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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百四拾八話 武具を納品しますがニャにか! その弐
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更新再開!
「よく参られましたな?
てっきり昨日の内に工房を畳んでレヴィアタン街から逃げ出すと思っていましたが。どうやは己が老いを万民の見前で知らしめられなければ分からないと見えますなぁ。」
翌日、改めてティブロン商会に赴くと店の前には黒山の人だかりが出来ていたのニャ。その群衆の間を掻き分け僕と御爺々様はティブロン商会へと入って行ったのニャが、店の中の様子が通りから良く見えるように間口が大きく開け放たれ、店の中が良く見える群衆の最前列には、節くれ立った指の如何にも職人然とした人たちや、身なりの綺麗な恰幅の良い商人然とした者達が場所を占拠していたのニャ。そんな職人さんと商人さんたちは群衆を掻き分け店の前に辿り着いた僕と御爺々様の姿を見て見せた表情は、全く異なる物だったニャ。
商人さん達は、群衆に揉みくちゃにされながら店先に辿り着いて服装や毛並みがヨレヨレになっている僕たちを見て指を差しながら隣り合う者とコソコソと耳打ちをしながら笑っているのに対し、職人さんたちは不安げな表情を浮かべ御爺々様の事を心配している様だったニャ。
そんな反応に疑問を持ちながら僕は御爺々様と共にティブロン商会の店先へと一歩踏み込んだのニャ。すると僕たちが来るのを待ち構えていたのか、店先の敷居を踏み越えたと同時に店の多くからティブロン商会の会頭と人魚族の男が姿を現して御爺々様に対して失礼極まりない言葉を投げ付けて来たニャ。そんな会頭に対して御爺々様は『フン!』と鼻を鳴らし、
「早々の挨拶、痛み入るニャ。ところで、この騒ぎは一体何事ニャ?第三者を立てて改めてワシらが仕立てた拵えを見定めると言う話をしたはずが、何時から見世物にすることになったのニャ?」
とティブロン商会の店先に群がる群衆について尋ねると、会頭はさも今気が付いたような顔をして店先に集まる群衆を見回し、
「これは何事だ? おい!この店先に集まった者達は何をしに集まっているのだ?ちょっと訳を聞いてきなさい。」
と店の者に声を掛けるとそれを見越していた様に数人の男達が、店から群衆の中へと向かい直ぐに戻って来て、
「それが、今日『御大』が拵えを施した武具の品定めをすると聞いて、『御大』の仕事を見たいと来たのだと・・・」
「はい! 私も同じ話を聞きました。是非『御大』の仕事を見て今後の指標にしたいと仰る職人の方が」
「私もです。私は商人の方に聞いたのですが、『御大』自ら手掛けられた仕事を見てレヴィアタン街における商機を探りたいと・・」
と如何にも示し合わせたかのような御追従の言葉を口にする職人や商人達だったが、その表情は胡散臭さが隠しきれない媚びるような笑みが見え隠れし、その瞳にはティブロン商会の会頭の顔が浮かんでいて、明らかにティブロン商会が仕込んだ‶サクラ”であることは一目瞭然だったニャ。
そんな群衆の言葉に、会頭はその瞳を大きく見開くと大きな声で、
「ほっほ~ぉ。『御大』が手懸けた拵え見たさにこんなにも集まるとは、いやはや流石は『御大』と言ったところですな。
此処まで期待を集めては仕方ありません、これも『御大』の名ゆえという事で・・それでは、立会人をお呼びし始めると致しましょう。
番頭さん!お呼びしなさい!!」
御爺々様に当て擦りをするような言葉を投げつけてから、脇に控える店の者に立会人を呼んでくるように告げたのニャ。
