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柚葉編
第十九話 過去
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柚葉編 第十九話
私がなぜそのようになってしまったのかことの経緯を話します。もともと歌うことが好きで将来の夢は歌手になることだった。でも人前に出ることが苦手だからその夢も年を重ねるごとに薄れていった。
そんな私にその熱を再来させたのはネットを使うことによって人前に出ることもなければ顔を出さずとも自分の歌声を伝えることができるということを知ったことだ。その日から取り憑かれたように歌を歌って、配信者さんの動画もたくさん見た。みんなすごくて到底今の私の歌声では世間に笑われてしまうと焦った。そこで見つけたのが有名な歌手を作ってきたと謳う養成所のチラシだった。胡散臭さはとてもあったがその時は藁にもすがる思いだったためかそんなことは考えもしなかった。
電話をして面接をして合格をもらったときの嬉しさは忘れもしない。そのことすらも後々関わる人物によって仕組まれていたことなんて想像できなかった。世間は自分を捨ててないんだと嬉しがっていたほどだし、やはり取り憑かれていたに違いない。
結果その会社は前から警察沙汰のたえない危ない場所だったわけだ。よくよく調べてみればすぐにわかったものだったのに……まんまと騙された私は一週間も立たないうちに彼らに暴力を振るわれるようになった。やめようと思った頃にはとある写真を弱みに彼らは私を縛り付けて逃げないようにしたのだ。家族にも言えない、りんちゃんにうことなんてできるはずもなく日を増すごとに(わざと服で隠れる場所ばかりに)傷が体を蝕んでいった。
そんな中で私が今こうして助かった理由は、彼らの一人がまた別の女の子に手をかけたところから始まった。私以外にもあの応募を見てきた子がいたのだ。なんとかここが普通ではないことを伝えたかったがそこも抜かりのない彼らは私にいつもは着させないような綺麗な可愛い服を着させあの募集のところに書いてあった内容通りに立派な養成所を演じることにした。その子も保護者もまんまと騙すことに成功した。彼らは不適な笑みを見せながら「仲間ができてよかったな」と囁くのだった。
そして彼女も同じ結末をたどり二人とも彼らのストレスを晴らすためのなんでもしていい便利な道具として扱うのだった。
彼女は理沙という名前で私と同級生か一つ上か、どちらにしても大人の雰囲気を放つ理沙は彼らの趣味に合っていたのだろう私よりも酷いことをされていた。ひどくかわいそうだったが何もすることはできなかった。
そんな理沙がある日突然私を誘って喫茶店にいった。彼女と日常的に会うのはあの養成所だったため面と向かって会うのは初めてだった。やはり綺麗な顔つきをしていた私なんかよりもはるかに良い、こんな養成所にさえ入らなければ有名人になっていたに違いない。自分は自業自得として彼女は可哀想でならなかった。
「どうしたんですか?いきなり呼び出して……」
彼女はあそこに来るなり乱暴されているのでまともに会をしたのももしかしたらこれが初めてだったのかもしれない。ふふ、と小さく笑った。なんで笑えるのだろうか、私が彼女みたいにされていたはそんな笑っていられないようなきがするのに、彼女は今までのことがなかったみたいに笑うと、普通に話した。
「そういえば柚葉ちゃんとまともに喋ったことがないなーって考えたらさ、もう止まれなくってね。わたし考えて行動するタイプじゃないから一度きになったら夜も眠れないっていうかさ、だから今日誘ったわけ」
やはり彼女は笑顔だ。それに比べて私は仏頂面だった。
「理沙さんは、いくつなんですか?」
しかし、自分でも驚くほどこの人には言葉を買わせていることに気づいた。
「わたし?わたしはねぇ確か十七歳だったかな?」
「確かって……自分の年齢知らないんですか?」
そして理解した。彼女は私と同じ立場だから話せるのだ。どんな学校で歩いている人たちや凛ちゃんよりも、一番みじかで同じ経験を負っている……私よりも彼女の方がはるかにひどい経験をしているのだけど、彼女のことをいつの間にか理解していたのかもしれない。それは向こうも同じで、この感覚をお互い感じているのだろう。
「わたしね、本当は親がいないんだよね」
「え、でもあの時来てたのは?」
「あーあの人は親戚っていうか。血は繋がってないのよね。だからまともに誕生日なんて祝ってもらった来ないし、興味がないんだよね」
そういうと思い詰めたような顔をして小さくいった。
「突然で申し訳ないんだけど、頼みがあるんだ」
†
今日も連絡があって養成所に向かっていた。月一か二のペースでいつもは呼ばれる。
養成所の前に着くと人影があった。あの人たちかと思ったがよく目を凝らしてみると違う人であることがわかった。
