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第二章 初陣
20 火花散るフォワード
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ミーティング後、俺たちは練習場へとワープする。
練習場にはコートが4つ。他にも色々と設備が整っており、これ以上ない環境と言えるだろう。
キャプテンの俺はチームメイトの前に出て練習内容を伝える。
「じゃあ今から最初の練習を始めます!
とりあえずはポジション毎に4つのコートに分かれて、監督が言っていたようにストレッチからドリブルやパスなどの基礎練習をやってもらいます。細かい内容は各ポジションのリーダーに伝えてあるから従うように。もちろん仲間とはしっかりコミュニケーションを取ること。
では解散! 各ポジションで練習を始めてください!」
監督からの指示は2つ、基礎練とコミュニケーション。この中で特に大事なのはコミュニケーションだろう。
しかし3日で全員とコミュニケーションを取れるようになるのは、問題児の多いこのチームでは難しいと判断。最低限同ポジションの仲間とのコミュニケーションは取れるようになってもらいたい。
そう考えた俺はとりあえずポジション毎に完全に分けて練習することにした。
***
ーコートA フォワード組ー
「じゃ、とりあえずストレッチから始めるぞー」
「ちょっと待ってくれよ龍也。フォワードで集まって練習するのはいいんだけどよ、なんでこいつらがいるんだ?」
「は? なに? ボクもフォワードなんだからいて当然でしょ? 悪い?」
「どうせ雑魚はフォワードとは認めないとか言うんだろ、知ってる。くっだらねぇ」
「おおよくわかってるじゃねえか。じゃあフォワード組として俺と龍也で練習しとくからお前らは宿舎に帰っておねんねしとけ」
案の定というかなんというか。開始1分で心が折れそうになるがここはぐっと堪える。
「なあみんな、試合まで3日しかないしさ、ここは一旦協力し合わないか?」
「いや龍也、俺も協力しようとは思ってるぜ? でもあのゴリラがむちゃくちゃ言うからさ」
「ボクもう1人で練習してきていい? 単純に不快」
「ちょ、ちょっとだけ待ってくれ!
おいブラド、ちょっとこっちで話そう」
「なんだよ龍也、まさかあいつらと一緒に練習しろとか言うわけじゃないだろうな」
「まあ要するにそういうことだけどお前が簡単に受け入れないのもわかってる。だからさ、1回だけチャンスをくれないか? お前があの2人を認められるかどうかの。一緒に練習もしないで決めつけるのは早計だと思うんだ」
「俺からしたらあの程度のやつらプレー見るまでもなく雑魚ってわかるんだけどな。まあそう言うなら1回だけチャンス作ってやってもいいぜ」
「ほんとか!? ありがとう!」
「……というわけで将人、凛。2人には今からブラドと1VS1で勝負をしてもらいます。
ルールは簡単。センターマークにボールを置いて、2人はセンターサークルの外で待機。合図と同時に早い者勝ちでボールを奪い、ドリブル。そして相手のゴールにシュートを決めた方が勝ち。遠くからシュートしたらすぐに終わっちゃうからゴールエリア外からのシュートは禁止な」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※用語
センターサークル……コートの中心の円
センターマーク……センターサークルの中心の点
ゴールエリア……ゴール前の四角く囲まれたエリアのうちゴールに近い方
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「へぇ、面白いじゃない。早めに決着つけておくのもいいかもね。当然あんたも参加するんでしょ?」
「え!? 俺!? 今回はブラドメインだから俺は参加しないって。悪いな」
「はあ? 逃げるわけ? 言っとくけどね、日本代表に選ばれたからってあんたが上だと思わないことね」
「だからそれはお前が女だから選ばれなかっただけだって言ってるだろ」
「うるさい。ボクがもっと強ければそんな垣根なんか超えて選ばれてたはずなんだ……」
「…………」
中園凛、常に気を張っていて、言動からは男にかなり強いコンプレックスを抱いていることが伝わってくる。そして……日本代表の俺にも敵対心を抱いている。日本代表の件なんて規則的にも無理に決まっているのに……。こんな状態が続いていつか精神的に崩れないか心配だ。
そして今回の勝負。正直かなりの賭けだ。ここでブラドが勝つと今後上手くいく可能性はさらに低くなるだろう。いや、そもそもどちらが勝ってもいい雰囲気になるとは思えない、そこで……
「勝負は2回行う。1回だけじゃ正確な実力が測れたとは言えないからな」
「? なんでだよ、1回でも勝った方が上じゃねえのか?」
「1回ギリギリの勝負で勝ったとして本当に上だって言いきれるか? ブラド、お前が明確に2人より上だと言いきれるのなら2連続で勝つくらいは余裕だと思っていたけどな」
「まあ勝つのは余裕だけどよ、こんな雑魚どもと2回もやるのは気が乗らねえぜ」
「お? どうした? 2連続で負けるのが怖くて逃げるのか?
俺はいいぜ、2回でも。何回でも俺が勝ってやる!」
「ボクも賛成、1回負けてまぐれとか喚かれても面倒だし」
「んだよ、仕方ねえなあ。もし俺様に負けたらコートから出ていけよな!」
よし。これで上手く1勝1敗で終わってくれれば、最低限丸く収まるんじゃないだろうか。
個人的な見立てだがこの3人は得意分野は違えど実力は拮抗しているように思える。凛に関しては前に試合動画を観ただけだから確信は持てないが、このチームに選ばれたこと、そして彼女の自信から推察するに実力は充分とみて間違いないだろう。
……というか頼む! 引き分けてくれ! これ以外に短期間で雰囲気を良くする方法が思いつかない!
