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第39話(注意・暴力描写を含む)
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幾度も幾度も躰を揺らされながら、京哉は何回目かの口内に溢れさせられたものを吐き出した。一緒に吐き気が突き上がってきて吐き散らす。
それを男たちは元はカーテンだった布で雑に拭くとまた京哉にまたがった。存分に坂下に嬲られた後、京哉はチンピラたちに投げ与えられてから随分と時間が経っていた。
両手を手錠で縛められていなくても既に自分の意志で暴れる力などとうに失っていた。好きなようにされるのは屈辱だったが、ヘロインの作用か痛みを感じずにいられるだけマシといった具合だ。
それにこんなことで自分のプライドは貶められたりしないという確固たる信念があった。これくらいで年上の愛し人はこの自分を蔑まない。絶対に変わらない。
それは京哉にとって決定事項だった。だからこそ死んでも霧島についてゆくような真似はせず、待つことを選んだのだった。
この躰如きでいいなら勝手にしろと思う。揺らされ汚されながら、この場にいる誰よりも高貴な精神で京哉は耐え続けていた。きっと心配しているに違いない。そして必ず助けに来てくれる。これまでも事ある毎に真っ先に飛び込んできてくれた。
ただ懸念しているのはヘロインだった。
自分の躰は男たちに汚されているだけでなくヘロインに汚染されてしまっている。普通なら何日もかけて躰を慣らしてゆき、ようやく多幸感や歓喜を味わえるようになるのがヘロインだが、どういう具合か自分は一日経たずに慣れてしまった。
躰の反応は完全な依存症と何ら変わらない。
おそらく今の自分は常に体内に致死量寸前のヘロインが巡り、それが薄まる前に新たに注ぎ足されている状態だ。どういう作用機序かは分からないがラッシュという最高に効いた状態を断続的に味わっている。こうなると依存症者としてはインターバルもせいぜい三時間ほどしか空けられなくなると聞いていた。
クスリを抜く際にはきっと霧島にもっと心配を掛けることになるだろう。
こうしていても心は遊離したようにまともに考えられているが、躰は反応しきって甘ったるい声まで出してしまっている。そのたびに男たちは嗤い、京哉は射殺したいほどの怒りも感じていた。並列思考が混じって自棄になる。
何が、誰が変わらないって?
元々心の壊れかけたこの自分がヤク中だぞ!
誰より自分で自分が嫌なのに霧島だって呆れて、こんなに汚れた僕を……。
もうどれが本当の自分の思考なのか見失いかけていた。またヘロインを射たれる。幾らもしないうちに体内に挿入されたものから寒気がするような快感が湧いていた。もっと、もっと欲しい。そう思いゾッとした。
これも何回目か分からないが頬を張り飛ばされる。鉄臭いものを吐き出したが縛められているので血を拭うこともできない。反応して見せろということらしいのでそれらしく見せかけているうちに本気で快感に溺れ切っている自分がいた。
思考が蕩けそうな快感に溺れる一方で心は相反する想いに引き裂かれ、京哉は本当に離人症状を引き起こしていた。狂態を見せる己を醒めた自分が見下ろしている。
こんなことは何でもない、こんなことで自分は貶められたりはしない。そう自らに言い聞かせ続けなければ不安になるくらい恐怖が憑りついていた。
たった数十分であれだけ強固だった精神が揺らいでしまっている。怖くて堪らないのに抗えない異常な快感。とっくに嗄れた喉から声が洩れ続けていた。
そうしていると、いきなり激烈な快感が京哉を本気で狂わせた。
不意のことで自分に何が起こったのかすら京哉には理解できない。それでも襲い続ける快感はこのまま一生過ごしたいくらい、心まで蕩かした。
見れば男の一人がスイッチを手にしている。そこから細いコードが伸びて京哉の体内に繋がっていた。嗤う男がスイッチを動かす。
途端に喉が破れるほど叫んだ京哉は血を吐き出し、かけられたものと涙を絨毯に擦りつけた。
それを男たちは元はカーテンだった布で雑に拭くとまた京哉にまたがった。存分に坂下に嬲られた後、京哉はチンピラたちに投げ与えられてから随分と時間が経っていた。
両手を手錠で縛められていなくても既に自分の意志で暴れる力などとうに失っていた。好きなようにされるのは屈辱だったが、ヘロインの作用か痛みを感じずにいられるだけマシといった具合だ。
それにこんなことで自分のプライドは貶められたりしないという確固たる信念があった。これくらいで年上の愛し人はこの自分を蔑まない。絶対に変わらない。
それは京哉にとって決定事項だった。だからこそ死んでも霧島についてゆくような真似はせず、待つことを選んだのだった。
この躰如きでいいなら勝手にしろと思う。揺らされ汚されながら、この場にいる誰よりも高貴な精神で京哉は耐え続けていた。きっと心配しているに違いない。そして必ず助けに来てくれる。これまでも事ある毎に真っ先に飛び込んできてくれた。
ただ懸念しているのはヘロインだった。
自分の躰は男たちに汚されているだけでなくヘロインに汚染されてしまっている。普通なら何日もかけて躰を慣らしてゆき、ようやく多幸感や歓喜を味わえるようになるのがヘロインだが、どういう具合か自分は一日経たずに慣れてしまった。
躰の反応は完全な依存症と何ら変わらない。
おそらく今の自分は常に体内に致死量寸前のヘロインが巡り、それが薄まる前に新たに注ぎ足されている状態だ。どういう作用機序かは分からないがラッシュという最高に効いた状態を断続的に味わっている。こうなると依存症者としてはインターバルもせいぜい三時間ほどしか空けられなくなると聞いていた。
クスリを抜く際にはきっと霧島にもっと心配を掛けることになるだろう。
こうしていても心は遊離したようにまともに考えられているが、躰は反応しきって甘ったるい声まで出してしまっている。そのたびに男たちは嗤い、京哉は射殺したいほどの怒りも感じていた。並列思考が混じって自棄になる。
何が、誰が変わらないって?
元々心の壊れかけたこの自分がヤク中だぞ!
誰より自分で自分が嫌なのに霧島だって呆れて、こんなに汚れた僕を……。
もうどれが本当の自分の思考なのか見失いかけていた。またヘロインを射たれる。幾らもしないうちに体内に挿入されたものから寒気がするような快感が湧いていた。もっと、もっと欲しい。そう思いゾッとした。
これも何回目か分からないが頬を張り飛ばされる。鉄臭いものを吐き出したが縛められているので血を拭うこともできない。反応して見せろということらしいのでそれらしく見せかけているうちに本気で快感に溺れ切っている自分がいた。
思考が蕩けそうな快感に溺れる一方で心は相反する想いに引き裂かれ、京哉は本当に離人症状を引き起こしていた。狂態を見せる己を醒めた自分が見下ろしている。
こんなことは何でもない、こんなことで自分は貶められたりはしない。そう自らに言い聞かせ続けなければ不安になるくらい恐怖が憑りついていた。
たった数十分であれだけ強固だった精神が揺らいでしまっている。怖くて堪らないのに抗えない異常な快感。とっくに嗄れた喉から声が洩れ続けていた。
そうしていると、いきなり激烈な快感が京哉を本気で狂わせた。
不意のことで自分に何が起こったのかすら京哉には理解できない。それでも襲い続ける快感はこのまま一生過ごしたいくらい、心まで蕩かした。
見れば男の一人がスイッチを手にしている。そこから細いコードが伸びて京哉の体内に繋がっていた。嗤う男がスイッチを動かす。
途端に喉が破れるほど叫んだ京哉は血を吐き出し、かけられたものと涙を絨毯に擦りつけた。
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