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□〔Intermission〕ショート・ショート□
しおりを挟む♂俺にバディが付くのなら♂
最後のバディが強盗にリモータの麻痺レーザーで射たれ、テラ標準歴でもう三ヶ月が経った。確かに不法入星のタタキたちはスタンの出力を違法に上げてはいたが、そのままバディが心臓まで麻痺させてしまったとは思っても見ず、死んだフリでやり過ごそうとしている、そう思い込んだ俺は死の間際の相棒に蹴りを入れるという非道な真似をしてしまった。
だがそれも仕方ないと自己弁護したい。ヴィンティス課長の野郎が俺にあてがったそのバディはずっと警務課の事務職で、あと二ヶ月で定年という、まともに走れもしない男だったのだから。
酷いのは俺じゃなくヴィンティス課長だろう。
それでも現代医療のお蔭でそいつは息を吹き返し、とっとと円満退職だ。
警務課なあ。あそこは制服婦警の園だ。どうせ警務課から引き抜くのなら出る処が出た若い婦警を指名して……いや、ダメだ、俺にはできない。イヴェントストライカなどという非科学的なモノは信じていないと言いたいが、現実を的確に認識しなければ生きてゆけない事実が厳然と横たわっている。
ミュリアルもメイベルもリンダもカミラもサチエもローラもエレンも、ついでにマリカも死ぬような危険に晒すのは心が痛む。というより婦警を減らすのはオアシスが干乾びるも同然、社会の損失だ。
やっぱり男だな。せめて走れる若い奴。デスク上の書類で出来た複数のテーブルマウンテンを眺めるに事務能力も少々欲しい。あとは撃たれる前に撃てる奴。
そして何よりもタフじゃねぇと困るよな。
あーあ。そんな都合のいい人間がそこらにいる訳ねぇし。大体そこまで使える人材を俺に、もといヴィンティス課長に上層部が預ける筈もナシ。
――ふん、歩きに行くか。
「って、ヤマサキお前、何やってんだ?」
「シド先輩のポラ、撮ってるっス。警務課で頼まれたっスよ」
「肖像権の侵害っつーか、俺のポラなんかどうすんだ?」
「さあ?」
「『さあ』ってお前、意味も分からず勝手に撮るな。没収だ、没収」
それこそ勝手にヤマサキのリモータを弄ってシドは自分のポラをフォルダごとデリートした。ガッカリしていたヤマサキが「あっ!」と大声を上げる。
「何なんだよ、今度は?」
「もしかして先輩のポラ、最近流行りの『呪いの藁人形キットMサイズ・2980クレジット』に入れて五寸釘を打つんじゃ……」
「……俺、警務課に恨まれるような……あ」
自分の顔面偏差値の高さに全く無関心なシドは、元・警務課だったバディを蹴り殺しかけただけでなく、来る者拒まずで誰とでも食事に付き合った挙げ句に不思議と後でジットリ見られていることを思い出していた。
俺、拙ったのか?
(バディの条件、追加。一緒に婦警から呪われてくれる奴……ああ、いたな)
思い出した男は、だが警察官ではなくテラ連邦軍人でスパイ野郎だ。条件を完璧に満たしているとはいえ、何をどう引っ繰り返したってバディになり得ない。おまけに隙を突いては俺にアタックしてくる厄介さだ。
そんなことより隠し撮りされる前に出掛ける手だ。呪いが怖い訳ではないが……断じて怖くはないが、三千年前に存在した旧東洋系の血がぞわぞわして――。
呪いではなく、むしろ女子や腐女子に祝われていると知らずに、シドはヴィンティス課長の引き留める声を右から左に聞き流し、そのまま機捜課を出てショッピング街の方へと独り歩き出した。
☆。.:*・゜☆fin☆。.:*・゜☆
【楽園の方舟~楽園1~ 第23話へ】
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