言いつけられた番頭は軽く頭を下げると小走りに店の奥へと姿を消し、再び姿を現した時には一人の偉丈夫を連れていた。その偉丈夫の姿を見た御爺々様は眉間に深い皺を寄せて会頭を睨み付けたが、当の会頭は御爺々様の視線など何処吹く風とばかりに無視して、偉丈夫の元へと歩み寄ったニャ
「ミハエル様、御足労をお掛けいたします。此度の件に際し立会人を受けて頂きまして感謝申し上げます。」
そういって偉丈夫に深々と頭を下げる会頭に対し、偉丈夫が軽く顎を引くようにして頷くと、店先に集まった群衆にも聞こえる様な大きな声を上げたのニャ。
「ティブロン! 『レヴィアタン街にその人あり!』と謳われた奔安見光月が手懸けし拵えを、第三者の立場で目利きをお願いしたいとの事であったから、忙しい公務の合間を縫って馳せ参じたのだ。奔安見光月が来たのなら早々に始めるがよい。」
高らかに宣言する様に声を上げた途端、ティブロン商会の店先に集まった群衆からは一斉に地唸りの様な声が上がり、僕はその声に驚き身を竦めてしまったのニャが御爺々様は少し怒ったような顔でミハエルとティブロンを睨み付けていたニャ。
そんな御爺々様の表情をまるで確か見えるようにティブロン商会の会頭は一瞥してほくそ笑む。
「それでは『御大』。ミハエル様に見ていただけるように拵えを依頼した武具をこちらにお出し下さい。」
そう声を大にして武具を出すように告げられると、御爺々様苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、僕にトライデントを見せるように目で合図を送って来たニャ。
僕は少し緊張しつつも、持ってたトライデントを昨日と同じように店先の上がり端に置くと包んでいた布を取り去りその姿を見守る群衆の前に曝した。
「お~~ぉ、っ!・・・・・」
集まっていた職人たちからはどよめきの声が上がったが、その声は何故か急速に消え辺りには沈黙が広がって行った。そんな職人たちの様子をまるで睨み付けるような目を向けていた商人達だったが、互いに探り合うように視線の交換が行われていたが、そんな中自分の足元に置かれたトライデントを見ていたミハエルが徐に手に取り舐める様にしてトライデントを見回した後、穂先に被せてある鞘を取り去りその場で腰溜めに構えると、
「はっ!」
「ニャ~ぁ、御爺々様~ぁ!!」
店の床を踏み抜かんばかりに力強く踏む込む、気合と共にトライデントを御爺々様に向けて突き出したニャ。あまりに突然の蛮行に、御爺々様とトライデントの穂先との間に割って入る事が出来ず、悲鳴交じりの声を上げてしまったニャ。
「ふん!」
声を上げた僕を横目で見てミハイルは頬を弛めて皮肉めいた笑みを浮かべたが、視線を突き出した穂先の先に立つ御爺々様に戻すと、面白くなさそうに鼻を鳴らした。
御爺々様に向かって突き出されたトライデントの穂先は、寸分違わず御爺々様の顔の前に突き出されその僅か反寸(1.5cm)程の鼻先に突きつけられていたのニャが、御爺々様は寸毫も動じずただジッとトライデントを握るミハイルを睨み付けていた。
そんな御爺々様の様子に面白くなさそうに顔を歪めたミハイルは、投げやりな態度で改めてトライデントの長柄を覆う大鮫蛇の楯鱗を眺めると、興味が失せたかと言うように店先の土間に立つ御爺々様の足元へ放り投げて言い放ったのニャ。
「『御大』などと言われ街の者から一目置かれていると聞いてどれ程の職人なのかと期待していたが、寄る年波には勝てず腕が衰えたのか。はたまた謂うほどの職人では無かったのか・・・どちらにしろこの程度の拵えを施して悦に入るとは、呆れたものだ。
なんだこれは?剥がれないようにと鉄の輪で止めてはあるが、鮫皮を柄に張り付けただけではないか。こんな物は見習いの半人前の職人でも出来る仕事だ!」
と、そのあまりにモノを知らない発言に僕は呆れてしまい言葉を失ってしまったのニャ。様々な素材の中から検討に検討を重ねて、わざわざレヴィアタン街ギルドの総支配人に無理を言って取り寄せて貰い、僕と御爺々様で鞣した大鮫蛇楯鱗をただの『鮫皮』と評すなんて、見る目が無いにも程があるのニャ。