「理沙さんっ!」
駆け寄ると、向こうも待っていてくれていたみたいで手を振ってくれた。
「なんだかこうして待つのも変だね」
「それより……あれ、本当にするんですか?」
小さく頷く。
「もう柚葉ちゃんしか頼れないの、よろしくね」
私がなぜそのようになってしまったのかことの経緯を話します。もともと歌うことが好きで将来の夢は歌手になることだった。でも人前に出ることが苦手だからその夢も年を重ねるごとに薄れていった。
そんな私にその熱を再来させたのはネットを使うことによって人前に出ることもなければ顔を出さずとも自分の歌声を伝えることができるということを知ったことだ。その日から取り憑かれたように歌を歌って、配信者さんの動画もたくさん見た。みんなすごくて到底今の私の歌声では世間に笑われてしまうと焦った。そこで見つけたのが有名な歌手を作ってきたと謳う養成所のチラシだった。胡散臭さはとてもあったがその時は藁にもすがる思いだったためかそんなことは考えもしなかった。
電話をして面接をして合格をもらったときの嬉しさは忘れもしない。そのことすらも後々関わる人物によって仕組まれていたことなんて想像できなかった。世間は自分を捨ててないんだと嬉しがっていたほどだし、やはり取り憑かれていたに違いない。
結果その会社は前から警察沙汰のたえない危ない場所だったわけだ。よくよく調べてみればすぐにわかったものだったのに……まんまと騙された私は一週間も立たないうちに彼らに暴力を振るわれるようになった。やめようと思った頃にはとある写真を弱みに彼らは私を縛り付けて逃げないようにしたのだ。家族にも言えない、りんちゃんにうことなんてできるはずもなく日を増すごとに(わざと服で隠れる場所ばかりに)傷が体を蝕んでいった。
そんな中で私が今こうして助かった理由は、彼らの一人がまた別の女の子に手をかけたところから始まった。私以外にもあの応募を見てきた子がいたのだ。なんとかここが普通ではないことを伝えたかったがそこも抜かりのない彼らは私にいつもは着させないような綺麗な可愛い服を着させあの募集のところに書いてあった内容通りに立派な養成所を演じることにした。その子も保護者もまんまと騙すことに成功した。彼らは不適な笑みを見せながら「仲間ができてよかったな」と囁くのだった。
そして彼女も同じ結末をたどり二人とも彼らのストレスを晴らすためのなんでもしていい便利な道具として扱うのだった。
彼女は理沙という名前で私と同級生か一つ上か、どちらにしても大人の雰囲気を放つ理沙は彼らの趣味に合っていたのだろう私よりも酷いことをされていた。ひどくかわいそうだったが何もすることはできなかった。
そんな理沙がある日突然私を誘って喫茶店にいった。彼女と日常的に会うのはあの養成所だったため面と向かって会うのは初めてだった。やはり綺麗な顔つきをしていた私なんかよりもはるかに良い、こんな養成所にさえ入らなければ有名人になっていたに違いない。自分は自業自得として彼女は可哀想でならなかった。
「どうしたんですか?いきなり呼び出して……」
彼女はあそこに来るなり乱暴されているのでまともに会をしたのももしかしたらこれが初めてだったのかもしれない。ふふ、と小さく笑った。なんで笑えるのだろうか、私が彼女みたいにされていたはそんな笑っていられないようなきがするのに、彼女は今までのことがなかったみたいに笑うと、普通に話した。
「そういえば柚葉ちゃんとまともに喋ったことがないなーって考えたらさ、もう止まれなくってね。わたし考えて行動するタイプじゃないから一度きになったら夜も眠れないっていうかさ、だから今日誘ったわけ」
やはり彼女は笑顔だ。それに比べて私は仏頂面だった。
「理沙さんは、いくつなんですか?」
しかし、自分でも驚くほどこの人には言葉を買わせていることに気づいた。
「わたし?わたしはねぇ確か十七歳だったかな?」
「確かって……自分の年齢知らないんですか?」
そして理解した。彼女は私と同じ立場だから話せるのだ。どんな学校で歩いている人たちや凛ちゃんよりも、一番みじかで同じ経験を負っている……私よりも彼女の方がはるかにひどい経験をしているのだけど、彼女のことをいつの間にか理解していたのかもしれない。それは向こうも同じで、この感覚をお互い感じているのだろう。
「わたしね、本当は親がいないんだよね」
「え、でもあの時来てたのは?」
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そういうと思い詰めたような顔をして小さくいった。
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†
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