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9月9日
第七話 演技
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9月9日 第七話
放課後になり帰宅の準備をしようとした時に奴はきた。
「やあやあ、晴。今日の依頼が入ってるぜぃ」
見慣れすぎた顔がそこにはあった。
「悠斗、頼むからもっと早く言ってくれ。もう気分はすっかり帰宅して昼飯ようと思ってたのに……」
背中を数回バンバンと叩き豪快に笑う悠斗。
「まあ、そう堅いこと言うな。依頼はいつ来るか俺にもわからないんだしよ」
なんでだかよくわからないがこの学校には補欠部というものが存在する。読んで字の如くなんでも言ってくれれば補欠として入りますよってこと、言い換えれば何でも屋だな。そんな内容だから物好きなやつしかいない。事実部員は俺と悠斗と凛だけだ。悠斗は依頼の集計係、俺は引き受けて依頼をこなす。凛は最低部活ラインである三人以上を達成するために無理やり入れた幽霊部員だ。
「この部活の希望の光である晴に頑張ってもらわないといけないんだよ。よーし、この補欠部部長の平野悠斗。お前を副部長に認定してやる」
「なんでだよ。副部長なんてやりたくねえって別にいつも通りやればいいんだろ?」
グッドと親指を立てる。
「今回の依頼は演劇だ」
なるほど、演劇か。演劇っていうと……。
「ええぇ!演劇…!?」
「そうそう、なんか部員が足りなくて上映できるかわかんないらしくって、お前に託したってわけ」
「演技って色々練習しないといけないんじゃないのか?こんなど素人に出来ねぇよ」
「演技の指導は先輩がやるっていってたから大丈夫だよ。あとお前はどのスポーツでもど素人のくせしてできるじゃないか。いつもの容量で頼むよ」
確かにそうだけど、それはスポーツであって演劇ではない。今までスポーツしか依頼は来たことがなかったけどまさか文化系が来るとはな。もう悠斗は行かせる気満々だしな。
「経験してみるのも大事……か」
「そうそう、なんでも経験だぞ少年」
本当に調子のいいやつだ。深くため息をこぼして、依頼者の待つ演劇部室に向かった。その教室は旧校舎の一番上の階に使っていない教室があって人もあんまり寄らないから使っているとのこと、正直旧校舎なんて入ったことがないから俺にとっては迷路だ。ちなみに旧校舎は文化系の部活が使う教室ばかりでそれ以外の生徒は寄ることもなく三年を過ごすこともあるとかないとか。
ドアの目の前に立つ旧校舎特有の木造の扉はホームセンターのような匂いがした。銀色のノブを握る。ひんやりとして冷たい。ふと耳を澄ますと声が聞こえてきた。まあ、演劇部だから予想はしていたけどやっぱりするんだよな演技を……。
女性の声だった。ここで止まっててもダメだと感じてさっきから握っていたドアノブをひねりドアをあけた。
「私はあなたのことが好きなんです……」
彼女はまだ俺の存在に気づかずに演技に集中していた。邪魔をしたくなくていっとき黙って見ておくことにした。
にしても上手だった。オーバーな演技がドラマや声優と違って演劇だからこそだと感じた。身振り手振り体を動かしながら片手で持った台本のセリフを熱心に読み上げる。セリフだけで大体どんな内容の演技か理解できて勝手な想像もできた。きっと彼女も俺と同じような妄想をしながら演技をしているのだろう。
違和感を覚えた。なんでこの部室には彼女一人だけなのだろうか。他の部員はどこへ行ったったのだろう。周りを見渡すがやはり彼女一人だけ、あまりにもコソコソしていたから彼女の目線に止まり数秒目があったまま止まった。
「あ、あなた……誰ですか?」
最初に口を開いたのは彼女、自分の演技を見られていたのがよほどショックだったのか片手に持っていた台本を床に落として、落ちたことに気づいていない。ポカーンと口を開けて俺を見ている。
「あの……補欠部の橋本晴翔ですけど、あなたが依頼主の?」
そう伝えても数秒間考える余地が必要だったらしい、ようやく納得したと言わんばかりに顔を明るくして駆け寄ってきた。
「そうです!あたしです!」
驚いた。彼女の声はそこら辺の男子よりもはるかにでデカくそして広い。今の声だけで外の廊下全体まで響いていただろう。女子と言ったら凛みたいに小さい声をイメージしていたから心臓が飛び出そうだった。演劇部パワーなのか、それとも俺の偏見なだけで女子って声がでかいのか。
「よろしく。あたしが演劇部部長の原愛茉です!これからよろしく補欠部さん」
敬礼するように手を額の前出して笑った。
放課後になり帰宅の準備をしようとした時に奴はきた。
「やあやあ、晴。今日の依頼が入ってるぜぃ」
見慣れすぎた顔がそこにはあった。
「悠斗、頼むからもっと早く言ってくれ。もう気分はすっかり帰宅して昼飯ようと思ってたのに……」
背中を数回バンバンと叩き豪快に笑う悠斗。
「まあ、そう堅いこと言うな。依頼はいつ来るか俺にもわからないんだしよ」
なんでだかよくわからないがこの学校には補欠部というものが存在する。読んで字の如くなんでも言ってくれれば補欠として入りますよってこと、言い換えれば何でも屋だな。そんな内容だから物好きなやつしかいない。事実部員は俺と悠斗と凛だけだ。悠斗は依頼の集計係、俺は引き受けて依頼をこなす。凛は最低部活ラインである三人以上を達成するために無理やり入れた幽霊部員だ。
「この部活の希望の光である晴に頑張ってもらわないといけないんだよ。よーし、この補欠部部長の平野悠斗。お前を副部長に認定してやる」
「なんでだよ。副部長なんてやりたくねえって別にいつも通りやればいいんだろ?」
グッドと親指を立てる。
「今回の依頼は演劇だ」
なるほど、演劇か。演劇っていうと……。
「ええぇ!演劇…!?」
「そうそう、なんか部員が足りなくて上映できるかわかんないらしくって、お前に託したってわけ」
「演技って色々練習しないといけないんじゃないのか?こんなど素人に出来ねぇよ」
「演技の指導は先輩がやるっていってたから大丈夫だよ。あとお前はどのスポーツでもど素人のくせしてできるじゃないか。いつもの容量で頼むよ」
確かにそうだけど、それはスポーツであって演劇ではない。今までスポーツしか依頼は来たことがなかったけどまさか文化系が来るとはな。もう悠斗は行かせる気満々だしな。
「経験してみるのも大事……か」
「そうそう、なんでも経験だぞ少年」
本当に調子のいいやつだ。深くため息をこぼして、依頼者の待つ演劇部室に向かった。その教室は旧校舎の一番上の階に使っていない教室があって人もあんまり寄らないから使っているとのこと、正直旧校舎なんて入ったことがないから俺にとっては迷路だ。ちなみに旧校舎は文化系の部活が使う教室ばかりでそれ以外の生徒は寄ることもなく三年を過ごすこともあるとかないとか。
ドアの目の前に立つ旧校舎特有の木造の扉はホームセンターのような匂いがした。銀色のノブを握る。ひんやりとして冷たい。ふと耳を澄ますと声が聞こえてきた。まあ、演劇部だから予想はしていたけどやっぱりするんだよな演技を……。
女性の声だった。ここで止まっててもダメだと感じてさっきから握っていたドアノブをひねりドアをあけた。
「私はあなたのことが好きなんです……」
彼女はまだ俺の存在に気づかずに演技に集中していた。邪魔をしたくなくていっとき黙って見ておくことにした。
にしても上手だった。オーバーな演技がドラマや声優と違って演劇だからこそだと感じた。身振り手振り体を動かしながら片手で持った台本のセリフを熱心に読み上げる。セリフだけで大体どんな内容の演技か理解できて勝手な想像もできた。きっと彼女も俺と同じような妄想をしながら演技をしているのだろう。
違和感を覚えた。なんでこの部室には彼女一人だけなのだろうか。他の部員はどこへ行ったったのだろう。周りを見渡すがやはり彼女一人だけ、あまりにもコソコソしていたから彼女の目線に止まり数秒目があったまま止まった。
「あ、あなた……誰ですか?」
最初に口を開いたのは彼女、自分の演技を見られていたのがよほどショックだったのか片手に持っていた台本を床に落として、落ちたことに気づいていない。ポカーンと口を開けて俺を見ている。
「あの……補欠部の橋本晴翔ですけど、あなたが依頼主の?」
そう伝えても数秒間考える余地が必要だったらしい、ようやく納得したと言わんばかりに顔を明るくして駆け寄ってきた。
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「よろしく。あたしが演劇部部長の原愛茉です!これからよろしく補欠部さん」
敬礼するように手を額の前出して笑った。
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