セイレーン~楽園27~

志賀雅基

文字の大きさ
上 下
42 / 43

第42話(BL特有シーン・回避可)

しおりを挟む
 されるがままにシドはハイファの攻めを受け入れ続けた。
 肩から鎖骨、首筋までを思い切り吸われる。衣服を身に着けても見えてしまう処にまできつく証しを刻まれて、ハイファの強い想いに酔ったようにシドはいつしか声を洩らしていた。

「んっ、ああっ……ハイファ……あっふ――」

 滅多にシドが出さない低く甘い声をもっと聞きたくて、ハイファはシドを赤いアザだらけにしてしまう。そして身を起こすとシドの下衣を剥ぎ取るように足を抜かせた。すっかり勃ち上がったものを掴んで頬ずりし、シドの零した蜜で頬を汚すと再びシドの躰に跨る。熱く太く硬いシドを握って自分の後ろにあてがった。

 そのまま受け入れようとしているのを知ってシドは焦る。

「だめだ、ハイファ、傷つける」
「傷つけられたい……貴方は僕を傷つける、それで責任を取るんだよ」
「バカ言うな、ハイファ、マジでやめ……あっ、あっ、あうっ!」

 馴らしてもいないそこに座り込むようにしてハイファは、ひと息でシドを根元まで収めてしまっていた。鋭い痛みが走ってシドは思わず悲鳴のような声を洩らしてしまう。狭い窄まりにきつく締めつけられ、まだ痛むのを堪えながらハイファの身を案じた。

 引き裂いてしまっていてもおかしくない、そのくらいの衝撃だった。

「くっ! 大丈夫か、ハイファ?」
「大丈夫、だとでも……思ってるの?」
「無理するな、すぐ抜いて――」

「だめ、言った筈……あっふ、こうして一生、貴方を閉じ込めたいよ」
「俺だって、お前の中にずっと入っていたいくらいだぜ」
「んっ、シド……すごく硬い、太いよ……はぁん」

 自ら望んだ苦痛を愛し人と共有し、ハイファは甘く鳴いた。話している間も、細い身を揺らすこともできないくらいに苦しかった。だが体内で息づくシドを感じられる悦びと、少し歪ませた端正なシドの酷く色っぽい顔を見られる誇らしさで満たされている。

 荒い息をつきながら動けぬままに二人は上下から見つめ合った。

「ったく、無茶しやがって」
「だって……ずっと、ずっと欲しかった――」

 そう言うとハイファはまた溢れてきた涙を零すまいと喉を仰け反らせて上を向いた。白い喉からしなやかな躰のラインが凄絶なまでの色気を感じさせ、シドは堪らなくなって腰を僅かに揺らす。苦痛が融け去り、温かく、きつくも柔らかなハイファに包まれて快感が湧き起こり始めていた。応じてハイファが身を浮かせる。

「もう、いいのか?」
「うん……欲しいよ、シド」
「お前のものだからな、幾らでも好きにしていいんだぞ」

 ゆっくりとハイファが細い腰を上下させだした。苦しさは残っていたが、それでもハイファは動きを止めない。シドをいかせたい、それだけを思って太いものを幾度も受け入れる。

 見下ろしたシドは己のものが細い躰を貫いている光景に我慢も限界、粘膜がぬるんで淫らな音を立て出すと同時に、思い切り腰を突き上げた。強烈な快感が湧く。

「ああっ、シド……すご、い……いい、ああんっ!」
「ハイファ……本当に、いいのか……くっ!」
「いい、シド、シド……ああっ、はぁんっ!」

 夢中で上下から躰をぶつけ合った。シドは下から存分に掻き回し、ハイファを甘く高く鳴かせる。ハイファも自らに熱い楔を打ち込んでは離れてしまう寸前まで引き抜いて、またシドを包み込んだ。そうしながらシドの指に自分の指を絡ませる。

 両手をシーツに縫い止められ、シドは淫らに細い腰を蠢かせるハイファを見上げた。

「こうしてると……うっ、く……俺が、犯されてるみたいだな」
「そうだよ、んっ、僕がシドを……ああっ、もう――」

 急激にハイファを快感のピークが襲っていた。絶頂感を押し返せない。思わず締めつけたシドにもそれは伝染する。激しい行為でベッドが軋んだ。熱い吐息と喘ぎが室内に響く。

 二人は数度、躰をぶつけ合って解放した。

「シド、一緒に、お願い……早く、あっ……はうっ!」
「ハイファ……俺も……あっく……あうっ!」

 芯を熱く濃く濡らされるのを感じながらハイファはシドの頬にまで白濁を弾けさせる。幾度も身を震わせて迸らせたのち、ハイファは自らの放ったものの上に倒れ込んだ。シドは構わず細い躰をきつく抱き締める。白い頬に流れた涙を乾いた唇で吸い取った。

 だが若草色の瞳が見上げた切れ長の目には、まだ消しがたい情欲が湛えられている。見ればシドは一度放ってなお屹立させたままだ。

「シド、貴方まだ――」
「いや、もういい。お前、傷ついたかも知れねぇだろ」
「それでもいい……好きなだけ、僕の中でいってよ」

 温かな象牙色の肌から身を起こすと、ハイファはまたシドの首筋に自らの証しをくっきりと刻み込む。満足したように微笑み、伸びやかな肢体をベッドに這わせた。
 上体をシーツに預けて腰を高く掲げて膝を開いた、秘部も露わな煽情的な姿態をとると、肩越しにシドを振り向いて誘う。

「ねえ、シド、して。誰でもない、僕を埋めてよ」
「くっ……ハイファ!」

 ハイファの腹の下に毛布を突っ込むとシドは細い腰を掴んで、今しがた己の放ったものが溢れ出しているそこにねじ込むように突き立てていた。最初から激しく、容赦なく粘膜を擦り上げる。傷つけていれば傷を深くするかと思ったが、ハイファの切実な目がシドに逃げることを許さなかった。

 そうして二人分の快感を生んでいるうちに理性がとぶ。

「ハイファ……ハイファ!」
「シド、もっと、もっと激しくして!」

 煽られるままにシドはハイファを揺らした。中で一度いき、同時にハイファもシドの手の中で溢れさせた。それでもハイファはきつく締めつけ、シドを閉じ込めて離そうとしない。

「ハイファ、俺も、もう――」
「僕も、おかしくなりそう……んっ、でも躰が勝手に……ああんっ!」

 三度目にシドが注ぎ込むと同時にハイファもまたシドの手に弾けさせ、それでようやくハイファの躰から全ての力が抜ける。シドもさすがに肩で息をしていた。

「ハイファ、大丈夫か?」
「ん……平気だから」

 喘ぎ疲れてハイファの声は見事に嗄れていた。シドはベッドから滑り降りると洗面所で手を洗い、キッチンから水を満たしたグラスを持ってくる。上体を起こすこともできないハイファに口移しで冷たい液体を流し込んだ。
 
 グラス一杯を貰ってハイファはやっと息をつく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

処理中です...