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第39話・殲滅戦とストライク到来

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 見回せば僅かに生き残ったのはデイルとジャックのみである。

「くそう、やってくれるぜ」

 だがこうなれば身軽になったとでも思うしかない。シドはゆっくりと身を起こすと、這ったままのデイルとジャックに、森に入るようハンドサインで指示を出す。
 森に入るなりシドは金髪の二人組を引き連れて駆け出した。何処から狙われているか分からない上に、敵はハイファである。暢気に歩いているよりはマシだろうと思ったのだ。

 しかし森はしっかりジャングルで足場も悪くブッシュなる茂みもある。走るにも限度があり、二十メートルも行かないうちに葛に足を取られたデイルが撃たれた。気の毒に金髪が黄緑色に染まっただけでなく、衝撃で気を失ったようだ。
 それを見てジャックが恐慌状態になり、シドを追い越して走り出す。大木の陰を選ぶでもない単調な動きはハイファにとって容易い獲物だっただろう。その頭も黄緑色に染まるまで数秒と掛からなかった。

 と、気配を感じてシドは身を低くしたままサディを構える。ハイファのあとをついて行けばいいだけの楽なお遊びだと思い込んでいたツケ、笑いながら歩いていたトニーとロッド、ジョンの胸に連続でシミュニッション弾を撃ち込んだ。

 位置を特定されないよう、すぐに身を屈めて移動し、走りに走って高台となった大木の陰に身を潜める。じっと待つこと約五分、今度も気配を殺すことなくやってきたのは教官二名、ブッシュから現れたところを容赦なくヘッドショット。

 残りはハイファを含めて五名、だが本来の目的はペイント弾での撃ち合いではなく、旗取り合戦なのだ。少しでも目標に近づくべく、リモータのマップで位置を確かめつつ、そろりと移動を開始した。
 身を屈めて樹からブッシュへと渡り歩いているうちに、ざわざわと鳴る緑の間から水滴が落ちてくる。雨が降り始めたらしい。瞬く間に水滴の勢いが増して、全身ずぶ濡れになるまであっという間だった。

 それに土砂が流れて足許は悪くなり、昼間並みの視界を維持するノクトビジョンも水滴で曇ってアテにならなくなる。いい加減に嫌気が差してシドは大声を出した。

「ユーリー、撃つならさっさと撃ってくれって!」
「――不真面目だなあ。って、まあいいか。僕たちしか残ってないしね」

 それでも五メートルと離れていない木陰からハイファが現れると悔しいものがあった。

「そんな顔するくらいなら、最後まで粘ればよかったのに」
「ふん。ずっと照準されっ放しも気分が悪いからな。で、残り四人はどうした?」
「とっくに同士討ち。フレンドリーファイアに巻き込まれて教官も一名判定KILL」
「そうか。さっさとお前、旗取ってこいよ」
「僕だけに行かせるつもり? 付き合ってくれてもいいじゃない」

 仕方なく二人は先を目指し始めた。歩き出してまもなくハイファの指示で方向転換すると、ブッシュの向こうに石畳で整地された道が出現する。
 道を往くこと百メートルほどで右手に丘が見えてきた。二人して登ると頂上には蛍光オレンジに塗られた旗がポツリと刺さっていた。予定より事態の推移が早かったために、先回りしている筈のコーディーたちの姿もまだ見当たらない。二人はサディを放り出す。

 激しい雨に叩かれながらシドが嘆息した。

「つーか、俺たちって何してんだろうな?」
「さあね。取り敢えずは帰ってリフレッシャでも浴びたいよ」
「明後日にはここともオサラバ、その先は……って、あれ、何だ?」
「あれって……何だろ?」

 ここは高台、五十メートルほど向こうの海岸、シリン島と繋がる狭隘部に白っぽいモノがふわふわと動いている。どうやら人らしい。だが迷彩服ではなく、濡れそぼった白っぽい衣服はドレスのように見えた。波を浴びながら、それはまるで踊ってでもいるようだった。

「迷子かなあ?」
「もしかして城からきたんじゃねぇか?」

 暢気に眺めていると人影はパタリと砂浜に倒れ伏す。二人は細い道へと走り出した。

「おい、しっかりしろ!」

 駆け付けてシドが揺さぶるもドレスの女は目も開けない。

「拙いね、躰が冷え切ってる。バイタルサインも弱いし低体温症かも」
「コーディーたちを呼ぶか……いや、コイルがきたぞ」

 シリン島側、砂浜の先からライトが近づいてきていた。やがてそれはシドたちをまともに照らして停止する。接地もしないうちに男が一人飛び降りてきた。
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