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第一章 さらば地球

11 自己紹介!

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 「では私は地球に戻って挨拶希望者に連絡を取ってくるよ。君たちが地球に戻るのは明日になるからそれまではフィロの指示に従ってくれ。
 では任せたよ、フィロ」

 「任されましたー!」

 敬礼をしながら元気よく返事をするフィロさんを見届けてトール会長は去っていく。

 「じゃあみんな! 話を戻すけど他に質問はないかしら?」

 「はーい。俺たちはオグレス星のどこで生活するんですかー?」

 「ふふふ、そうくると思ったわ。ということで、今からあなたたちの生活場所である宿舎に向かいます!
 と、その前にみんなにこれを渡すわね」

 フィロさんが俺たちに何かを配る。これは……スマホ……?

 「これはテル。地球でいうスマホみたいなものね。本来はもっと優れているんだけど、あなたたちが使いやすいように可能な限りスマホに寄せたから操作はすぐに慣れると思うわ」

 スマホの代わりか、形状もかなり似ている。当然俺たちのスマホはここじゃ使えないだろうしかなり大切なものになりそうだ。

 「はーいじゃあみんな電源入れて~。電源ボタン長押しよ~」

 フィロさんの指示通り俺たちは電源を入れる。すると、テルが光り出し……。

『認証しました』

 「はいOK、認証完了よ。これであなたたちとそのテルが紐つけられたわ。これは完全生体認証、本人じゃないと電源すらつけられないから注意してね。言語は今のであなたたちのものになったから問題ないわ。色々と機能はあるけどとりあえず画面をつけて左上のアプリを見てちょうだい」

 フィロさんの言う通り画面をつける。すると見たことのあるアプリがたくさん並んでいた。言語もフィロさんの言う通り俺の使用言語である日本語だ。これなら数時間で使いこなせそうだな。
 そして指示のあった左上のアプリ。これは見たことのないアプリだ。

 「みんな見れてるかしら? これは簡単に言うとワープアプリ。タップしてみて」

 アプリをタップすると6つの項目が現れる。ここにワープできるのだろうか。

 「6つの項目が出てきたでしょ? 左から、宿舎、あなたたちそれぞれの部屋、練習場、特訓場、スタジアム、宇宙港よ。タップするだけで対象の場所にワープすることができるわ。今のところはその6箇所だけだけど必要に応じて増やすかもしれないから頭に入れておいて。
 ちなみに、いくらオグレスの科学が発展しているとはいえワープ技術はまだまだ希少。こんなどこからでもワープできる機能のついたテルなんて超レアなんだから絶対に絶対になくしたらダメよ!」

 俺たちはフィロさんから強く強く念を押される。
 それにしてもワープか。改めて聞いても現実感は無いがそれでもSFチックでわくわくする。オグレス……すげえ……!
 あ、そういえば気になる単語があったな。特訓場と宇宙港。どういう場所かは想像つくがキャプテンとして一応聞いておこう。

 「フィロさん、特訓場と宇宙港はどういう場所ですか?」

 「はい、いい質問!
 特訓場は名前の通り特訓に適した専用の施設。だけどオグレスの科学をふんだんに利用してるから地球のそれとは比べ物にならないと思っていいわよ!
 宇宙港は地球でいう空港みたいなものね。試合で別の星に行く時に使う予定! 明日地球に戻る時にも使うわ!」

 俺たちがオグレス星に来た時に着陸した場所は港っぽくなかった記憶だがあそことは違う場所のようだな。あの時はオグレス星人に会わせないために人気のないところに着陸したって感じか。

 「他にも質問はありそうだけど、とりあえず宿舎に行くわよ! 押すのは1番左! 間違えないようにね!」

 そう言ってワープしたフィロさんに続いて俺たちも宿舎へとワープした。

 ***

 「1.2.3……。よし! 全員いるわね!
 はい! ここが宿舎よ!
 外観はあなたたちが過ごしやすいように地球のものに寄せてあるわ。
 最初にミーティング用の部屋に行くわよ。入口から入って右に曲がった突き当たりにあるわ。まあとりあえず着いてきて」

 こうして俺たちはフィロさんに続いて建物の中に入っていく。
 外観はもちろん、内装も地球のよくある宿舎と似ている。個人的に宿舎は落ち着ける場所であってほしかったからこれはかなり嬉しい心遣いだ。

 そのまま大部屋へと通される。部屋にはたくさんの机と椅子、そして前にはマイクがあり、俺たち全員が席に着くとフィロさんが前に出て再び話を始める。

 「はい! ここがミーティングルームです! 用途は言わなくても分かるわよね。
 というわけでまず最初にあなたたちと一緒に戦う仲間たちを紹介しまーす! ではどうぞ!」

 「ほっほ、全員揃っておるか、こりゃ一安心じゃわい」

 「アウラス監督!」

 「えー、では改めて。このチームの監督を任された、アウラス・ジェーンじゃ。よろしく頼むぞ~」

 相変わらず軽いなぁと思いつつも俺は内心わくわくしていた。監督の前回の試合でみせた采配は本物だ。そんな凄い監督と試合ができることは一サッカー選手として純粋に嬉しい。それにこの監督からなら今まで学べなかったことをたくさん学べそうな気がする。

 「アウラス監督、俺も改めて自己紹介を。
 キャプテンを任されました、山下龍也です。
 あなたと共に戦えることが本当に嬉しいです。よろしくお願いします!」

 「ほっほ、こちらこそよろしくじゃ」

 「さあ! まだまだ行くわよ!
 みんな、選手が11人だけじゃ不安……。そう思ったことはない?
 大丈夫! 11人だけじゃない! 追加メンバーの登場よ!」

 フィロさんの声に合わせて4人の選手が現れる。
 それを見た瞬間……

 「うおおおおおおおおおおおおおおお」

 レオが歓喜の声を上げる。
 それもそのはず、追加メンバー4人のうち2人は女性選手だった。

 「君はロシアのサッカープリンセス! ラーラ・パレリモちゃん! そして横の君は日本のサッカー撫子! 中園凛なかぞのりんちゃん! こんな綺麗な2人と一緒にサッカーができるなんて光栄すぎるぜ! あ、俺はレオ・シルバ。気軽にレオって呼んでくれ! よろしくな!」

 サッカープリンセスにサッカー撫子。本当にそう呼ばれているのかはともかく、金色の長い髪に品がありつつも優しそうな顔つきのラーラ、短く整った黒髪に名前の通り凛とした顔つきの凛、2人とも名前負けはしていないな。とはいえ
 「詳しいな、レオ」
 と俺は呟く。するとレオは

 「当たり前だろ!? 俺は空き時間の全てを女子スポーツ観戦に充ててるんだ。女子サッカー界でもかなりの大物の2人を知らないわけがないだろ!」

 熱く語るレオに対して中園凛が詰め寄る。

 「なにあんたいきなり、サッカー撫子なんて呼ばれてないし別に綺麗でもないから。
 僕は中園凛。一応女だけど変に気使わなくて大丈夫。性別を言い訳に使いたくないし、女だからってなめられるのも嫌。
 ポジションはフォワード。仲間とはいえ負ける気も譲る気も馴れ合う気もないから。
 ってことでよろしく」

 予想以上の刺々しい態度にレオを筆頭に少し狼狽える俺たち。それにしても中園凛か、同じ日本人なだけあって名前を耳にしたことはある。確か女子サッカーの日本代表選手だ。噂によると男子日本代表に入れろと日本サッカー連盟に殴り込みをかけたとか。流石に誇張されてると思うが言動からすると似たようなことを行っていてもおかしくなさそうに思える。

 ……というか、将人といいブラドといいなんでフォワードにはこう血の気の多いやつが集まるんだよ……!!

 「おっと、これは申し訳ない。けど一応は仲間だ。そんな気を張ってるともたないぜ?」

 「……余計なお世話」

 レオの言葉もまるで通じない。これは手強そうだな。

 「はーい凛さんありがとう。じゃあそのまま右に自己紹介していって~」

 「は、はい! わたしはラーラ・パレリモと言います! ロシア出身でポジションはディフェンスです。体がすごく柔らかいのでそういう面で力になれたらなぁと思います。よろしくお願いします!」

 「よろしくー! ラーラちゃん! 俺ミッドフィールダーでポジションも近いから連携できるように頑張ろうぜ!」

 話しながら握手を求め近づいたレオを見てラーラは後ずさり、凛の後ろに隠れてしまう。

 「わっ! す、すいません、わたしちょっと男の人が苦手で……。
 治せるように頑張ってるんですけど今はまだ――」

 「ちょっと! ラーラ怖がってるでしょ」

 ラーラとレオを引き離すように割り込みレオを睨みつける凛。その様子を見るに凛とラーラは既に仲を深めているようだ。

 「悪ぃ、そうだとは知らなかったんだよ。ごめんなラーラちゃん。でもさ、あんま気にすんな、ゆっくり慣らしていきゃいいよ」

 凛に注意されたレオは少し下がりながらも笑ってそう答える。流石に2人中2人に拒否されてるのを見ると少しだけ不憫に思えるな。

 「そーいえば、クレもロシア出身だろ? ラーラとは知り合いなのか?」

 「いや、知らないな」

 「ふーん、まあ確かにお前って女子に興味無いですって顔してるしなー」

 そんな会話をするペペとクレを見つめるラーラ。心なしか少し笑っているように見えたが気のせいだろうか。

 それにしても、女子と真剣にサッカーした経験は無いから一緒にプレーするのは楽しみだ。
 ……下心は無いからな! 全く無いからな!
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