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第二章 初陣
27 アイドル→???
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翌日、朝食の場に凛は現れなかった。
朝食後俺たちは練習のためグラウンドへワープする。
もちろんその場にも凛はいない。
凛の不在を把握したであろうアリスとミア、そしてラーラがグラウンドから消える。
恐らく凛を探しに行ったのだろう。
凛は任せてと言われたばかり。
ならば凛のことは3人に任せて俺は俺のやるべきことを果たす。
「みんなおはよう。
今日はポジション毎には分けず、全体練習をすることにする。といっても難しいことはしない、チームメイトの特徴の把握や基本的な連携を意識して取り組んでほしい」
前回のリーダー会議の結果、一部問題児はいるものの全体練習をしても大丈夫だという結論に至った。
ブラドに全員のプレーを見せるという目的もある。
ちなみに今日は試合の2日前。つまり会場決めのコイントスが行われる日だ。監督と未来はそのためにミドラス星に行っている。
ミドラス星はこの間フィロさんが大会の説明を受けた星だが、他にも会場決めや予選終了後本戦の開会式、既に終わったが予選のグループ決めも行うなどゼラ直轄の星として重大な役割を担っている。
会場に関しては運なので黙って待つことしかできない。
だからこそ俺は今自分にできることをする。
必ず試合までにブラドを説得してみせる……!
***
説得失敗の翌日、凛が練習に来ていないことを確認した私たちは行動を開始した。
まず初めにフィロさんに話しかけて凛の居場所を教えてもらう。
基本的にチームメイトの居場所はわからないわ。それはマネージャーの私でも同じこと。
だけどフィロさんに頼めば場所を教えてもらうことができる。支給された携帯に地球でいうGPSのようなものが付いているからね。
もちろん平時に居場所を把握するのはプライベートに関わるためルールとして禁止されているけど、今回の様に理由のあるときは別。
状況を伝えて居場所を教えてもらった私たちは急いで凛の元へ向かう。
「ラーラ、ごめんね。練習あるのに付き合わせちゃって」
「謝らなくていいよ! 凛ちゃんはわたしの友だちだもん。助けてあげたい」
「ありがとう。でね、これは私たちのわがままなんだけど、凛の説得、最初は見守っててほしい」
「え? どうして?」
「アリスたち昨日失礼なことしちゃったからね~。
謝罪の意も込めて最初は2人で頑張りたいんだぁ」
「もちろん拘りすぎて迷惑かける訳にはいかないから、引き際は見極めるつもり。
でも少しだけ私たちのわがままを聞いてほしい」
「……うん。2人がそういうならわたしは信じるよ。
凛ちゃんをよろしくね」
「ありがとう……!」
「あ、もうそこだよ~」
端末で凛の居場所を見ていたアリスに伝えられその場に向かった私たちは、1人佇む凛を発見する。
ラーラには奥で待っていてもらい、予定通り私とアリスの2人で凛に近づく。
「凛」
「はぁ、またあんたたち? 何の用? ていうか何でこの場所がわかったのよ」
「ごめん、フィロさんに聞いて教えてもらったわ。
凛、まずは謝らせて。昨日あなたに気遣いもせずに押しかけてごめんなさい」
「……ふん、わかってるなら会いに来ないでよ」
「ううん、気遣いが無かったのはこの問題に対する認識の話。あなたを助ける。その気持ちは変わらないわ」
「は? 何言って」
「凛ちゃん! 何か問題があるなら話してほしいの!
1人で抱え込んでても何も解決しないよ!」
「うるさい……! ボクはあんたたちみたいな人間が1番嫌いなの!
どうせ内心は女でサッカーしてるボクをバカにしてるんでしょ」
「そんなことしないよ! アリスたちを信じて……!」
「そうよ! アリスは性格ちょっとあれなとこあるけど」
「ちょ、ミアちゃ」
「人が本当に嫌がることは絶対にしないわ! もちろん私も! 本気であなたを助けたい!」
「信じられない! 今は1人にして……」
「信じてよ!
今のあんたを放っておくことなんてできない」
「なんで……なんで会ったばかりのボクにそこまで言うの。
ただの仕事でしょ? 話したけど無理だったでいいじゃん」
「なんでって……。
それは私があんたの……ファ……ファンだからよ!!!」
「え……」
流石に予想外の返しだったみたいね、凛が固まる。
ファンであることは恥ずかしいから言わないつもりだったけどこの際仕方ないわ。凛の助けになるのならなんだって言う!
