15 / 19
柚葉編
第十五話 偽りの心
しおりを挟む
柚葉編 第十五話
目が覚める。なんだかいい眠りができていないようだ、まだ気分が怠い。
それもそのはず昨日の出来事があってから彼女のことが心配でならなかった。もちろんその彼女というのは柚葉ちゃんのことだ。昨日は助けることで精一杯で走っていってしまったけどよく考えてみたら警察に電話しておいた方が良かったのではないかと後悔している。一応後になって電話をしてみたものの相手にされなかった。
腑に落ちない気持ちを落ち着かせるためにベッドに潜ってみたが、あいつが柚葉ちゃんもしくは俺の元へ報復をしにくるのではないかと焦っては落ち着いてを繰り返していてなかなか寝付けなかったのだ。ようやく寝ついて見ても寝れたのは三時間程度。ベッドに寝ていてもわかるくらいに頭や体が重くて気分が上がらない。別に学校に行かないという選択肢もあるのだが、数日前から担任の先生に出席日数が足りていないからこれ以上休むのは良くないと言われてから内心そっちの方でも焦っていた。
「晴翔くん、起きてるかな?」
ドアの向こうからノックと共に愛理さんの声が聞こえてきた。彼女にも出席日数のことを話したら毎日起こしに来ると言い出した。最初は冗談かと思っていたがどうやら彼女は本気だったみたいだ。せっかくこうしてきてくれたわけだし少しの怠さなんか嘆いていないで黙って起きよう。
「今から起きるよ」
「わかった。朝食作ってるから食べてね。私用事ができたから早く出ることになったの」
珍しい、と心の中でつぶやく。彼女がこんなに早くから家を出るなんてな。気にもなったけど余計な詮索はしない方がいいと思いとどまる。
「りょーかい、いってらっしゃい」
そういうと階段を降りているのだろう床が軋む音が聞こえてきた。毎日俺を起こしに来るなんて苦労するだろうになぜここまでするのか。最初は冷たく当たりすぎたせいだろうか、それでここまでしてもらっているのなら申し訳ない。
「帰ってきたら謝っておくか」
誰にいうわけでもなく、自分に言い聞かせるように呟く。
朝食にはラップがかけられていてテーブルに並べられていた。一枚のメモ用紙も添えられていて無意識に手に取る。 文章を読む前に誰が書いたのか~より~の部分を先に見た。
「愛理さんが書いたのか……」
メモ用紙に書かれた俺の字とは比べ物にならないほど綺麗な字を読んだ。
「中華ばかりではいけないので和食にもチャレンジしてみました。お母さんにもお父さんにもまだ食べさせたことがありません。最初に晴くんに味見してもらいたかったんです。是非感想を聞かせてください」
確かに皿に入っている料理は和食ばかりだった。まだ慣れていないのか形が崩れかけているものもある。
最後の方に小さく書かれている文章に気づいた。なんだかそれは何回も消しゴムで消されたのか薄く書かれた跡が残っている。しかし小さく書かれた文章はなぜかボールペンで書かれていた。
「晴くんを迎えに女の子が一人来ていました。まだ寝ていることを伝えたら先に行ってしまいました」
俺を迎えに女の子が?一体誰のことだろうか。凛か?いいや凛なら愛理さんだって会っているから隠す必要はない。
誰のことかわからずに朝食につけられたラップを外して口に運ぶ。
「うん、美味しい」
†
準備を終えてドアを開けるといつも通りのつまらない風景が広がっている。と思ったらそんなことはなく、一人ちょうどインターホンを押そうとしている人間がいた。俺が出てくるのとちょうどだったためかびっくりしたような顔をした後に少し顔を引き攣って笑った。
「は、晴くん。おはよう」
たまに向かいにきてくれる彼女はいつもとは違う。だから複雑な気持ちになった。
「凛、わざわざ来てくれたのか」
「うん、晴くんいつもは寝てる時間だから急に出てきてびっくりしちゃった」
次は引き攣らずしっかりと笑顔だ。ポニーテールで結ばれた髪は異様に長く感じさせられた前の髪よりもスッキリしているように見えた。
凛の笑顔ってこんな顔してたんだなと素直に思った。もちろん可愛いという意味でだ。前まではあまり感じられなかった感情、最近になって急にくるようになってしまった。それは凛が変わったからか?それともずっと昔から思っていたのに自分に嘘をついていたのかわからない。
そして今の凛の一番困るところは異様に目を合わせてくるところだ。ついこの前まではずっと下を向いたり俯いてて目を合わせることも難しかった。でも今は違う。じっと俺の今考えていることを見透かされているように瞳を見つめている。俺はたまらず目を背けてしまう。
「晴くん、どうかしたの?」
「いいや、なんでもないんだ。でも凛変わったなって………」
彼女の顔を見ることができない。だから今どんな顔をしているのかわからない。俺は凛に変わっていいと言った、しかし俺はその変わった凛を否定しようとしている。俺が彼女に放った言葉は無責任だっただろうか?間違っていたのだろうか?そんなことはない。彼女は変わって成功した。今後いい方向へ進んでいくに違いない。そう、一番許せないのは俺の心だ。きっとそうだ。間違っているのは俺自身なんだ。
