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第21話
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若頭が浜口会幹部二人と一緒に帰ってきたのが意外に早く、二十時からの予定だった幹部夕食会が十九時半に繰り上がり、それらの喧噪で交代が遅れたエセルに若頭から声が掛かった。
「組長も承知だ、呼んだら中に入れ」
頭を下げつつもエセルは内心喜んでいた。これを期待して交代に手間取ったふりをしていたのである。自分から仕掛けずとも済んだことに一旦安堵しているとチンピラが一人やってきて、隣の控え室に夕食の準備ができたと伝えられた。
どうせ最初は密談ですぐに呼ばれないのは分かっている。隣室で立食の夕食を摂った。だが食べ始めて思い出すのは和音のことばかりだ。あれから一度、二時間休憩の際に部屋に戻ったが、まるで和音は起きる気配がなかった。四十度を超える熱も下がらない。
水分だけは摂らせたが、二食も抜かせた状態が果たして良かったのかどうか悩む。
しかしそれも今更だった。目前の仕事が片付いたら食堂に寄り、何か見繕ってから部屋に戻ろうと思う。夜中にでも目を覚ましたら食べさせる手だ。
あまり進まない食事を切り上げて廊下に出る。廊下では本日最後のターンの昼間のガードがチンピラたちと小声で雑談を交わしていた。けれどエセルを目にして皆が妙に静かになる。
どうやら昨日のクルーザーでのことはチンピラたちにまで知られているらしい。そこで更に若頭から声を掛けられたのだ。皆が昨日の続きだと思うのは当然だろう。
そしてそれはたぶん、間違いではない。
目を逸らす皆から離れて立ったエセルは自分を抱く和音の力強い腕を想う。
和音の存在を知り、愛していると認識して以来、エセルは誰に躰を弄ばれても相手に和音を投影してきた。だからどんなことを要求されても、身を裂く痛みを与えられても平気だった。
そう、自分は誰に抱かれようが変わらない。そんなことでプライドは傷ついたりしない。目的を達するために少しだけ我慢する、それが仕事というものだ。
だけど和音を想うことだけ、それだけは自分でも止められない――。
◇◇◇◇
何度も前髪をかき上げられるのを感じ、口づけて流し込まれる液体を飲み下しながら、和音は一向に動かない自分の躰に苛立っていた。血管に水銀でも流れているようで重たく、無理に起きようとしても酷い眩暈に酔って吐き気が増すばかりである。
そのうちに乾いた唇を濡らしてくれるものがなくなり、しんと静まり返った中で和音の意識は浮き沈みを繰り返した。ここまで眠いのは何かエセルの意思が作用している、そんなことは既に分かっていた。そしてそれが単に熱を出した自分を眠らせておくためだけでないことも。
「エセル……くそう、舐めやがって!」
掠れた声にならない声で喚く。このまま舐められてばかりではいられない。
幹部夕食会への潜入を狙っていたエセルは、そこでなされる全てを和音に見せず、聞かせないために眠らせたのだと理解していた。それが今の和音に一番負担を掛けることだとエセルは本能的に悟ったからである。何もかもを和音が眠っている間に終わらせ、何事もなかったかのようなふりをして微笑んでみせるために。
独りで戦い、戦ったことすら隠して笑う……そんな格好つけさせて堪るかと思う。
人には情けない姿を晒させておいて、この仕打ちはフェアじゃない。
悔しさを腹に溜めた和音は不調の何もかもをねじ伏せて飛び起きた。和音は薬物に対して非常に強い体質、そのお蔭で起きられたのかも知れない。布団の傍にあった五百ミリペットボトルのスポーツ飲料を開封して一気に空ける。目覚ましのために煙草を咥えて火を点けた。
数時間眠ってなお頭は手を突っ込まれ掻き回されているかのように痛み、全身が重たく怠くて眩暈もしていたが、そんな些末なことに構っている場合ではない。
バディが、この世で一番大切な者が、身を供してまで情報を得ようとしているのである。安穏と寝ている訳にはいかない。だからといって和音にできることなど、ごく僅かなのも分かっていた。けれどごく僅かながらも、まだ自分にできることは残っているのだ。
腹を括った和音は腕時計を見た。二十時七分。夕食会は始まっている。煙草を消すと慌てて立ち上がり、洗面所に走って寝グセに水をぶっかけると部屋を飛び出した。
◇◇◇◇
和音を想っていたエセルは、チンピラに呼ばれているのに気付いて我に返った。
「ユージン兄さん、若頭が座敷に入れと仰ってます」
無表情を作り直して頷く。だが背後から腕を引かれて振り向くと、そこには和音がいた。相当無理をして起き出してきたのだろう、真っ白な顔色をして切れ長の目だけが真っ赤だ。
凄絶なまでの表情にエセルは言葉を失い、息まで詰めて和音を見返した。
「んな顔すんな、大丈夫だからさ。張り番するくらいチョロいって」
大丈夫な筈はなかった。腕を掴んだ和音の手からは未だ高熱が感じられ、吐息も酷く荒い。それでも和音は頬に笑みを浮かべると、エセルが口を開く前に言った。
「バディなんだ。俺はお前の近くに、可能な限り近くにいるからな」
宣言した和音をエセルは抱き締めたい衝動に駆られる。和音も同じ思いを抱いているのが手に取るように分かった。互いに堪えて見つめ合う。そこでチンピラに急かされた。明らかに和音は頬に浮かべた笑みを硬くする。
しかし振り切るように自らふすまを示した。
「おい、呼ばれたんだろ。行かなくていいのか?」
「行くよ。行くけど……いいの?」
「俺は、何があってもお前がその身に受ける全てから目を逸らさねぇ。決めたんだ」
「……和音」
「新城だ、間違えるなよな」
額を指で突かれ、エセルは靴を脱いでふすまから畳に上がりつつ、またも『逆』を考えていた。もし立場が逆なら自分はこうして和音を送り出してやれるのだろうかと。思いに耽りながらも無表情で畳に端座し、幹部たちに頭を下げる。
そっと顔を上げて膳を並べた面々を眺めた。組長を筆頭に若頭と浜口貸元、石原代貸に長瀬組幹部が四名の計八名は先日と同じである。皆がこれから始まるショーを期待し、ぎらついた目をしていた。
ここに送り出した和音の思いを想像していると、一人だけ石原代貸が気の毒そうな顔をしているのに気付く。哀れむような目を向けられたことで却ってエセルはしっかりと無表情を作り直し、プライドを保つためにも余計なことを頭から振り払った。
「お呼びと伺いました」
「こっちに来て、まずは飲め!」
若頭の大声に進み出たエセルは猪口に日本酒を受けて僅かずつ中身を減らす。そうしながらクルーザーでの行為をあけすけに語り、幹部たちを沸かせる浜口貸元の話に乗ってみた。
「あの船は誰のものなんですか?」
「うちと長瀬組長とで共同出資して手に入れたものだが、どうした、船が好きか?」
「ええ。海の殆どない国で育ちましたから、初めて乗せて頂いて気に入りました」
「そうかい、そいつは良かったな。また乗せてやるから愉しみにしてろ」
「昨日伺ったナイトクルージングは確か明日でしたよね。それもあの船で行くんですか?」
「そうだが、何だ、もう俺たちの『味』が忘れられなくなったのか?」
会話に参入し揶揄して笑ったのは若頭である。自ら膳を避けて出てくるとウィスキー好きらしい若頭はカットグラスをエセルに握らせた。薄い肩をベタベタ触る。石原代貸と同じくらいの歳でこの中では若手ともいえるが、いちいち挙動が下品だった。
そんなナンバー2を長瀬組長は眺め、笑いながら静かに酒を啜っている。だが部下の所業には口を出さないようでいて、全てはこの男の一言で動いているのだ。
だが明日の密入国者幇助は若頭の仕切りである。ここは積極的に若頭と交渉しなければならない。頷きもしないが否定もせず、エセルはグラスのウィスキーをクイッと干した。
次を注がれながらストレートに押してみる。
「ナイトクルージング、僕らも乗ってみたいんですけど、だめですか?」
「よっぽど気に入ったんだな。けど明日は遊びじゃない、仕事だぞ」
「I understand it. But I am useful.」
「ああ、何だって?」
「邪魔はしないと言ったんです」
「お、おう、そうか。まあ、いいかも知れんが……それよりもっと飲め!」
ここまでこれば殆ど言質を取ったも同じ、さっさと退出したかった。だがそうは行かないことも分かっている。石原代貸以外の幹部たちが相変わらずぎらつく目で注視しているのだ。
「組長も承知だ、呼んだら中に入れ」
頭を下げつつもエセルは内心喜んでいた。これを期待して交代に手間取ったふりをしていたのである。自分から仕掛けずとも済んだことに一旦安堵しているとチンピラが一人やってきて、隣の控え室に夕食の準備ができたと伝えられた。
どうせ最初は密談ですぐに呼ばれないのは分かっている。隣室で立食の夕食を摂った。だが食べ始めて思い出すのは和音のことばかりだ。あれから一度、二時間休憩の際に部屋に戻ったが、まるで和音は起きる気配がなかった。四十度を超える熱も下がらない。
水分だけは摂らせたが、二食も抜かせた状態が果たして良かったのかどうか悩む。
しかしそれも今更だった。目前の仕事が片付いたら食堂に寄り、何か見繕ってから部屋に戻ろうと思う。夜中にでも目を覚ましたら食べさせる手だ。
あまり進まない食事を切り上げて廊下に出る。廊下では本日最後のターンの昼間のガードがチンピラたちと小声で雑談を交わしていた。けれどエセルを目にして皆が妙に静かになる。
どうやら昨日のクルーザーでのことはチンピラたちにまで知られているらしい。そこで更に若頭から声を掛けられたのだ。皆が昨日の続きだと思うのは当然だろう。
そしてそれはたぶん、間違いではない。
目を逸らす皆から離れて立ったエセルは自分を抱く和音の力強い腕を想う。
和音の存在を知り、愛していると認識して以来、エセルは誰に躰を弄ばれても相手に和音を投影してきた。だからどんなことを要求されても、身を裂く痛みを与えられても平気だった。
そう、自分は誰に抱かれようが変わらない。そんなことでプライドは傷ついたりしない。目的を達するために少しだけ我慢する、それが仕事というものだ。
だけど和音を想うことだけ、それだけは自分でも止められない――。
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何度も前髪をかき上げられるのを感じ、口づけて流し込まれる液体を飲み下しながら、和音は一向に動かない自分の躰に苛立っていた。血管に水銀でも流れているようで重たく、無理に起きようとしても酷い眩暈に酔って吐き気が増すばかりである。
そのうちに乾いた唇を濡らしてくれるものがなくなり、しんと静まり返った中で和音の意識は浮き沈みを繰り返した。ここまで眠いのは何かエセルの意思が作用している、そんなことは既に分かっていた。そしてそれが単に熱を出した自分を眠らせておくためだけでないことも。
「エセル……くそう、舐めやがって!」
掠れた声にならない声で喚く。このまま舐められてばかりではいられない。
幹部夕食会への潜入を狙っていたエセルは、そこでなされる全てを和音に見せず、聞かせないために眠らせたのだと理解していた。それが今の和音に一番負担を掛けることだとエセルは本能的に悟ったからである。何もかもを和音が眠っている間に終わらせ、何事もなかったかのようなふりをして微笑んでみせるために。
独りで戦い、戦ったことすら隠して笑う……そんな格好つけさせて堪るかと思う。
人には情けない姿を晒させておいて、この仕打ちはフェアじゃない。
悔しさを腹に溜めた和音は不調の何もかもをねじ伏せて飛び起きた。和音は薬物に対して非常に強い体質、そのお蔭で起きられたのかも知れない。布団の傍にあった五百ミリペットボトルのスポーツ飲料を開封して一気に空ける。目覚ましのために煙草を咥えて火を点けた。
数時間眠ってなお頭は手を突っ込まれ掻き回されているかのように痛み、全身が重たく怠くて眩暈もしていたが、そんな些末なことに構っている場合ではない。
バディが、この世で一番大切な者が、身を供してまで情報を得ようとしているのである。安穏と寝ている訳にはいかない。だからといって和音にできることなど、ごく僅かなのも分かっていた。けれどごく僅かながらも、まだ自分にできることは残っているのだ。
腹を括った和音は腕時計を見た。二十時七分。夕食会は始まっている。煙草を消すと慌てて立ち上がり、洗面所に走って寝グセに水をぶっかけると部屋を飛び出した。
◇◇◇◇