「ほんとだよ~。
前に凛ちゃんが日本代表に突撃したって話あったでしょ? あの話聞いて正直馬鹿にする人多かったんだけど、ミアちゃんはかっこいいって言ってたの。
それにね? ミアちゃん、チームに凛ちゃんがいるって聞いてテンション超超上がってたんだよ。
『サイン貰えるかしら! でもマネージャーだし一選手を贔屓するのはダメよね……』って感じで」
「ちょ、そんな詳しく言わないで! 恥ずかしいじゃない!
ち、違うの! あ、て、転売よ! 転売して儲けるためにサインが欲しかったのよ!」
「ミアちゃん……恥ずかしいんだろうけどその言い訳はアウトだよ……」
「待って! 違うの! 冗談!
ああもう! なんで私ってこうなっちゃうの!
えっと……欲しかったのよ。サイン、私が……。
それに……性別の壁にも負けずに努力してる姿がかっこいいって思ったのもほんと。その……私は努力が苦手だから……」
「……そんなの、トップアイドルになったあんたの方がよっぽど凄いじゃない」
「いや、私たちはほら、その」
「なに? 歯切れ悪いけど。
まさか枕営業とかしてたんじゃないでしょうね」
「いやそんなことはしてないけど……。
私たちってわりとその、才能型なのよね」
「え、自慢……?」
「違うわよ!
全く……そう捉えられそうだったから言いたくなかったのに……」
「ほんと自慢じゃないんだけどね。
アリスたちってスカウトされてアイドルになって、そのまま特に苦労もなく人気になっちゃったタイプなの」
「ほんっと自慢じゃないんだけどね。
だから私たちって全然努力とかしてこなかったのよ。
そんな事情もあって凛みたいに全力で努力してる子のことは尊敬してるの」
「わかったわかった、自慢とか思わないから」
「ありがとね~。
ミアちゃんそれで嫉妬されたりして病んでたこともあるから」
「だからそういうことは言わなくていいから!
それに……他のアイドルの方が努力してるのは本当だし……」
「別に気にしなくていいんじゃない?
ボクも才能は実力のうちだと思ってるし」
「ほんと……?
そう言って貰えると嬉しいわ。
……ていうかいつの間にか私が慰められてるような……」
「ふふっ、確かに。
あーあ、なんかあんたたちと話してたらイライラも消えちゃった」
「! そ、それなら良かったわ。べ、別にそんなに嬉しくはないけど!
……そういえばなんで私たちのこと嫌ってたのよ。ちょっとショックだったんだけど」
「別に、昔あんたたちに似たタイプのやつらに色々言われただけ。
男とばっかりつるんでるとか女のくせにサッカーはダサいとか」
「ふーん……くだらないわね。
人の努力を認められない人に成功なんてないわ。
そんな人なんて全く気にしなくていいのに」
「うん……ありがと」
「なんか凛ちゃん急に素直になったねぇ。
可愛いっ!」
「別に……可愛くはないから……」
「いいねえっ! 可愛いねえっ!」
「アリステンション上がりすぎ。
てことでそろそろ本題よ。
凛、なんでそこまで男を嫌うの? まあサッカーやってるんだもん想像できないこともないけど。
こういうのは話したら楽になるものよ。私たちが聞いてあげるから話しなさい」
「凛ちゃんに対しては優しいミアちゃんも可愛いねえっ!」
「アリスあなたほんとなんでそんなテンション上がってるのよ」
「ごめんねぇ。
あまりの尊さについ。
あ、そういえば話しするならラーラちゃんも呼んだ方がよくない?」
「え!? ラーラも来てたの!?」
名前を呼ばれて物陰からラーラが姿を見せる。
目には薄らと涙が溜まっていた。
「うぅ、凛ちゃん、よがったねぇ」
「え!? ラーラ、なんで泣いてるのよ」
「だっでぇ、凛ちゃんずっど辛そうな顔してだがらぁ。
晴れ晴れとしだ顔でぇ、嬉びぃよぉ~」
「ちょ、そんな泣かないでってば」
こうして私たち4人は仲良くなることができた。
しかし、だからといって問題が解決したわけじゃない。
話は聞いてアドバイスもした。それでも凛が男と上手くやっていけるかはこれからの凛にかかっている。
こんな私だけど……少しは凛のために頑張れたかな。
朝食後俺たちは練習のためグラウンドへワープする。
もちろんその場にも凛はいない。
凛の不在を把握したであろうアリスとミア、そしてラーラがグラウンドから消える。
恐らく凛を探しに行ったのだろう。
凛は任せてと言われたばかり。
ならば凛のことは3人に任せて俺は俺のやるべきことを果たす。
「みんなおはよう。
今日はポジション毎には分けず、全体練習をすることにする。といっても難しいことはしない、チームメイトの特徴の把握や基本的な連携を意識して取り組んでほしい」
前回のリーダー会議の結果、一部問題児はいるものの全体練習をしても大丈夫だという結論に至った。
ブラドに全員のプレーを見せるという目的もある。
ちなみに今日は試合の2日前。つまり会場決めのコイントスが行われる日だ。監督と未来はそのためにミドラス星に行っている。
ミドラス星はこの間フィロさんが大会の説明を受けた星だが、他にも会場決めや予選終了後本戦の開会式、既に終わったが予選のグループ決めも行うなどゼラ直轄の星として重大な役割を担っている。
会場に関しては運なので黙って待つことしかできない。
だからこそ俺は今自分にできることをする。
必ず試合までにブラドを説得してみせる……!
***
説得失敗の翌日、凛が練習に来ていないことを確認した私たちは行動を開始した。
まず初めにフィロさんに話しかけて凛の居場所を教えてもらう。
基本的にチームメイトの居場所はわからないわ。それはマネージャーの私でも同じこと。
だけどフィロさんに頼めば場所を教えてもらうことができる。支給された携帯に地球でいうGPSのようなものが付いているからね。
もちろん平時に居場所を把握するのはプライベートに関わるためルールとして禁止されているけど、今回の様に理由のあるときは別。
状況を伝えて居場所を教えてもらった私たちは急いで凛の元へ向かう。
「ラーラ、ごめんね。練習あるのに付き合わせちゃって」
「謝らなくていいよ! 凛ちゃんはわたしの友だちだもん。助けてあげたい」
「ありがとう。でね、これは私たちのわがままなんだけど、凛の説得、最初は見守っててほしい」
「え? どうして?」
「アリスたち昨日失礼なことしちゃったからね~。
謝罪の意も込めて最初は2人で頑張りたいんだぁ」
「もちろん拘りすぎて迷惑かける訳にはいかないから、引き際は見極めるつもり。
でも少しだけ私たちのわがままを聞いてほしい」
「……うん。2人がそういうならわたしは信じるよ。
凛ちゃんをよろしくね」
「ありがとう……!」
「あ、もうそこだよ~」
端末で凛の居場所を見ていたアリスに伝えられその場に向かった私たちは、1人佇む凛を発見する。
ラーラには奥で待っていてもらい、予定通り私とアリスの2人で凛に近づく。
「凛」
「はぁ、またあんたたち? 何の用? ていうか何でこの場所がわかったのよ」
「ごめん、フィロさんに聞いて教えてもらったわ。
凛、まずは謝らせて。昨日あなたに気遣いもせずに押しかけてごめんなさい」
「……ふん、わかってるなら会いに来ないでよ」
「ううん、気遣いが無かったのはこの問題に対する認識の話。あなたを助ける。その気持ちは変わらないわ」
「は? 何言って」
「凛ちゃん! 何か問題があるなら話してほしいの!
1人で抱え込んでても何も解決しないよ!」
「うるさい……! ボクはあんたたちみたいな人間が1番嫌いなの!
どうせ内心は女でサッカーしてるボクをバカにしてるんでしょ」
「そんなことしないよ! アリスたちを信じて……!」
「そうよ! アリスは性格ちょっとあれなとこあるけど」
「ちょ、ミアちゃ」
「人が本当に嫌がることは絶対にしないわ! もちろん私も! 本気であなたを助けたい!」
「信じられない! 今は1人にして……」
「信じてよ!
今のあんたを放っておくことなんてできない」
「なんで……なんで会ったばかりのボクにそこまで言うの。
ただの仕事でしょ? 話したけど無理だったでいいじゃん」
「なんでって……。
それは私があんたの……ファ……ファンだからよ!!!」
「え……」
流石に予想外の返しだったみたいね、凛が固まる。
ファンであることは恥ずかしいから言わないつもりだったけどこの際仕方ないわ。凛の助けになるのならなんだって言う!
