今日は春の風と良い感じの暖かさで気持ちよかったんだろう。そしてやけに変な夢を見てしまった。日に日に自分が非現実の世界に干渉し続けている影響だろう。
「だって、やけに気持ちよさそうに寝てるからさ」
「気持ちよく?」
「うん、カズ~とか言っちゃって」
「………………」
あんな君の悪い夢を見ておいて、うなされてないなんてことあり得るのだろうか?それともカズが勘違いしているのか。とりあえずよくないものに憑かれなかっただけよしとするか。こんな幽霊が集まる屋上で寝るなるて、気が緩みすぎだ。
「まあいい、今日ここに呼んだのは意味がある」
「意味?」
「ああ、そうだ」
飛び降り自殺者が越えていくのであろう柵の手すりを触った。自分の腰より少し高くそして恐ろしいほど冷たい。あの幽霊に取り憑かれた人間達はこんなちっぽけな柵で守れるわけがない。そして俺にだって昨日はたまたまカズを助けられただけで、一歩遅かったらあの夢通りになっていただろう。自分の無力さに唇を噛む。
「カズはなんで幽霊が生徒を自殺させていると思う?」
「なんでって…………やっぱ恨みとか?」
「うん、俺もそう考えている。だから夜行動するのなら昼は時間がある。夜にはできないことを今のうちにしようではないか」
「できないこと?」
「なんで幽霊が恨みを持ってしまったのか?その根本的なものを解明してやろうってことだ」
「な、なるほど」
そうだ。今までだってそうして助けてきた。俺たちが助けるのは依頼者の人間や生徒だけではない。恨みを持ってこの世に悪霊として存在する幽霊達を助けるのも俺らの役目だ。なら、今すべきはあのカズに憑いた幽霊のことを調べ上げることだ。
「でも、どうやって情報を得るの?」
「それはいろんな人に聞き回ったりするんだ。自分の求めていた情報は思わぬところに潜むものだってハジメさんから教わったんだ」
「何それ、根性論ってこと?」
「平たく言えばそうだな。とりあえず情報に飢えろってことだ」
「わかったよ。でもあんまり期待しないでね」
「俺はオカルト研究部室にある書庫を漁るよ」
その名も、オカルト図書館。そのままで安直な名だ。ここは本当にすごく、洽崎で起きた事件や学校で起きた些細な情報が詰まった優れものだ。しかしあまりにも情報が多すぎてそこから自分が望むものを探そうとするなら一夜漬けになる。自分はあんまり得意ではないが数がまだ部室に入れないため俺が行かねばならない…………
「ということだ。わかったか?」
「なんだかすごいところなんだね。こっちはこっちで外から情報を聞き込んでみるよ」
「おう、任せたぞ」
俺たちはその場で解散した。本当はここにカズを連れて来たのは、ちゃんとした理由がある。だがそれはまだ後の話になるだろう。
†
「ようやく見つけた」
私、咲(サキ)は太陽が降り注ぐ屋上で唯一影になっている乱雑に置かれた粗大ゴミの塊の後ろにいた。いたと言うよりかしがみついていると言った方が正しいかな。私たち幽霊は夜にしか行動を許されない、しかし今こうやって無理やり出て来ているのには訳があった。
「やっと、見つけたよ」
今の今まで屋上で話していたうちの一人、カズと呼ばれている少女。昨日は気づかずにいつも通りに飛び降りそうになったが、危なかった。少女こそが私を助けてくれる存在になり得るかもしれない。
「モジくん、もうすぐだね」
彼女だけがこの昼のうちに私の存在を発見してくれた。さっき目と目があった時に実感した。彼女には私が確実に見えていると……
「カズ…………」
「どうしたの、ユキ?」
眠気が一気に引いた。横見て見れば俺の隣に座ってカズが顔を覗き込んでいる。
「い、いつから…………?」
「うーん。十分くらい?」
「なんで起こしてくれなかったんだよ」
どうやらカズを待っている間に屋上で眠っていたらしい。今日は春の風と良い感じの暖かさで気持ちよかったんだろう。そしてやけに変な夢を見てしまった。日に日に自分が非現実の世界に干渉し続けている影響だろう。
「だって、やけに気持ちよさそうに寝てるからさ」
「気持ちよく?」
「うん、カズ~とか言っちゃって」
「………………」
あんな君の悪い夢を見ておいて、うなされてないなんてことあり得るのだろうか?それともカズが勘違いしているのか。とりあえずよくないものに憑かれなかっただけよしとするか。こんな幽霊が集まる屋上で寝るなるて、気が緩みすぎだ。
「まあいい、今日ここに呼んだのは意味がある」
「意味?」
「ああ、そうだ」
飛び降り自殺者が越えていくのであろう柵の手すりを触った。自分の腰より少し高くそして恐ろしいほど冷たい。あの幽霊に取り憑かれた人間達はこんなちっぽけな柵で守れるわけがない。そして俺にだって昨日はたまたまカズを助けられただけで、一歩遅かったらあの夢通りになっていただろう。自分の無力さに唇を噛む。
「カズはなんで幽霊が生徒を自殺させていると思う?」
「なんでって…………やっぱ恨みとか?」
「うん、俺もそう考えている。だから夜行動するのなら昼は時間がある。夜にはできないことを今のうちにしようではないか」
「できないこと?」
「なんで幽霊が恨みを持ってしまったのか?その根本的なものを解明してやろうってことだ」
「な、なるほど」
そうだ。今までだってそうして助けてきた。俺たちが助けるのは依頼者の人間や生徒だけではない。恨みを持ってこの世に悪霊として存在する幽霊達を助けるのも俺らの役目だ。なら、今すべきはあのカズに憑いた幽霊のことを調べ上げることだ。
「でも、どうやって情報を得るの?」
「それはいろんな人に聞き回ったりするんだ。自分の求めていた情報は思わぬところに潜むものだってハジメさんから教わったんだ」
「何それ、根性論ってこと?」
「平たく言えばそうだな。とりあえず情報に飢えろってことだ」
「わかったよ。でもあんまり期待しないでね」
「俺はオカルト研究部室にある書庫を漁るよ」
その名も、オカルト図書館。そのままで安直な名だ。ここは本当にすごく、洽崎で起きた事件や学校で起きた些細な情報が詰まった優れものだ。しかしあまりにも情報が多すぎてそこから自分が望むものを探そうとするなら一夜漬けになる。自分はあんまり得意ではないが数がまだ部室に入れないため俺が行かねばならない…………
「ということだ。わかったか?」
「なんだかすごいところなんだね。こっちはこっちで外から情報を聞き込んでみるよ」
「おう、任せたぞ」
俺たちはその場で解散した。本当はここにカズを連れて来たのは、ちゃんとした理由がある。だがそれはまだ後の話になるだろう。
†
「ようやく見つけた」
私、咲(サキ)は太陽が降り注ぐ屋上で唯一影になっている乱雑に置かれた粗大ゴミの塊の後ろにいた。いたと言うよりかしがみついていると言った方が正しいかな。私たち幽霊は夜にしか行動を許されない、しかし今こうやって無理やり出て来ているのには訳があった。
「やっと、見つけたよ」
今の今まで屋上で話していたうちの一人、カズと呼ばれている少女。昨日は気づかずにいつも通りに飛び降りそうになったが、危なかった。少女こそが私を助けてくれる存在になり得るかもしれない。
「モジくん、もうすぐだね」
彼女だけがこの昼のうちに私の存在を発見してくれた。さっき目と目があった時に実感した。彼女には私が確実に見えていると……
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