代わりはいない。だから

志賀雅基

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第10話(BL特有シーン・回避可)

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 ベッドに上がって結城の大腿部に跨り、患者服の紐を解いて前を開けると、結城はもう躰の中心を熱く硬く太く滾らせていた。そっと掴んで扱くと先端から滲み出た蜜が太い茎を伝って滴り落ちる。

 それがコウの手を、結城自身の下半身を濡らした。

「結城さん、すごい。こんなに僕が欲しかったんですか、SPに紛れ込むくらいに」
「悪いか? あんたこそ、コウ……こら、そんなに擦ったら保たない……あうっ!」

 掴んだ太いものをいきなりコウは口に含んでいた。初めての行為で慣れない舌づかい、歯が当たらないようにするだけで必死となる。時折溢れる蜜を啜り、夢中で唇を前後に動かした。

「くっ、あ……コウ、やめ、あっふ!」
「んんぅ、んっ……んんっ!」
「コウ、だめだ、それ以上……くうっ!」

 にわかに自分の声とは思えない喘ぎを結城は思わず洩らしていた。見下ろせば脚の間でコウの白い顔が苦悶にも似た表情を浮かべて太いものを舐めしゃぶり、自ら喉を突かんばかりに咥え込んでいる。美しくも淫らだった。

 それに手管を知らない無心さが却って急激に結城を追い詰めていた。腰を浮かせないようにするだけで、こちらも必死だ。内腿に当たる、さらりとした長めの金髪の感触までが疼きを溜めさせる。

「あっ、く……コウ、もう、はあっ……ああっ!」

 幾らも経たぬうちに結城はコウの口内で爆ぜさせた。喉にぶつけるように何度も放った熱く濃いものをコウは全て嚥下する。手で扱いて滲んだものまで舐め取ると結城の右肩の傷に障らないよう静かに逞しい胸に頬を寄せた。象牙色の滑らかな肌をゆっくりと撫でる。

「今度は、コウ、あんたの番だ」

 荒い息をつきながら言うと、コウは微笑んで見上げた。

「無理しないでいいですよ。明日はワープも控えて……んっ!」

 素早く上体を起こした結城はしなやかな細い背を抱きコウの唇を奪っていた。歯列を割って舌を侵入させ届く限りを舐め回す。不器用に応えるコウの舌を痺れるくらいに吸った。

「んんっ、ん……んんぅ……はぁん」
「いい声で鳴く……コウ、またつらくするが、いいか?」

 答える必要もなく常夜灯モードの薄暗い中でコウは互いの蜜で濡れた結城の指を受け入れる。
 しっかりと自分を抱くのが右腕なのを心配したのは僅かな間だった。一度きりの行為で既に躰は解かれた。何もかも忘れて腰が蕩けるような快感に身を浸す。

「ああん、結城さん……そこ、や、あん!」
「ここと、こっちもだろう?」

「ん、だめ……結城さん、僕、何だかおかしくなっちゃいそうで……あ、ああっ!」
「おかしくなんかならないから、心配するな。ほら、もっと――」

 増やした数指を窄まりに咥え込ませ、捩っては粘膜の入り口を緩めるたびに胸で身悶えするコウが結城は酷く愛しくなって、何処までも快感を与えてやりたい思いと、すぐにでもねじ込んでしまいたい想いとで揺れた。

 挿入した数指は既に溶かされそうに濡れ、コウも痛みなど感じていないようだ。

 それどころか我慢できなくなったらしく自ら結城の指を抜いた。すっかり緊張がほぐれているからか、完全にコウの躰も準備ができている。結城も捜一の自分を強引にSPに捩じ込んだほど、コウに心が傾くのを止められなかった。

 それでもホテルの時のように思い切りやらかし三日も寝込ませる訳にはいかない。慎重に細い脚を開かせ、できる限り優しくコウの躰に自らの蜜を塗り込めた。だがそこで胸を押されて結城は仰臥し、のしかかったコウが超至近距離で宣言した。

「結城さん、僕がするので貴方は寝ていて下さい」
「あんたがするって……コウ、あんた、そんなに勉強したのか?」
「違いますっ! ただ貴方に痛い思いをさせずに気持ち良くなって欲しいだけ――」

 微笑んで結城の躰に再び跨ったコウは一度放ってなお硬度を失わない結城を掴むとぬめりを塗り込むように動かしたのち、ゆっくりと細い腰を沈め始めた。だがやはりたった二度目、行為自体に馴れていないコウは苦しげに眉根を寄せている。

 それこそ罪を犯している気がして結城は腰を退こうとしたがコウは許さなかった。

「あっ、ふ……結城さん、すごい、太くて熱い……あ、ああん、くうっ!」
「コウ、そのまま座ると深すぎるぞ、だめだ……あっ、くっ!」

 ふいに座り込み根元まで包み込まれ、結城ですら初めての快感に晒され思わず呻いていた。初めてで根元まで挿入されたコウは加減も分からなかったのだ。ただ結城を悦ばせたいという想いだけで深く深く包み込んでいる。
 
 だが結局は深すぎる挿入が苦しすぎて身動きも取れない。

 けれど苦し気な整った顔は結城を酷くそそった。もうじっとしていられず結城が腰を突き上げ始める。奥を突かれ力強く腰を捻っては粘膜を擦り掻き混ぜられて、コウは快感の波に揉まれて思考が白熱し甘く鳴いてしまうのを抑えられない。そんなコウを押し返し、結城は自身を抜こうとする。

「コウ、だめだ、そのまま静かに抜け。また怪我をしているぞ」
「はあっ……嫌です。怪我なら結城さんもしてるじゃないですか」

 言い返す結城の文句もコウは聞いていない。痛みも感じず、ただあの快楽に堕ちたかった。逃げ込むとか忘れるとか、そんな理屈ではなく、ただ欲しかったのだ。
 細い腰が浅く、徐々に深く上下しだす。こうなるともう結城も我慢の限界だった。繋がりが解けてしまいそうになる寸前まで互いに腰を引いて上下からぶつけ合った。

 堪らない快感の中でコウは身だけでなく本気で心も抱かれている自分を見つける。
 職務上の失敗、あいつを実質失くしたこと、ああしていたら、こうしていれば……自分自身の心が様々な形に変化してずっと鋭く我が身を切り裂き続けていた。

 だから、それが当然だと思ったから右肩の銃創も残したのに、この自分を貫いている男は勝手に罪の証を消してしまった。

 更に結城が腰の蠢きを激しくする。怪我は痛くないのか両手でコウの細い腰を掴み目茶苦茶に揺さぶった。深く深く届いた先端がコウにとって耐え難い攻めとなる。

「ああんっ、はぁん……結城、さん……硬いよ、そこ、そこ、あぅんっ!」
「こんなに深く受け入れて、苦しくないのか?」
「苦し、でも嬉しい……すごく、すごく気持ちいい! やあん、どうしよう!」

 仰け反らせたコウの白い喉が異様なまでの色気を放っていた。
 それを目にして堪らなくなった結城は、再び上体を起こすと繋がりも解かぬままコウにのしかかる。激しく腰を律動させた。コウが手を伸ばして背にしがみつき爪を立てるのも構わずに攻め立てる。

 右耳に下がったピアスが暴れるように揺れるほど細く白い躰に己の熱い楔を打ち込み続け、そして熱く放出した。
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