「ほんとだよ~。
前に凛ちゃんが日本代表に突撃したって話あったでしょ? あの話聞いて正直馬鹿にする人多かったんだけど、ミアちゃんはかっこいいって言ってたの。
それにね? ミアちゃん、チームに凛ちゃんがいるって聞いてテンション超超上がってたんだよ。
『サイン貰えるかしら! でもマネージャーだし一選手を贔屓するのはダメよね……』って感じで」
「ちょ、そんな詳しく言わないで! 恥ずかしいじゃない!
ち、違うの! あ、て、転売よ! 転売して儲けるためにサインが欲しかったのよ!」
「ミアちゃん……恥ずかしいんだろうけどその言い訳はアウトだよ……」
「待って! 違うの! 冗談!
ああもう! なんで私ってこうなっちゃうの!
えっと……欲しかったのよ。サイン、私が……。
それに……性別の壁にも負けずに努力してる姿がかっこいいって思ったのもほんと。その……私は努力が苦手だから……」
「……そんなの、トップアイドルになったあんたの方がよっぽど凄いじゃない」
「いや、私たちはほら、その」
「なに? 歯切れ悪いけど。
まさか枕営業とかしてたんじゃないでしょうね」
「いやそんなことはしてないけど……。
私たちってわりとその、才能型なのよね」
「え、自慢……?」
「違うわよ!
全く……そう捉えられそうだったから言いたくなかったのに……」
「ほんと自慢じゃないんだけどね。
アリスたちってスカウトされてアイドルになって、そのまま特に苦労もなく人気になっちゃったタイプなの」
「ほんっと自慢じゃないんだけどね。
だから私たちって全然努力とかしてこなかったのよ。
そんな事情もあって凛みたいに全力で努力してる子のことは尊敬してるの」
「わかったわかった、自慢とか思わないから」
「ありがとね~。
ミアちゃんそれで嫉妬されたりして病んでたこともあるから」
「だからそういうことは言わなくていいから!
それに……他のアイドルの方が努力してるのは本当だし……」
「別に気にしなくていいんじゃない?
ボクも才能は実力のうちだと思ってるし」
「ほんと……?
そう言って貰えると嬉しいわ。
……ていうかいつの間にか私が慰められてるような……」
「ふふっ、確かに。
あーあ、なんかあんたたちと話してたらイライラも消えちゃった」
「! そ、それなら良かったわ。べ、別にそんなに嬉しくはないけど!
……そういえばなんで私たちのこと嫌ってたのよ。ちょっとショックだったんだけど」
「別に、昔あんたたちに似たタイプのやつらに色々言われただけ。
男とばっかりつるんでるとか女のくせにサッカーはダサいとか」
「ふーん……くだらないわね。
人の努力を認められない人に成功なんてないわ。
そんな人なんて全く気にしなくていいのに」
「うん……ありがと」
「なんか凛ちゃん急に素直になったねぇ。
可愛いっ!」
「別に……可愛くはないから……」
「いいねえっ! 可愛いねえっ!」
「アリステンション上がりすぎ。
てことでそろそろ本題よ。
凛、なんでそこまで男を嫌うの? まあサッカーやってるんだもん想像できないこともないけど。
こういうのは話したら楽になるものよ。私たちが聞いてあげるから話しなさい」
「凛ちゃんに対しては優しいミアちゃんも可愛いねえっ!」
「アリスあなたほんとなんでそんなテンション上がってるのよ」
「ごめんねぇ。
あまりの尊さについ。
あ、そういえば話しするならラーラちゃんも呼んだ方がよくない?」
「え!? ラーラも来てたの!?」
名前を呼ばれて物陰からラーラが姿を見せる。
目には薄らと涙が溜まっていた。
「うぅ、凛ちゃん、よがったねぇ」
「え!? ラーラ、なんで泣いてるのよ」
「だっでぇ、凛ちゃんずっど辛そうな顔してだがらぁ。
晴れ晴れとしだ顔でぇ、嬉びぃよぉ~」
「ちょ、そんな泣かないでってば」
こうして私たち4人は仲良くなることができた。
しかし、だからといって問題が解決したわけじゃない。
話は聞いてアドバイスもした。それでも凛が男と上手くやっていけるかはこれからの凛にかかっている。
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