「じゃあ最初は俺から行くぜ。ブラド、てめえに吠え面かかせてやる」
「ガハハ、10秒で勝負をつけてやる!」
練習場にはコートが4つ。他にも色々と設備が整っており、これ以上ない環境と言えるだろう。
キャプテンの俺はチームメイトの前に出て練習内容を伝える。
「じゃあ今から最初の練習を始めます!
とりあえずはポジション毎に4つのコートに分かれて、監督が言っていたようにストレッチからドリブルやパスなどの基礎練習をやってもらいます。細かい内容は各ポジションのリーダーに伝えてあるから従うように。もちろん仲間とはしっかりコミュニケーションを取ること。
では解散! 各ポジションで練習を始めてください!」
監督からの指示は2つ、基礎練とコミュニケーション。この中で特に大事なのはコミュニケーションだろう。
しかし3日で全員とコミュニケーションを取れるようになるのは、問題児の多いこのチームでは難しいと判断。最低限同ポジションの仲間とのコミュニケーションは取れるようになってもらいたい。
そう考えた俺はとりあえずポジション毎に完全に分けて練習することにした。
***
ーコートA フォワード組ー
「じゃ、とりあえずストレッチから始めるぞー」
「ちょっと待ってくれよ龍也。フォワードで集まって練習するのはいいんだけどよ、なんでこいつらがいるんだ?」
「は? なに? ボクもフォワードなんだからいて当然でしょ? 悪い?」
「どうせ雑魚はフォワードとは認めないとか言うんだろ、知ってる。くっだらねぇ」
「おおよくわかってるじゃねえか。じゃあフォワード組として俺と龍也で練習しとくからお前らは宿舎に帰っておねんねしとけ」
案の定というかなんというか。開始1分で心が折れそうになるがここはぐっと堪える。
「なあみんな、試合まで3日しかないしさ、ここは一旦協力し合わないか?」
「いや龍也、俺も協力しようとは思ってるぜ? でもあのゴリラがむちゃくちゃ言うからさ」
「ボクもう1人で練習してきていい? 単純に不快」
「ちょ、ちょっとだけ待ってくれ!
おいブラド、ちょっとこっちで話そう」
「なんだよ龍也、まさかあいつらと一緒に練習しろとか言うわけじゃないだろうな」
「まあ要するにそういうことだけどお前が簡単に受け入れないのもわかってる。だからさ、1回だけチャンスをくれないか? お前があの2人を認められるかどうかの。一緒に練習もしないで決めつけるのは早計だと思うんだ」
「俺からしたらあの程度のやつらプレー見るまでもなく雑魚ってわかるんだけどな。まあそう言うなら1回だけチャンス作ってやってもいいぜ」
「ほんとか!? ありがとう!」
「……というわけで将人、凛。2人には今からブラドと1VS1で勝負をしてもらいます。
ルールは簡単。センターマークにボールを置いて、2人はセンターサークルの外で待機。合図と同時に早い者勝ちでボールを奪い、ドリブル。そして相手のゴールにシュートを決めた方が勝ち。遠くからシュートしたらすぐに終わっちゃうからゴールエリア外からのシュートは禁止な」
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※用語
センターサークル……コートの中心の円
センターマーク……センターサークルの中心の点
ゴールエリア……ゴール前の四角く囲まれたエリアのうちゴールに近い方
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「へぇ、面白いじゃない。早めに決着つけておくのもいいかもね。当然あんたも参加するんでしょ?」
「え!? 俺!? 今回はブラドメインだから俺は参加しないって。悪いな」
「はあ? 逃げるわけ? 言っとくけどね、日本代表に選ばれたからってあんたが上だと思わないことね」
「だからそれはお前が女だから選ばれなかっただけだって言ってるだろ」
「うるさい。ボクがもっと強ければそんな垣根なんか超えて選ばれてたはずなんだ……」
「…………」
中園凛、常に気を張っていて、言動からは男にかなり強いコンプレックスを抱いていることが伝わってくる。そして……日本代表の俺にも敵対心を抱いている。日本代表の件なんて規則的にも無理に決まっているのに……。こんな状態が続いていつか精神的に崩れないか心配だ。
そして今回の勝負。正直かなりの賭けだ。ここでブラドが勝つと今後上手くいく可能性はさらに低くなるだろう。いや、そもそもどちらが勝ってもいい雰囲気になるとは思えない、そこで……
「勝負は2回行う。1回だけじゃ正確な実力が測れたとは言えないからな」
「? なんでだよ、1回でも勝った方が上じゃねえのか?」
「1回ギリギリの勝負で勝ったとして本当に上だって言いきれるか? ブラド、お前が明確に2人より上だと言いきれるのなら2連続で勝つくらいは余裕だと思っていたけどな」
「まあ勝つのは余裕だけどよ、こんな雑魚どもと2回もやるのは気が乗らねえぜ」
「お? どうした? 2連続で負けるのが怖くて逃げるのか?
俺はいいぜ、2回でも。何回でも俺が勝ってやる!」
「ボクも賛成、1回負けてまぐれとか喚かれても面倒だし」
「んだよ、仕方ねえなあ。もし俺様に負けたらコートから出ていけよな!」
よし。これで上手く1勝1敗で終わってくれれば、最低限丸く収まるんじゃないだろうか。
個人的な見立てだがこの3人は得意分野は違えど実力は拮抗しているように思える。凛に関しては前に試合動画を観ただけだから確信は持てないが、このチームに選ばれたこと、そして彼女の自信から推察するに実力は充分とみて間違いないだろう。
……というか頼む! 引き分けてくれ! これ以外に短期間で雰囲気を良くする方法が思いつかない!
「じゃあ最初は俺から行くぜ。ブラド、てめえに吠え面かかせてやる」
「ガハハ、10秒で勝負をつけてやる!」
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