目が覚める。なんだかいい眠りができていないようだ、まだ気分が怠い。
それもそのはず昨日の出来事があってから彼女のことが心配でならなかった。もちろんその彼女というのは柚葉ちゃんのことだ。昨日は助けることで精一杯で走っていってしまったけどよく考えてみたら警察に電話しておいた方が良かったのではないかと後悔している。一応後になって電話をしてみたものの相手にされなかった。
腑に落ちない気持ちを落ち着かせるためにベッドに潜ってみたが、あいつが柚葉ちゃんもしくは俺の元へ報復をしにくるのではないかと焦っては落ち着いてを繰り返していてなかなか寝付けなかったのだ。ようやく寝ついて見ても寝れたのは三時間程度。ベッドに寝ていてもわかるくらいに頭や体が重くて気分が上がらない。別に学校に行かないという選択肢もあるのだが、数日前から担任の先生に出席日数が足りていないからこれ以上休むのは良くないと言われてから内心そっちの方でも焦っていた。
「晴翔くん、起きてるかな?」
ドアの向こうからノックと共に愛理さんの声が聞こえてきた。彼女にも出席日数のことを話したら毎日起こしに来ると言い出した。最初は冗談かと思っていたがどうやら彼女は本気だったみたいだ。せっかくこうしてきてくれたわけだし少しの怠さなんか嘆いていないで黙って起きよう。
「今から起きるよ」
「わかった。朝食作ってるから食べてね。私用事ができたから早く出ることになったの」
珍しい、と心の中でつぶやく。彼女がこんなに早くから家を出るなんてな。気にもなったけど余計な詮索はしない方がいいと思いとどまる。
「りょーかい、いってらっしゃい」
そういうと階段を降りているのだろう床が軋む音が聞こえてきた。毎日俺を起こしに来るなんて苦労するだろうになぜここまでするのか。最初は冷たく当たりすぎたせいだろうか、それでここまでしてもらっているのなら申し訳ない。
「帰ってきたら謝っておくか」
誰にいうわけでもなく、自分に言い聞かせるように呟く。
朝食にはラップがかけられていてテーブルに並べられていた。一枚のメモ用紙も添えられていて無意識に手に取る。 文章を読む前に誰が書いたのか~より~の部分を先に見た。
「愛理さんが書いたのか……」
メモ用紙に書かれた俺の字とは比べ物にならないほど綺麗な字を読んだ。
「中華ばかりではいけないので和食にもチャレンジしてみました。お母さんにもお父さんにもまだ食べさせたことがありません。最初に晴くんに味見してもらいたかったんです。是非感想を聞かせてください」
確かに皿に入っている料理は和食ばかりだった。まだ慣れていないのか形が崩れかけているものもある。
最後の方に小さく書かれている文章に気づいた。なんだかそれは何回も消しゴムで消されたのか薄く書かれた跡が残っている。しかし小さく書かれた文章はなぜかボールペンで書かれていた。
「晴くんを迎えに女の子が一人来ていました。まだ寝ていることを伝えたら先に行ってしまいました」
俺を迎えに女の子が?一体誰のことだろうか。凛か?いいや凛なら愛理さんだって会っているから隠す必要はない。
誰のことかわからずに朝食につけられたラップを外して口に運ぶ。
「うん、美味しい」
†
準備を終えてドアを開けるといつも通りのつまらない風景が広がっている。と思ったらそんなことはなく、一人ちょうどインターホンを押そうとしている人間がいた。俺が出てくるのとちょうどだったためかびっくりしたような顔をした後に少し顔を引き攣って笑った。
「は、晴くん。おはよう」
たまに向かいにきてくれる彼女はいつもとは違う。だから複雑な気持ちになった。
「凛、わざわざ来てくれたのか」
「うん、晴くんいつもは寝てる時間だから急に出てきてびっくりしちゃった」
次は引き攣らずしっかりと笑顔だ。ポニーテールで結ばれた髪は異様に長く感じさせられた前の髪よりもスッキリしているように見えた。
凛の笑顔ってこんな顔してたんだなと素直に思った。もちろん可愛いという意味でだ。前まではあまり感じられなかった感情、最近になって急にくるようになってしまった。それは凛が変わったからか?それともずっと昔から思っていたのに自分に嘘をついていたのかわからない。
そして今の凛の一番困るところは異様に目を合わせてくるところだ。ついこの前まではずっと下を向いたり俯いてて目を合わせることも難しかった。でも今は違う。じっと俺の今考えていることを見透かされているように瞳を見つめている。俺はたまらず目を背けてしまう。
「晴くん、どうかしたの?」
「いいや、なんでもないんだ。でも凛変わったなって………」
彼女の顔を見ることができない。だから今どんな顔をしているのかわからない。俺は凛に変わっていいと言った、しかし俺はその変わった凛を否定しようとしている。俺が彼女に放った言葉は無責任だっただろうか?間違っていたのだろうか?そんなことはない。彼女は変わって成功した。今後いい方向へ進んでいくに違いない。そう、一番許せないのは俺の心だ。きっとそうだ。間違っているのは俺自身なんだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる