4 / 46
第4話
しおりを挟む
「いいから銃を収めて。どっちにしろ今日は死人が出なかっただけマシ、喋っててもいいから書いてよね。残業は嫌なんでしょ? ……ねえ、今回も一般人の目前で発砲、警察官職務執行法違反で始末書モノかなあ?」
「この前ヒマなときに二、三十枚まとめて書いたの、何処にやったっけか?」
現代の犯罪はIT関連がメインで、情報漏洩等の危険を考慮した挙げ句、惑星警察でも鉄壁のセキュリティを誇る部署以外の報告書などは、全て紙媒体に手書きというローテクが原則である。一周回って戻ってきた訳だ。
筆跡は内容と共に捜査戦術コンに査定されるので、幾ら他の課員がヒマそうでも課長の許可なくして押し付けることはできない。
ぎゃあぎゃあ騒ぎつつシドとハイファは書類と格闘を始めた。先程からこちらを向いて巨大な溜息をつくヴィンティス課長と目が合わないよう、物言いたげな上司をワザと無視している。
軍機である別室関係の密談をするために課長席の真ん前がハイファ、その左隣がシドのデスクだ。互いの言動は筒抜けなのだがここで捕まるワケにはいかない。
宝飾店強盗狙撃逮捕の報を聞いて多機能デスクに沈没していた課長だが、胃薬と増血剤のお世話になってようやく復活したばかり、ここで捕まると説教が小言に、小言が愚痴になって、不景気なBGMを定時まで聞かされるハメになるのだ。
それで哀しみを湛えた青い目がじっと見ているのにも二人は気付かぬフリをしている。
部下から気付かぬフリをされていることにヴィンティス課長も勿論気付いていた。
そもそもイヴェントストライカも以前から嘆願されていたバディをつければ多少は大人しくなる、事件発生率を多少なりとも下げられるだろうと根拠もなく思っていたのが間違いだった。管内の事件発生率は全く以て変わらなかった。寧ろ右肩上がりとなり、ここ数ヶ月で上方安定した気すらしていた。
いや、始末書の数が二倍に増えただけ損かも知れないと思う。
それでも単独時代には書類が建築基準法違反並みにテーブルマウンテンを形成していたシドのデスクだ。それが片付いただけでも良しなのか――。
言いたいことが多すぎて、却って消化不良を起こしたような胃袋を宥めつつ、ヴィンティス課長はくるりと背を向けて、そぼ降る雨に滲んだ窓外を眺め始めた。
そのときデカ部屋の隅でホロTVを視ていた在署番や、他課の下請けから帰ってきていた課員たちがざわめいた。反射的にシドとハイファも振り返る。
「タイタンの爆破は連続、今度は第七宙港っスよ」
「それもまた宙港の荷物受取所、死傷者百十二名で更に確認中……酷いな」
「こりゃあ入星管理局警備部は立つ瀬がねぇよなあ」
「まだタイタン基地の兵員は投入しないんスかね」
口々に言う彼らもこうして聞いている身も、全員が完全には他人事とは捉えていない。タイタンのハブ宙港は本星の最後の砦、そこがテロの標的となっている。今後それが本星へ、それも星系政府中枢のあるここセントラルエリアへと移行しないとは限らないのだ。
「シド、手、止まってる。もうすぐ十七時半、定時だよ」
「ニュースくらい、いいじゃねぇか」
「僕も気になるけどきっとどの局も一晩中これだからあとで幾らでも視られるって」
「相変わらず別室のスパイはクールなことで」
小さく呟いたシドに腹を立てた風でもなく、ハイファは要領良く自分の書類を終わらせFAX形式の捜査戦術コンに流すと、戻ってきてデスクに着き頬杖をついた。
「ヴィクトル星系解放旅団のドラクロワ=メイディーンは自星のテラ連邦軍管轄宙港だけでなく、惑星内駐留のテラ連邦軍駐屯地も複数爆破してる。あとテラに与したとされた政治屋さんや法学関係者の関連施設もね。殺傷した総計は一万を下らない」
「一万って、マジかよ?」
涼しい顔でハイファはあっさり頷いた。
「それでもヴィクトルだけでなく似たような境遇の星の人たちから熱狂的な支持を受けてる。宗教絡みでなくそこまで支持されるのも珍しいよ。ある種のカリスマだね」
「二、三人殺して殺人者、千人殺せば英雄ってか」
「そう。きっとこれだけじゃ終わらないよ」
「なるほど。問題は飛び火の方向だな」
「そういうこと。風向きからしてテラの旗色は悪いけど、僕は、僕と貴方が無事に生きてればそれでいいの。それより僕は今晩のメニューが心配。何を作ろうかなあ」
ハイファの主夫根性は見上げたモノがある。本人がこだわるだけあって腕もいいのだ。恩恵に与るとき、シドはしみじみ幸せを噛み締めるという一種の餌付けだった。
だが暢気なハイファの呟きに、シドは少々焦って周囲を見回す。
付き合い始めて数ヶ月、既に周囲からは冷やかされることすらなくなったというのに、未だにシドは七分署内でハイファとの仲を公に認めていない照れ屋で意地っ張りなのだ。
同性どころか異星人とでも婚姻が認められ、遺伝子操作で子供まで望める現代である。男所帯で思考は中学生男子並みの機捜課でも、そうそう同じ話題で何ヶ月も保たない。
事実、現在の話題は、『赤ん坊ができたばかりのヤマサキの嫁さん再び妊娠』と、『いつも涼しい顔をしているマイヤー警部補の相手も男か?』で、そんなに警戒せずともシドとハイファはとっくにカップル認定されていた。
今更なことで焦るシドをハイファは呆れて見ている。
噂話に花を咲かせていた同僚たちも定時をとっくに過ぎて殆どが帰ってしまい、深夜番とダベる数人を残してデカ部屋はスカスカ、ヴィンティス課長の姿すらいつの間にか消えていた。
内緒話を聞かれる恐れはなく、シドは安堵して再び書類を酷い右下がりの文字で埋め始める。そんなシドにハイファが泥水のおかわりを運んできた。
「おっ、サンキュ」
単独時代が長かったシドは遊撃的身分として扱われ、どの班にも属していない。その上に深夜番も免れていた。
何も優遇されているのではなく、班に属さないのは特定人員だけに負荷が掛かるのを防ぐため、深夜番に就かないのは真夜中の大ストライク非常呼集という流れをヴィンティス課長以下課員全員が恐れるためである。
ハイファも同様の扱いだ。
故に万年日勤の表在署、つまり昼間は署に詰めての事件待ち、夜は自宅待機なので仕事のキリがよければ定時で帰れるのだ。その後、約三十分かけてシドはやっと書類をFAX形式の捜査戦術コンに流すことができた。
濡れた服を詰めた鞄を手に深夜番に挨拶し、人員の動向を示すデジタルボードを操作するとハイファと自分の名前の欄に『自宅』と入力し、二人で署から出る。
「この前ヒマなときに二、三十枚まとめて書いたの、何処にやったっけか?」
現代の犯罪はIT関連がメインで、情報漏洩等の危険を考慮した挙げ句、惑星警察でも鉄壁のセキュリティを誇る部署以外の報告書などは、全て紙媒体に手書きというローテクが原則である。一周回って戻ってきた訳だ。
筆跡は内容と共に捜査戦術コンに査定されるので、幾ら他の課員がヒマそうでも課長の許可なくして押し付けることはできない。
ぎゃあぎゃあ騒ぎつつシドとハイファは書類と格闘を始めた。先程からこちらを向いて巨大な溜息をつくヴィンティス課長と目が合わないよう、物言いたげな上司をワザと無視している。
軍機である別室関係の密談をするために課長席の真ん前がハイファ、その左隣がシドのデスクだ。互いの言動は筒抜けなのだがここで捕まるワケにはいかない。
宝飾店強盗狙撃逮捕の報を聞いて多機能デスクに沈没していた課長だが、胃薬と増血剤のお世話になってようやく復活したばかり、ここで捕まると説教が小言に、小言が愚痴になって、不景気なBGMを定時まで聞かされるハメになるのだ。
それで哀しみを湛えた青い目がじっと見ているのにも二人は気付かぬフリをしている。
部下から気付かぬフリをされていることにヴィンティス課長も勿論気付いていた。
そもそもイヴェントストライカも以前から嘆願されていたバディをつければ多少は大人しくなる、事件発生率を多少なりとも下げられるだろうと根拠もなく思っていたのが間違いだった。管内の事件発生率は全く以て変わらなかった。寧ろ右肩上がりとなり、ここ数ヶ月で上方安定した気すらしていた。
いや、始末書の数が二倍に増えただけ損かも知れないと思う。
それでも単独時代には書類が建築基準法違反並みにテーブルマウンテンを形成していたシドのデスクだ。それが片付いただけでも良しなのか――。
言いたいことが多すぎて、却って消化不良を起こしたような胃袋を宥めつつ、ヴィンティス課長はくるりと背を向けて、そぼ降る雨に滲んだ窓外を眺め始めた。
そのときデカ部屋の隅でホロTVを視ていた在署番や、他課の下請けから帰ってきていた課員たちがざわめいた。反射的にシドとハイファも振り返る。
「タイタンの爆破は連続、今度は第七宙港っスよ」
「それもまた宙港の荷物受取所、死傷者百十二名で更に確認中……酷いな」
「こりゃあ入星管理局警備部は立つ瀬がねぇよなあ」
「まだタイタン基地の兵員は投入しないんスかね」
口々に言う彼らもこうして聞いている身も、全員が完全には他人事とは捉えていない。タイタンのハブ宙港は本星の最後の砦、そこがテロの標的となっている。今後それが本星へ、それも星系政府中枢のあるここセントラルエリアへと移行しないとは限らないのだ。
「シド、手、止まってる。もうすぐ十七時半、定時だよ」
「ニュースくらい、いいじゃねぇか」
「僕も気になるけどきっとどの局も一晩中これだからあとで幾らでも視られるって」
「相変わらず別室のスパイはクールなことで」
小さく呟いたシドに腹を立てた風でもなく、ハイファは要領良く自分の書類を終わらせFAX形式の捜査戦術コンに流すと、戻ってきてデスクに着き頬杖をついた。
「ヴィクトル星系解放旅団のドラクロワ=メイディーンは自星のテラ連邦軍管轄宙港だけでなく、惑星内駐留のテラ連邦軍駐屯地も複数爆破してる。あとテラに与したとされた政治屋さんや法学関係者の関連施設もね。殺傷した総計は一万を下らない」
「一万って、マジかよ?」
涼しい顔でハイファはあっさり頷いた。
「それでもヴィクトルだけでなく似たような境遇の星の人たちから熱狂的な支持を受けてる。宗教絡みでなくそこまで支持されるのも珍しいよ。ある種のカリスマだね」
「二、三人殺して殺人者、千人殺せば英雄ってか」
「そう。きっとこれだけじゃ終わらないよ」
「なるほど。問題は飛び火の方向だな」
「そういうこと。風向きからしてテラの旗色は悪いけど、僕は、僕と貴方が無事に生きてればそれでいいの。それより僕は今晩のメニューが心配。何を作ろうかなあ」
ハイファの主夫根性は見上げたモノがある。本人がこだわるだけあって腕もいいのだ。恩恵に与るとき、シドはしみじみ幸せを噛み締めるという一種の餌付けだった。
だが暢気なハイファの呟きに、シドは少々焦って周囲を見回す。
付き合い始めて数ヶ月、既に周囲からは冷やかされることすらなくなったというのに、未だにシドは七分署内でハイファとの仲を公に認めていない照れ屋で意地っ張りなのだ。
同性どころか異星人とでも婚姻が認められ、遺伝子操作で子供まで望める現代である。男所帯で思考は中学生男子並みの機捜課でも、そうそう同じ話題で何ヶ月も保たない。
事実、現在の話題は、『赤ん坊ができたばかりのヤマサキの嫁さん再び妊娠』と、『いつも涼しい顔をしているマイヤー警部補の相手も男か?』で、そんなに警戒せずともシドとハイファはとっくにカップル認定されていた。
今更なことで焦るシドをハイファは呆れて見ている。
噂話に花を咲かせていた同僚たちも定時をとっくに過ぎて殆どが帰ってしまい、深夜番とダベる数人を残してデカ部屋はスカスカ、ヴィンティス課長の姿すらいつの間にか消えていた。
内緒話を聞かれる恐れはなく、シドは安堵して再び書類を酷い右下がりの文字で埋め始める。そんなシドにハイファが泥水のおかわりを運んできた。
「おっ、サンキュ」
単独時代が長かったシドは遊撃的身分として扱われ、どの班にも属していない。その上に深夜番も免れていた。
何も優遇されているのではなく、班に属さないのは特定人員だけに負荷が掛かるのを防ぐため、深夜番に就かないのは真夜中の大ストライク非常呼集という流れをヴィンティス課長以下課員全員が恐れるためである。
ハイファも同様の扱いだ。
故に万年日勤の表在署、つまり昼間は署に詰めての事件待ち、夜は自宅待機なので仕事のキリがよければ定時で帰れるのだ。その後、約三十分かけてシドはやっと書類をFAX形式の捜査戦術コンに流すことができた。
濡れた服を詰めた鞄を手に深夜番に挨拶し、人員の動向を示すデジタルボードを操作するとハイファと自分の名前の欄に『自宅』と入力し、二人で署から出る。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
大嫌いは恋の始まり
氷室ユリ
キャラ文芸
この人だけはあり得ない!そう思っていたのに………。いつも私を振り回す〝普通〟の感情が分からない男。数々のトラブルを乗り越えた先に待っていたのは?笑いあり、怒りあり、涙ありの、ちょっとだけダークなストーリー。恋愛はもちろん、兄妹愛、師弟愛、親子愛、たくさんの愛が詰まってます!読み返しててギョッ……私ってば、どんだけ悲劇のヒロイン!?
※内容は全てフィクションです。
※「小説家になろう」でも公開中ですが、こちらは加筆・修正を加えています。
※こちらは続編がございます。別タイトルとなっておりますのでご注意ください。
マジカル・キャットは月夜に舞う
蒼真まこ
キャラ文芸
母の遺品にあった不思議なチョーカーの力で、黒猫に変身するようになった時村まゆ。
「『ご先祖は魔女なのよ』って冗談まじりにいわれてたけど、あれって本当だったの?」
突然のピンチで気を失った猫のまゆを拾って(救って)くれたのはステキな男性だった。
この力っていい事ばっかり? と思ったまゆだったが、世の中そんなに甘くはないようで……。
切ない恋と運命に、ひとりの女性として、時に猫となりながら奮闘していく。
現代の魔女は猫だった!?……かもしれない物語。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
古からの侵略者
久保 倫
キャラ文芸
永倉 有希は漫画家志望の18歳。高校卒業後、反対する両親とケンカしながら漫画を描く日々だった。
そんな状況を見かねた福岡市在住で漫画家の叔母に招きに応じて福岡に来るも、貝塚駅でひったくりにあってしまう。
バッグを奪って逃げるひったくり犯を蹴り倒し、バッグを奪い返してくれたのは、イケメンの空手家、壬生 朗だった。
イケメンとの出会いに、ときめく永倉だが、ここから、思いもよらぬ戦いに巻き込まれることを知る由もなかった。
女児霊といっしょに。シリーズ
黒糖はるる
キャラ文芸
ノスタルジー:オカルト(しばらく毎日16時、22時更新)
怪異の存在が公になっている世界。
浄霊を生業とする“対霊処あまみや”の跡継ぎ「天宮駆郎」は初仕事で母校の小学校で語られる七不思議の解決を任される。
しかし仕事前に、偶然記憶喪失の女児霊「なな」に出会ったことで、彼女と一緒に仕事をするハメに……。
しかも、この女児霊……ウザい。
感性は小学三年生。成長途中で時が止まった、かわいさとウザさが同居したそんなお年頃の霊。
女心に疎い駆け出しの駆郎と天真爛漫無邪気一直線のななのバディ、ここに爆誕!
※この作品では本筋の物語以外にも様々な謎が散りばめられています。
その謎を集めるとこの世界に関するとある法則が見えてくるかも……?
※エブリスタ、カクヨムでも公開中。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる