上 下
108 / 109
第四章 新たな一歩

108 異種間コミュニケーション!

しおりを挟む
 ー試合開始 数時間前ー

 うーん、ネイトを探しに行くと言ったのはいいものの、何から手をつけていいのかわからない。
 メラキュラ星の土地勘なんてあるはずもないし、当然ネイトが行きそうな場所もわからない。
 そもそもネイトが連れ去られたのだとしたらネイトの意志など関係ないわけだから予想もできない。

 うーん、こうなるのがわかってたから監督は俺たちを行かせるのを拒んでたのかな。
 勢いで来たのは間違いだったのか。うーん。

 とりあえずクレにメッセージだけは送っておこう。
 朝はクレまだ起きてきてなくて、結局会えなかったからな。
 1番大切なことは面と向かって伝えたが、まだピンと来てなかったようだし、一応内容を補完しておこうか。

 さあ、次は何をしよう。
 ネイトが向かったであろう方向だけは聞いていたから、とりあえずそっちに向かってみるか。

 「アリス、とりあえずネイトが向かった方向へと行こうと思って……アリス?」

 返事がないのでアリスの方を見てみると、アリスが何かと話している姿が見えた。

 「アリスー……」

 「……の写真の子見なかったか、アリスに教えてほしいの。
 おねがぁい♡」

 「ア、アリスさん? 一体何を……」

 「あ、キャプテン!
 いい情報聞いたよ~。
 昨日の夜、ネイトくんがゴストルさんと一緒にここ通っていくのを見たって! あ、ゴストルっていうのはこの幽霊っぽい生物の種族名!
 向こうに向かったって、銃士隊さんの話とも一致するねっ!」

 幽霊改めゴストルから話を聞いていたのか……。怖がらずに話を聞けるなんて……凄いな。

 ゴストルとの会話。これは昨日まではできなかったことだ。
 ゴストルが何となく音を発しているのはわかっていたが、それを言葉として認識はできていなかった。

 しかし、そんな不可能と思われていたゴストルとの会話を可能にするアイテムが俺たちにはあった。
 それがそう、この翻訳機だ。

 ゴストルの言葉を昨日一日で研究し、解明し、この翻訳機をアップデートし機能の一つとして取り入れたそうだ。
 たった一日でこの成果とは、オグレスの科学力、そして研究者たちの優秀さを改めて実感する。

 そんなわけで、このアップデートされた翻訳機を使うことで、ゴストルとの会話が可能になったのだ。

 「この調子で聞き込み続けよ~」

 こうして、アリスの聞き込みの元、ネイトの足取りを掴む旅が始まった。
 ゴストルたちは口が堅そうだったが、これはアリスの可愛さがなせる技か、話しているうちに自然と情報を教えてくれるようになっていた。
 この話術が必要だと思って、アウラス監督はアリスを俺に同行させたのかな。

 「アリスは、その、凄いな。怖がらずに話せて。俺じゃ無理だ。
 何かコツとかって……そういうのは無いんだっけか」

 「え~。そんなことないよ~。
 でもそうだねぇ。アリスが怖がってたら、ミアちゃんの怖がる顔が見れないでしょ? それは嫌だから、怖くなくなったって感じかな~。怖いって感情より、より大切な感情を作る、みたいな?
 あ、これ恥ずかしいからミアちゃんには内緒ね!」

 「なるほど……。
 言うなればレオみたいなもんか。あいつも女の子にいいカッコ見せるために怖がらなくなったって言ってたしな……」

 「え゙」

 「ん?」

 「い、いやぁ~。レオくんのそれとはちょ~っと違うんじゃないかなぁ~」

 「え、そ、そうか。
 よくわからんぜ」

 そうこう話しながらも着々と足取りを追えている俺たち。
 どうやらゴストルたちには固定の住処があって、基本その場所から遠くへはいかないから、昨日の夜の出来事だとしても立ち会っていた者が多いらしい。

 そして情報も集まってくる。
 情報によると、連れ去られたネイトは寝ぼけていた状態。つまり、自発的に逃げたわけではなかったようだ。
 だが、となるとやはり敵に連れ去られたということになる。早く見つけ出さないと、心配だ……。

 そして心配というともう1つ。隣の女の子、アリスだ。
 アリスは基本ミアと2人でいるし、2人ともマネージャーとしての仕事に追われ、俺たちと長く話すこともない。
 今回のように、特定の誰かと一対一で過ごすなんてことはないのだ。

 まあつまり何が言いたいのかというと、アリスが可愛くて緊張してます、ということだ。やれやれ。

 「キャプテンさん」

 「は、はいっ!」

 「えっ、ど、どうしたの!?」

 「ああいや、なんでもない。ちょっと考え事してて……」

 「んー?」

 ジロジロと下から俺の顔を覗き込んでくるアリス。
 やめてくれ。こんな状況なのに……可愛い……。

 「なんか、キャプテンさん、まだアリスたちに壁あるよねぇ」

 「え!? いや、そんなことは……」

 「そんなことあるよぉ~。まあ、キャプテンさんだけじゃなくて、他の人もだけど」

 「……だって、Twinkle Star(※ミアとアリスのアイドルユニット名)なんて、俺たち世代からしたらそれこそスターだし……緊張も……する……」

 「もー!」

 「はいっ!」

 俺の言葉を聞いて怒ったアリス。怒った……はずなのだが、全く怖くない。それどころか、可愛さしか伝わってこない。
 ほんと、なんなのだろうこの生物は……これがトップアイドルというものなのだろうか……凄い。

 「そんなのアリスからしたら、キャプテンたちなんて、国の代表として、今となっては星の代表として、毎日毎日努力して頑張ってて。
 アリスなんかより全然スターなんだから、そんなに緊張しないでくださいよぉ~」

 「そ、そんなもんか?」

 「そんなもんですよっ!
 隣の家は青く見える、みたいなやつですっ!」

 「…………」

 「……?」

 「……あ、隣の芝生は青く見える」

 「あっ、芝生……」

 「「…………」」

 「「あははははっ」」

 そうか。俺がアリスを尊敬しているように、アリスからしたらまた俺たちは尊敬の対象だったんだな。
 なら、その期待に応えられるように頑張らないと。
 それにしても、わざと諺を間違えて笑わせてくれるなんて、アリスはやっぱり優しいな。

 とりあえず今のところ俺いるだけだから、何かしらで役に立ちたいところ。

 「それで、次はなんて言ってた?」

 「うん、こっちに行ったって言っ……え」

 瞬間、アリスの体が大きく傾いた。
 足元を見ると、その理由は一目瞭然。足場が無かったのだ。

 崖

 直前のあいつ。あのゴストルに騙されたのか……。

 「アリスっ!」

 俺は急いで駆け寄り手を伸ばす。

 「キャプテンさん……!」

 その手を掴もうと、アリスも負けじと手を伸ばす。

 掴んだ! が、ダメだ。体が前に倒れすぎている。これだと……踏みとどまれな……い……。

 やべぇ。

 そう思ったがどうすることもできず。
 俺とアリスは崖から落ちてしまったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

ロボット旅行記

阿頼耶識(あらやしき)
SF
人類が滅亡し新人類となったAIは地球に蔓延る大気汚染や環境整備にをする為に動いていた。 旧式AIのラニーは1つのメモリーチップを拾い人類の記憶を読み取った。

待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ
SF
20XX年。 夢にまでみたVRMMOゲーム機『ダイブオン』と剣と魔法を駆使してダンジョンを踏破していくVRMMORPG『アトランティス』が発売された。 五感全てで没入できるタイプのゲームに、心奪われ、血湧き肉躍る僕の名は、佐藤健一(高校2年生)。 学校でぼっちでいじめられっ子な僕は、学校を休んでバイトに明け暮れ、バカ高いゲーム(本体二十九万八千円+ソフト九万八千円也)と面倒くさい手続きと倍率の高い購入予約券を運良く手に入れることができた。 普通のオンラインRPGでギルドのタンク(壁役)を務めていた僕は、同じく購入できたギルメンのフレとまた一緒にプレイするこのを約束した。 そして『アトランティス』発売初日、学校を休んだ僕は、開始時間と同時にダイブした。 …はいいんだけど、キャラがリアル過ぎてテンパってしまう! みんなキャラメイキングでイケメンや美少女、美女ばかりだし(僕もイケメンキャラだけど)、コミュ障な僕はテンパりすぎてまともに会話ができない! 目を合わせられないし、身体も壊れたロボットのようにギクシャクしてしまう。 こんなはずじゃなかったのに!と嘆く僕を陰で嘲笑うプレイヤーとフレ達…。 ブルータスよ、お前もか………。 ゲームの中でもイジメられ、ある出来事をキッカケにソロでやっていくことを決意する。 これは、NPCを仲間にギルドを立ち上げ、プレイヤーと対峙し、ダンジョンに挑む僕の独りよがりだけどそうでもないぼっちな話。  ただいま不定期更新中m(_ _)m  モチベーションが上がらないので半ば打ち切り状態です。

VRMMOでスナイパーやってます

nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー 私の名は キリュー Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている スナイパーという事で勿論ぼっちだ だが私は別にそれを気にしてはいない! 何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ! その趣味というのがこれ 狙撃である スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる 狙うは頭か核のどちらか 私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった 狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう そう思っていたが... これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である 尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...

アルゲートオンライン~侍が参る異世界道中~

桐野 紡
SF
高校生の稜威高志(いづ・たかし)は、気づくとプレイしていたVRMMO、アルゲートオンラインに似た世界に飛ばされていた。彼が遊んでいたジョブ、侍の格好をして。異世界で生きることに決めた主人公が家族になったエルフ、ペットの狼、女剣士と冒険したり、現代知識による発明をしながら、異世界を放浪するお話です。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

コレクターガールの憂鬱な日常

MOKO
SF
女子高生の立川遥香は、ある日 全宇宙指名手配中の凶悪宇宙人トレモロと 宇宙警察との争いに巻き込まれ 宇宙人トレモロに寄生され その日を境に遥香の日常生活は激変する。 妙な宇宙人に絡まれるわ 宇宙警察に目をつけられるわ 目立たず騒がず静かに背景と同化し 地味に過ごしまったり送るはずの 女子高生ライフが一変…。 トレモロの体を取り戻すし 健全な身体を取り戻すために 遥香は立ち上がる。 このお話は遥香とトレモロの非常識な日常です。

処理中です...