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第26話
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二杯目のコーヒーを飲みながらハイファが伯爵に訊く。
「本当に泊めて頂いてもいいんですか?」
「他星からの賓客を追い出せませんな。今日の詫びと思ってくれれば幸いだが」
「では、遠慮なくお言葉に甘えさせて頂きます」
ゆっくりとしたディナーを終え、シドとハイファはゲストルームに案内される前に人魚の様子を見学させて貰うことにした。ブランデーをがぶ飲みするアーサー以外の三人が食卓を立つと執事殿が先導して長い廊下を辿る。
「夜ですからな、あんまり見えんと思いますぞ」
そう言いながら廊下の端のドアを伯爵が開けた。カンテラを提げた執事殿が先に外に出る。外はもう白い砂利のビーチで四人はざくざくと音を立てて海際まで歩いた。
海際には石を組み合わせた低い堤防があった。月明かりとランプの光で堤防が随分と長く、海の先の方まで続いているのが分かる。遠目にもう一ヶ所堤防があるのが見えた。
「両方の堤防の先に網が張ってありましてな、それでこの養殖場が囲ってあるんです」
「ふうん。人魚って何を食うんだ?」
「主に魚ですなあ。海草や貝類に甲殻類も食べるが」
ビーチからは何も見えず、シドはリモータのバックライトを最大レンジにすると、幅が五十センチほどの堤防に登ってみた。海風が強い。あとからハイファも登ってきたので滑りやすい石組みの上を先に行かせる。細い躰が風に煽られて海に落ちないよう背後から見守りながら慎重に歩き、二人して堤防の真ん中辺りから海を覗き込んだ。
翻る尾びれが見えた。それが幾つも浮上してきて、ふいに海面に人が顔を出す。一人ではない。男女取り混ぜて四人が躰を揺らしながら上体を波間に晒した。不思議そうな顔をしてシドとハイファを注視する。赤毛に金髪など様々の彼らだが髪は一様に長かった。
海水に長い髪が揺らめき、見つめていると人魚の一人が声を掛けてきた。
「こんばんは。新しい業者さんかしら?」
鈴を鳴らすような女性の声にシドは何となく怯む。一緒に覗き込んだハイファが答えた。
「こんばんは。僕らは業者じゃないよ、伯爵の客としてきただけ」
「なあんだ、順番じゃないのか」
若い男性がつまらなそうに言い、二人が海に潜っていく。残ったのは男女二人で、小さな水かきのついた手を握り合っているのを見ると恋人同士か夫婦なのかも知れない。
「順番って、もしかして……?」
「そうよ、食べられる順番。わたしたちは食べられてやっと地上に立つことができるの」
「地面を二本の足で歩くのは僕たちの夢なんだ」
「……そっか」
呟いたハイファがまさに風に煽られて、シドは慌てて腕を掴むと細い腰に腕を回した。
「ハイファ、戻ろうぜ」
「うん。……夜遅くにごめんね」
人魚は一様にフレンドリーらしく、男女は水かきの手を振って見送ってくれる。
並んでは歩けないのでまたハイファを先に行かせ、シドはハイファのジャケットの上から腰のベルトを掴んで慎重に移動した。堤防から降りるときに見渡すと、侵入者防止用らしい有刺鉄線の柵が長々と白いビーチを分断しているのが見えた。
カンテラの光の許へ戻るまで二人は無言だった。
「あとは屋敷の地下にエサ場があるが、そこもお見せしますかな」
「お願いします」
何処に密輸のヒントがあるか知れない。ハイファは伯爵や執事殿と会話しつつ色々と探りを入れる。シドは黙ってついてゆくのみだ。
屋敷の廊下の端の扉から入ると傍の階段を降りた。地下一階にエサ場はあった。
ドアを開けると四角い部屋の半分が石組みの床、半分がプールのような水槽で海水が満たされている。水槽の向こうには半分以上が水に浸かったドアがあった。
「エサ場というのは便宜上でして、本当のエサは海上から船を堤防に着けてやってます」
「じゃあ、ここは?」
「次に業者に回す人魚をここで管理しているんですよ」
話し声とランプの明かりで人魚の男女が五人浮上し、ここでもシドたちの方を不思議そうに注視する。彼らは四人が近づかないのを見取ると、潜って緩やかに泳ぎ始めた。
先程の人魚たちと違い、喋ることもなく彼らは気怠げに水中を行き来している。
シドとハイファの問うような視線に伯爵が答えた。
「ここでのエサには薬を混ぜておるんです」
「薬……どうして?」
「まあ、人魚にも色々な考えを持つ者がおりますからな」
「大人しくさせておく手段ってことか?」
何の感慨もない様子で伯爵は頷く。シドは何処かが麻痺しているとしか思えない伯爵たちを暫し凝視してから、知れず溜息を洩らした。何とも云えない感情が胸に湧いて、却って言葉が出なかった。その点、宇宙を駆け巡るスパイだったハイファは淡々としている。
「どうやって業者は人魚をつれていくのかな?」
「それも海から船ですな。レヴィ島という離島に運んで加工します」
「レヴィ島ですか」
「……もういいだろ、ハイファ」
「なら、ミクソンにゲストルームへ案内させるとしましょう」
単なる『食文化』について見学をさせ説明をした伯爵は人好きのする笑顔でそう言った。
ドアから出て階段を上り一階の廊下に出ると、シドは自分が思ってもみなかったほど、躰を硬くしていたことに気付く。正装の蝶タイをむしり取るように外し、深く息をついた。
大階段で伯爵に挨拶をして別れ、ミクソンに三階のゲストルームまで案内して貰う。
「朝食は八時半からです。お迎えに上がりますのでお待ち下さい」
「ありがとう。お休みなさい」
「ごゆっくりお過ごし下さい。では、お休みなさいませ」
慇懃な挨拶をして執事殿が消えるとドアロックをし、ハイファは早速室内の検分だ。
一方シドは猫足の華奢なテーブル上に、水差しとグラスや果物のかごと並んで陶器の灰皿を見つけ、煙草を咥えるとオイルライターで火を点ける。
妙に疲れた気分で、シドは腹の中に凝った感情を処理できず、紫煙混じりの溜息をつく。まだ密売グループに迫る端緒を掴んだだけ、なのにもう沢山だというのが本音だった。
だが脳裏に浮かんでいるのは囲いの中の人魚ではなかった。何故か赤い月のアリエスを泡立たせて現れた自由な彼女の姿が浮かんで離れない。
長い長い銀糸と煌めき揺れる尾びれ。小さな手についた虹色の水かき。高く澄んだ歌声――。
「わあ、ベッドは天蓋付きだよ。でもツインかあ。あ、窓の外はバルコニー、海が見えるよ」
ふいにハイファの声で我に返る。ハイファはカーテンを閉めると洗面所にトイレまで覗き、バスルームを開けて中を見るとシドに声を掛けた。
「ねえ、もうお風呂にお湯が入ってるよ」
「じゃあ、お前、先に入ってこい」
「あん、そんなこと言わずに一緒に入ろうよ。すっごく広いよ?」
じっと見られてシドは「吸い終わるまで待て」と煙草を振る。その間にハイファはクローゼットの中に入った元の服を見つけ、綺麗にクリーニングされているのをチェックし、ソファセットのロウテーブル上に置かれたショルダーバッグの中身や銃に異状がないのを確認した。
煙草を灰にしたシドはその場で盛装を脱ぎ捨て、同様にしたハイファが片端から衣服をクローゼットのハンガーに掛けてゆく。手際良く片付けるとハイファはシドの右頬の傷を看た。
「濡らしてから剥がした方がいいかも」
バスルームに入り、ふたつあったシャワーで二人一緒に温かな湯を浴びる。潮風でバサバサになった髪まで固形石けんで全身丸洗いし、シドは石で出来たバスタブの湯に身を沈めた。
ハイファは向かい合わせではなくシドの胸に背を預けるようにして浸かる。
「うーん、気持ちいい」
「気持ちよすぎるから、そんなにくっつくなよ」
「気持ちよすぎて悪いことでもあるの?」
「本当に泊めて頂いてもいいんですか?」
「他星からの賓客を追い出せませんな。今日の詫びと思ってくれれば幸いだが」
「では、遠慮なくお言葉に甘えさせて頂きます」
ゆっくりとしたディナーを終え、シドとハイファはゲストルームに案内される前に人魚の様子を見学させて貰うことにした。ブランデーをがぶ飲みするアーサー以外の三人が食卓を立つと執事殿が先導して長い廊下を辿る。
「夜ですからな、あんまり見えんと思いますぞ」
そう言いながら廊下の端のドアを伯爵が開けた。カンテラを提げた執事殿が先に外に出る。外はもう白い砂利のビーチで四人はざくざくと音を立てて海際まで歩いた。
海際には石を組み合わせた低い堤防があった。月明かりとランプの光で堤防が随分と長く、海の先の方まで続いているのが分かる。遠目にもう一ヶ所堤防があるのが見えた。
「両方の堤防の先に網が張ってありましてな、それでこの養殖場が囲ってあるんです」
「ふうん。人魚って何を食うんだ?」
「主に魚ですなあ。海草や貝類に甲殻類も食べるが」
ビーチからは何も見えず、シドはリモータのバックライトを最大レンジにすると、幅が五十センチほどの堤防に登ってみた。海風が強い。あとからハイファも登ってきたので滑りやすい石組みの上を先に行かせる。細い躰が風に煽られて海に落ちないよう背後から見守りながら慎重に歩き、二人して堤防の真ん中辺りから海を覗き込んだ。
翻る尾びれが見えた。それが幾つも浮上してきて、ふいに海面に人が顔を出す。一人ではない。男女取り混ぜて四人が躰を揺らしながら上体を波間に晒した。不思議そうな顔をしてシドとハイファを注視する。赤毛に金髪など様々の彼らだが髪は一様に長かった。
海水に長い髪が揺らめき、見つめていると人魚の一人が声を掛けてきた。
「こんばんは。新しい業者さんかしら?」
鈴を鳴らすような女性の声にシドは何となく怯む。一緒に覗き込んだハイファが答えた。
「こんばんは。僕らは業者じゃないよ、伯爵の客としてきただけ」
「なあんだ、順番じゃないのか」
若い男性がつまらなそうに言い、二人が海に潜っていく。残ったのは男女二人で、小さな水かきのついた手を握り合っているのを見ると恋人同士か夫婦なのかも知れない。
「順番って、もしかして……?」
「そうよ、食べられる順番。わたしたちは食べられてやっと地上に立つことができるの」
「地面を二本の足で歩くのは僕たちの夢なんだ」
「……そっか」
呟いたハイファがまさに風に煽られて、シドは慌てて腕を掴むと細い腰に腕を回した。
「ハイファ、戻ろうぜ」
「うん。……夜遅くにごめんね」
人魚は一様にフレンドリーらしく、男女は水かきの手を振って見送ってくれる。
並んでは歩けないのでまたハイファを先に行かせ、シドはハイファのジャケットの上から腰のベルトを掴んで慎重に移動した。堤防から降りるときに見渡すと、侵入者防止用らしい有刺鉄線の柵が長々と白いビーチを分断しているのが見えた。
カンテラの光の許へ戻るまで二人は無言だった。
「あとは屋敷の地下にエサ場があるが、そこもお見せしますかな」
「お願いします」
何処に密輸のヒントがあるか知れない。ハイファは伯爵や執事殿と会話しつつ色々と探りを入れる。シドは黙ってついてゆくのみだ。
屋敷の廊下の端の扉から入ると傍の階段を降りた。地下一階にエサ場はあった。
ドアを開けると四角い部屋の半分が石組みの床、半分がプールのような水槽で海水が満たされている。水槽の向こうには半分以上が水に浸かったドアがあった。
「エサ場というのは便宜上でして、本当のエサは海上から船を堤防に着けてやってます」
「じゃあ、ここは?」
「次に業者に回す人魚をここで管理しているんですよ」
話し声とランプの明かりで人魚の男女が五人浮上し、ここでもシドたちの方を不思議そうに注視する。彼らは四人が近づかないのを見取ると、潜って緩やかに泳ぎ始めた。
先程の人魚たちと違い、喋ることもなく彼らは気怠げに水中を行き来している。
シドとハイファの問うような視線に伯爵が答えた。
「ここでのエサには薬を混ぜておるんです」
「薬……どうして?」
「まあ、人魚にも色々な考えを持つ者がおりますからな」
「大人しくさせておく手段ってことか?」
何の感慨もない様子で伯爵は頷く。シドは何処かが麻痺しているとしか思えない伯爵たちを暫し凝視してから、知れず溜息を洩らした。何とも云えない感情が胸に湧いて、却って言葉が出なかった。その点、宇宙を駆け巡るスパイだったハイファは淡々としている。
「どうやって業者は人魚をつれていくのかな?」
「それも海から船ですな。レヴィ島という離島に運んで加工します」
「レヴィ島ですか」
「……もういいだろ、ハイファ」
「なら、ミクソンにゲストルームへ案内させるとしましょう」
単なる『食文化』について見学をさせ説明をした伯爵は人好きのする笑顔でそう言った。
ドアから出て階段を上り一階の廊下に出ると、シドは自分が思ってもみなかったほど、躰を硬くしていたことに気付く。正装の蝶タイをむしり取るように外し、深く息をついた。
大階段で伯爵に挨拶をして別れ、ミクソンに三階のゲストルームまで案内して貰う。
「朝食は八時半からです。お迎えに上がりますのでお待ち下さい」
「ありがとう。お休みなさい」
「ごゆっくりお過ごし下さい。では、お休みなさいませ」
慇懃な挨拶をして執事殿が消えるとドアロックをし、ハイファは早速室内の検分だ。
一方シドは猫足の華奢なテーブル上に、水差しとグラスや果物のかごと並んで陶器の灰皿を見つけ、煙草を咥えるとオイルライターで火を点ける。
妙に疲れた気分で、シドは腹の中に凝った感情を処理できず、紫煙混じりの溜息をつく。まだ密売グループに迫る端緒を掴んだだけ、なのにもう沢山だというのが本音だった。
だが脳裏に浮かんでいるのは囲いの中の人魚ではなかった。何故か赤い月のアリエスを泡立たせて現れた自由な彼女の姿が浮かんで離れない。
長い長い銀糸と煌めき揺れる尾びれ。小さな手についた虹色の水かき。高く澄んだ歌声――。
「わあ、ベッドは天蓋付きだよ。でもツインかあ。あ、窓の外はバルコニー、海が見えるよ」
ふいにハイファの声で我に返る。ハイファはカーテンを閉めると洗面所にトイレまで覗き、バスルームを開けて中を見るとシドに声を掛けた。
「ねえ、もうお風呂にお湯が入ってるよ」
「じゃあ、お前、先に入ってこい」
「あん、そんなこと言わずに一緒に入ろうよ。すっごく広いよ?」
じっと見られてシドは「吸い終わるまで待て」と煙草を振る。その間にハイファはクローゼットの中に入った元の服を見つけ、綺麗にクリーニングされているのをチェックし、ソファセットのロウテーブル上に置かれたショルダーバッグの中身や銃に異状がないのを確認した。
煙草を灰にしたシドはその場で盛装を脱ぎ捨て、同様にしたハイファが片端から衣服をクローゼットのハンガーに掛けてゆく。手際良く片付けるとハイファはシドの右頬の傷を看た。
「濡らしてから剥がした方がいいかも」
バスルームに入り、ふたつあったシャワーで二人一緒に温かな湯を浴びる。潮風でバサバサになった髪まで固形石けんで全身丸洗いし、シドは石で出来たバスタブの湯に身を沈めた。
ハイファは向かい合わせではなくシドの胸に背を預けるようにして浸かる。
「うーん、気持ちいい」
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