和音を想っていたエセルは、チンピラに呼ばれているのに気付いて我に返った。
「ユージン兄さん、若頭が座敷に入れと仰ってます」
無表情を作り直して頷く。だが背後から腕を引かれて振り向くと、そこには和音がいた。相当無理をして起き出してきたのだろう、真っ白な顔色をして切れ長の目だけが真っ赤だ。
凄絶なまでの表情にエセルは言葉を失い、息まで詰めて和音を見返した。
「んな顔すんな、大丈夫だからさ。張り番するくらいチョロいって」
大丈夫な筈はなかった。腕を掴んだ和音の手からは未だ高熱が感じられ、吐息も酷く荒い。それでも和音は頬に笑みを浮かべると、エセルが口を開く前に言った。
「バディなんだ。俺はお前の近くに、可能な限り近くにいるからな」
宣言した和音をエセルは抱き締めたい衝動に駆られる。和音も同じ思いを抱いているのが手に取るように分かった。互いに堪えて見つめ合う。そこでチンピラに急かされた。明らかに和音は頬に浮かべた笑みを硬くする。
しかし振り切るように自らふすまを示した。
「おい、呼ばれたんだろ。行かなくていいのか?」
「行くよ。行くけど……いいの?」
「俺は、何があってもお前がその身に受ける全てから目を逸らさねぇ。決めたんだ」
「……和音」
「新城だ、間違えるなよな」
額を指で突かれ、エセルは靴を脱いでふすまから畳に上がりつつ、またも『逆』を考えていた。もし立場が逆なら自分はこうして和音を送り出してやれるのだろうかと。思いに耽りながらも無表情で畳に端座し、幹部たちに頭を下げる。
そっと顔を上げて膳を並べた面々を眺めた。組長を筆頭に若頭と浜口貸元、石原代貸に長瀬組幹部が四名の計八名は先日と同じである。皆がこれから始まるショーを期待し、ぎらついた目をしていた。
ここに送り出した和音の思いを想像していると、一人だけ石原代貸が気の毒そうな顔をしているのに気付く。哀れむような目を向けられたことで却ってエセルはしっかりと無表情を作り直し、プライドを保つためにも余計なことを頭から振り払った。
「お呼びと伺いました」
「こっちに来て、まずは飲め!」
若頭の大声に進み出たエセルは猪口に日本酒を受けて僅かずつ中身を減らす。そうしながらクルーザーでの行為をあけすけに語り、幹部たちを沸かせる浜口貸元の話に乗ってみた。
「あの船は誰のものなんですか?」
「うちと長瀬組長とで共同出資して手に入れたものだが、どうした、船が好きか?」
「ええ。海の殆どない国で育ちましたから、初めて乗せて頂いて気に入りました」
「そうかい、そいつは良かったな。また乗せてやるから愉しみにしてろ」
「昨日伺ったナイトクルージングは確か明日でしたよね。それもあの船で行くんですか?」
「そうだが、何だ、もう俺たちの『味』が忘れられなくなったのか?」
会話に参入し揶揄して笑ったのは若頭である。自ら膳を避けて出てくるとウィスキー好きらしい若頭はカットグラスをエセルに握らせた。薄い肩をベタベタ触る。石原代貸と同じくらいの歳でこの中では若手ともいえるが、いちいち挙動が下品だった。
そんなナンバー2を長瀬組長は眺め、笑いながら静かに酒を啜っている。だが部下の所業には口を出さないようでいて、全てはこの男の一言で動いているのだ。
だが明日の密入国者幇助は若頭の仕切りである。ここは積極的に若頭と交渉しなければならない。頷きもしないが否定もせず、エセルはグラスのウィスキーをクイッと干した。
次を注がれながらストレートに押してみる。
「ナイトクルージング、僕らも乗ってみたいんですけど、だめですか?」
「よっぽど気に入ったんだな。けど明日は遊びじゃない、仕事だぞ」
「I understand it. But I am useful.」
「ああ、何だって?」
「邪魔はしないと言ったんです」
「お、おう、そうか。まあ、いいかも知れんが……それよりもっと飲め!」
ここまでこれば殆ど言質を取ったも同じ、さっさと退出したかった。だがそうは行かないことも分かっている。石原代貸以外の幹部たちが相変わらずぎらつく目で注視しているのだ。
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