ニャのに、言葉を失い唖然とする僕を見たミハイルは、何を思ったのか愉悦に歪んだ笑みを湛え、僕と御爺々様を見下してきたニャ。その表情に更に僕は呆れ返ってしまったのニャが、御爺々様そんなミハイルに対して僅かに眉を動かしただけで特に何も反応することなく、足元に転がるトライデントを拾い上げると、懐から一枚の布を取り出し放り出された際についた土埃を綺麗に拭き取ると、上がり端に無造作に置かれた鞘を拾いトライデントの穂先に被せると、依頼者である人魚族を見つめたのニャ。そして、
「そこの・・依頼を出した人魚族の御方も同じ見解で良いという事かニャ?」
静かに問いかけたニャ。その御爺々様の言葉に、それまで会頭の背後で身を小さくして成り行きを見守るしかなかった人魚族の男は一瞬表情を弛めトライデントの方へと手を伸ばそうとしたものの、会頭からの視線が自分へと注がれている事に気が付き慌てて伸ばしかけていた手を引っ込めたが、その視線はトライデントから離れる事は無かった。
しかし、伸ばし掛けた手を引っ込めた人魚族の動きで、ティブロン商会の会頭は集まっている群衆の視線を集めるように大きくパンパンと手を打ち鳴らした。
「何を言い出すのかと思えば・・依頼者であるスフォルツ殿は昨日儂と共にその駄作を目の当たりにし落胆しておられたのを忘れたか!
それを、納得しない貴様の為にわざわざミハイル様に第三者の立会人としてこの場にお越し願い、下された見解にまだ異を唱えるつもりか?『御大』の名が泣きますぞ。いい加減、自身の『老い』を認めなされぃ!!」
勝ち誇った様な顔つきで御爺々様に対して無礼極まる言葉を吐きかける会頭の言葉に、御爺々様がどう返すのかを集まった群衆はかたずをのんで見守り周囲が静まりかえったニャ。
御爺々様は呆れた様な表情を浮かべて大きな溜息を吐き出し口を開きかけた時、僕らの背後に集まっていた群衆の後方から大きな声が上がったニャ。
「愚か者がぁ! 商人として最も重要な『目利き』の力量が著しく乏しい事を自ら曝したのは貴様の方だ。ティブロン!!」
「よく参られましたな?
てっきり昨日の内に工房を畳んでレヴィアタン街から逃げ出すと思っていましたが。どうやは己が老いを万民の見前で知らしめられなければ分からないと見えますなぁ。」
翌日、改めてティブロン商会に赴くと店の前には黒山の人だかりが出来ていたのニャ。その群衆の間を掻き分け僕と御爺々様はティブロン商会へと入って行ったのニャが、店の中の様子が通りから良く見えるように間口が大きく開け放たれ、店の中が良く見える群衆の最前列には、節くれ立った指の如何にも職人然とした人たちや、身なりの綺麗な恰幅の良い商人然とした者達が場所を占拠していたのニャ。そんな職人さんと商人さんたちは群衆を掻き分け店の前に辿り着いた僕と御爺々様の姿を見て見せた表情は、全く異なる物だったニャ。
商人さん達は、群衆に揉みくちゃにされながら店先に辿り着いて服装や毛並みがヨレヨレになっている僕たちを見て指を差しながら隣り合う者とコソコソと耳打ちをしながら笑っているのに対し、職人さんたちは不安げな表情を浮かべ御爺々様の事を心配している様だったニャ。
そんな反応に疑問を持ちながら僕は御爺々様と共にティブロン商会の店先へと一歩踏み込んだのニャ。すると僕たちが来るのを待ち構えていたのか、店先の敷居を踏み越えたと同時に店の多くからティブロン商会の会頭と人魚族の男が姿を現して御爺々様に対して失礼極まりない言葉を投げ付けて来たニャ。そんな会頭に対して御爺々様は『フン!』と鼻を鳴らし、
「早々の挨拶、痛み入るニャ。ところで、この騒ぎは一体何事ニャ?第三者を立てて改めてワシらが仕立てた拵えを見定めると言う話をしたはずが、何時から見世物にすることになったのニャ?」
とティブロン商会の店先に群がる群衆について尋ねると、会頭はさも今気が付いたような顔をして店先に集まる群衆を見回し、
「これは何事だ? おい!この店先に集まった者達は何をしに集まっているのだ?ちょっと訳を聞いてきなさい。」
と店の者に声を掛けるとそれを見越していた様に数人の男達が、店から群衆の中へと向かい直ぐに戻って来て、
「それが、今日『御大』が拵えを施した武具の品定めをすると聞いて、『御大』の仕事を見たいと来たのだと・・・」
「はい! 私も同じ話を聞きました。是非『御大』の仕事を見て今後の指標にしたいと仰る職人の方が」
「私もです。私は商人の方に聞いたのですが、『御大』自ら手掛けられた仕事を見てレヴィアタン街における商機を探りたいと・・」
と如何にも示し合わせたかのような御追従の言葉を口にする職人や商人達だったが、その表情は胡散臭さが隠しきれない媚びるような笑みが見え隠れし、その瞳にはティブロン商会の会頭の顔が浮かんでいて、明らかにティブロン商会が仕込んだ‶サクラ”であることは一目瞭然だったニャ。
そんな群衆の言葉に、会頭はその瞳を大きく見開くと大きな声で、
「ほっほ~ぉ。『御大』が手懸けた拵え見たさにこんなにも集まるとは、いやはや流石は『御大』と言ったところですな。
此処まで期待を集めては仕方ありません、これも『御大』の名ゆえという事で・・それでは、立会人をお呼びし始めると致しましょう。
番頭さん!お呼びしなさい!!」
御爺々様に当て擦りをするような言葉を投げつけてから、脇に控える店の者に立会人を呼んでくるように告げたのニャ。
言いつけられた番頭は軽く頭を下げると小走りに店の奥へと姿を消し、再び姿を現した時には一人の偉丈夫を連れていた。その偉丈夫の姿を見た御爺々様は眉間に深い皺を寄せて会頭を睨み付けたが、当の会頭は御爺々様の視線など何処吹く風とばかりに無視して、偉丈夫の元へと歩み寄ったニャ
「ミハエル様、御足労をお掛けいたします。此度の件に際し立会人を受けて頂きまして感謝申し上げます。」
そういって偉丈夫に深々と頭を下げる会頭に対し、偉丈夫が軽く顎を引くようにして頷くと、店先に集まった群衆にも聞こえる様な大きな声を上げたのニャ。
「ティブロン! 『レヴィアタン街にその人あり!』と謳われた奔安見光月が手懸けし拵えを、第三者の立場で目利きをお願いしたいとの事であったから、忙しい公務の合間を縫って馳せ参じたのだ。奔安見光月が来たのなら早々に始めるがよい。」
高らかに宣言する様に声を上げた途端、ティブロン商会の店先に集まった群衆からは一斉に地唸りの様な声が上がり、僕はその声に驚き身を竦めてしまったのニャが御爺々様は少し怒ったような顔でミハエルとティブロンを睨み付けていたニャ。
そんな御爺々様の表情をまるで確か見えるようにティブロン商会の会頭は一瞥してほくそ笑む。
「それでは『御大』。ミハエル様に見ていただけるように拵えを依頼した武具をこちらにお出し下さい。」
そう声を大にして武具を出すように告げられると、御爺々様苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、僕にトライデントを見せるように目で合図を送って来たニャ。
僕は少し緊張しつつも、持ってたトライデントを昨日と同じように店先の上がり端に置くと包んでいた布を取り去りその姿を見守る群衆の前に曝した。
「お~~ぉ、っ!・・・・・」
集まっていた職人たちからはどよめきの声が上がったが、その声は何故か急速に消え辺りには沈黙が広がって行った。そんな職人たちの様子をまるで睨み付けるような目を向けていた商人達だったが、互いに探り合うように視線の交換が行われていたが、そんな中自分の足元に置かれたトライデントを見ていたミハエルが徐に手に取り舐める様にしてトライデントを見回した後、穂先に被せてある鞘を取り去りその場で腰溜めに構えると、
「はっ!」
「ニャ~ぁ、御爺々様~ぁ!!」
店の床を踏み抜かんばかりに力強く踏む込む、気合と共にトライデントを御爺々様に向けて突き出したニャ。あまりに突然の蛮行に、御爺々様とトライデントの穂先との間に割って入る事が出来ず、悲鳴交じりの声を上げてしまったニャ。
「ふん!」
声を上げた僕を横目で見てミハイルは頬を弛めて皮肉めいた笑みを浮かべたが、視線を突き出した穂先の先に立つ御爺々様に戻すと、面白くなさそうに鼻を鳴らした。
御爺々様に向かって突き出されたトライデントの穂先は、寸分違わず御爺々様の顔の前に突き出されその僅か反寸(1.5cm)程の鼻先に突きつけられていたのニャが、御爺々様は寸毫も動じずただジッとトライデントを握るミハイルを睨み付けていた。
そんな御爺々様の様子に面白くなさそうに顔を歪めたミハイルは、投げやりな態度で改めてトライデントの長柄を覆う大鮫蛇の楯鱗を眺めると、興味が失せたかと言うように店先の土間に立つ御爺々様の足元へ放り投げて言い放ったのニャ。
「『御大』などと言われ街の者から一目置かれていると聞いてどれ程の職人なのかと期待していたが、寄る年波には勝てず腕が衰えたのか。はたまた謂うほどの職人では無かったのか・・・どちらにしろこの程度の拵えを施して悦に入るとは、呆れたものだ。
なんだこれは?剥がれないようにと鉄の輪で止めてはあるが、鮫皮を柄に張り付けただけではないか。こんな物は見習いの半人前の職人でも出来る仕事だ!」
と、そのあまりにモノを知らない発言に僕は呆れてしまい言葉を失ってしまったのニャ。様々な素材の中から検討に検討を重ねて、わざわざレヴィアタン街ギルドの総支配人に無理を言って取り寄せて貰い、僕と御爺々様で鞣した大鮫蛇楯鱗をただの『鮫皮』と評すなんて、見る目が無いにも程があるのニャ。
ニャのに、言葉を失い唖然とする僕を見たミハイルは、何を思ったのか愉悦に歪んだ笑みを湛え、僕と御爺々様を見下してきたニャ。その表情に更に僕は呆れ返ってしまったのニャが、御爺々様そんなミハイルに対して僅かに眉を動かしただけで特に何も反応することなく、足元に転がるトライデントを拾い上げると、懐から一枚の布を取り出し放り出された際についた土埃を綺麗に拭き取ると、上がり端に無造作に置かれた鞘を拾いトライデントの穂先に被せると、依頼者である人魚族を見つめたのニャ。そして、
「そこの・・依頼を出した人魚族の御方も同じ見解で良いという事かニャ?」
静かに問いかけたニャ。その御爺々様の言葉に、それまで会頭の背後で身を小さくして成り行きを見守るしかなかった人魚族の男は一瞬表情を弛めトライデントの方へと手を伸ばそうとしたものの、会頭からの視線が自分へと注がれている事に気が付き慌てて伸ばしかけていた手を引っ込めたが、その視線はトライデントから離れる事は無かった。
しかし、伸ばし掛けた手を引っ込めた人魚族の動きで、ティブロン商会の会頭は集まっている群衆の視線を集めるように大きくパンパンと手を打ち鳴らした。
「何を言い出すのかと思えば・・依頼者であるスフォルツ殿は昨日儂と共にその駄作を目の当たりにし落胆しておられたのを忘れたか!
それを、納得しない貴様の為にわざわざミハイル様に第三者の立会人としてこの場にお越し願い、下された見解にまだ異を唱えるつもりか?『御大』の名が泣きますぞ。いい加減、自身の『老い』を認めなされぃ!!」
勝ち誇った様な顔つきで御爺々様に対して無礼極まる言葉を吐きかける会頭の言葉に、御爺々様がどう返すのかを集まった群衆はかたずをのんで見守り周囲が静まりかえったニャ。
御爺々様は呆れた様な表情を浮かべて大きな溜息を吐き出し口を開きかけた時、僕らの背後に集まっていた群衆の後方から大きな声が上がったニャ。
「愚か者がぁ! 商人として最も重要な『目利き』の力量が著しく乏しい事を自ら曝したのは貴様の方だ。ティブロン!!」
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