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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百拾九話 閑話
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更新が遅れてすいません。
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「後方の船影消失。転舵した模様!」
「船長!」
「分かってる! 間違いなくモービィの親爺様だ。こりゃぁ大目玉を喰らう事になるなぁ。」
「虎太良~ぉ、『大目玉を喰らう事になるなぁ』じゃないだろうぉ。追尾だけを厳命されていたのに、勝手に停船命令なんか出すからこんな事になってるんだぞ。だからボクはやめとけと言ったんだ! それなのに・・・」
「ガタガタ騒ぐな!鬱陶しい!!
大体、船の上では船長と呼べって言っといただろう、お前も副長になったんだから公私の区別をつけろよ。」
帆柱の上からの物見の知らせに、後方でチラリと見えていた船影は波間の影にその姿を消していたが、その動きから、我らの頭モービィの親爺様が乗り込みレヴィアタン街を発した船である事は直ぐに推測が出来、俺は思わず苦虫を噛み潰したように顔を顰めると、隣で物見の言葉を聞いていた船の副長で幼馴染でもある妖羆人族の天塩剛太がその大きな図体に似合わない情けない声を上げて俺を非難してきた。
俺は僚艦と共に周辺海域の保安巡航の為にレヴィアタン街を出港しその任に就いていたのだが、出港して二日目にしてサメの骸骨を旗の絵柄に掲げるケルシュ海賊団所属と思われる一隻の船を発見した。
俺は即座にレヴィアタン街へ『海賊船発見!』の一報を伝えるように配属されていた連絡要員に厳命し、海賊船を見失わないように追跡を開始した。
『ケルシュ海賊団を発見した場合には即座にレヴィアタン街に知らせ、後続の船を待って万全の態勢を整え海賊船を捕捉撃滅する様に』
と、命じられていたからだ。
だが、それから五日の間俺達が追跡している事を分かっている筈なのに海賊船は慌てて逃走を図る訳でもなく、逃げるのを止めて牙を剥いてくる訳でもなく、時には海風の乗って笑い声まで聞こえてきた。その様子に俺はその船を海賊船とした自分の判断が間違っていたのでは?との考えが浮かび、副長の剛太が止めたにも拘らず、その船に停船するように呼びかけた。
その途端、それまで陽気な笑い声が聞こえて来ていた船から突然、矢が放たれ俺の頬を掠めたのを皮切りに、何十と言う矢が俺達の船に打ち込まれる事となり、俺は慌てて転舵を命じ一旦距離を取り乗員に応戦を命じる事となってしまったのだ。
その後、一定の距離を保ち弓矢による攻撃の応酬となったが、直ぐに物見がレヴィアタン街方向から近づく船影が見え、直ぐに波間の影に見えなくなったと告げて来たのだ。
「剛太!愚痴は良いから、どう見る?」
「僕に改めて聞くまでもないだろう?あの動きは間違いなくあの陰険副官の指揮に決まってるだろ。その内海賊船の頭を押さえに姿を現すだろうなぁ。」
「やっぱりお前もそう思うか・・・だとしたら」
「あぁ、少し攻撃の手を強めて僕たちの船に敵の目を向けた方が効果的だろうな。そうでもしない事には親爺様のゲンコツだけじゃなく、陰険副官から長々と説教を喰らう事になるのは確実だな。」
俺は剛太の言葉に腹を決め、乗員に陰険副官の策に合わせる様に後方から海賊船への攻撃を強めるよう指示を出した。
◇
「・・・風が変わったか?どう見る。」
「へぃ。微かですが波間に船影が見えた気がしやす。餌に食いついて来たのやも知れやせん。」
「・・・そうか。どいつが掛かったと思う。」
「そうでやすねぇ。一旦姿を見せるほど近づいて来たのに直ぐに姿を消しやした。こんな嫌らしい操船をするのは、一人しかおりやせん。」
傍らで思案顔を浮かべる魚人族の小男の言葉に、額から頬に掛けて大きな刀傷のある凶相の男はニヤリと笑みを浮かべ、
「そうか。とすると、彼奴も一緒だな。頭領に切先を折られたと言うのに懲りない奴だ。だが丁度良い、彼奴がいなくなれば小生意気なあのも女が頼りとするのは、小賢しい鯨人族だけ。
そうなれば、表の奴らが何とかするだろうからな。これで、昔の混沌としたレヴィアタン街を取り戻せる。
おい! お客人をお呼びしろ!!」
「では?」
「あぁ、じきに後方の船から俺達の目を引くために攻勢が強まる。その対応に追われている様に見せ掛けておけ、差配はグロウビィお前に任せる。」
「へぃ! 分かりやした。それで船長はどうされるんで?」
「俺は前方から俺達の頭を押さえようと迂回してくる彼奴のお出迎えをしないとな・・・そしてこの世からご退場いただこう♪」
「・・お客人の事、本当に信用しても良ぅございやすか?あっしはどうにも・・・」
「まぁ、お前の懸念も分かるがな。元々、このために来ているのだ。今更矛を逆さまにする事も無かろう。尤も、俺の傍らにいてその様な事を企むと言うのならやってみる事だ、一節紡ぐ間に胴から首が離れる事になるだけだがな。」
凄絶な笑みを浮かべる『船長』と呼ばれた男の表情に、顔を青く変える魚人族は即座に拱手すると、、『お客人』の元に船長の言葉を届ける為、手下の魚人族を走らせ、自分は船長の前から逃げ出すように帆船の甲板を艦尾へと走った。
そんな魚人族の様子など気にすることなく、凶相の船長は舳先に歩を進めながら獲物を待ち受ける漁師の様にギラギラとした表情を浮かべるのだった。
◇
「は~ぁ、退屈ですぅ。フェアネン様も酷いですぅ、こんな魚臭い所に行ってこいだなんて・・・」
帆船の奥にも置けられた一室で与えられた枕に顔を埋めてブツブツと恨み言を呟くものが一人。
その者は、小柄で、海で暮らす者特有の日焼けなど一欠けらも無い、真っ新な白色の肌が、そして頭に被るフードからは黄金色に輝く髪の毛が出ていて、この船に乗船する他の者達とは明らかに異なる容姿をしていた。
『ドン!ドン!ドン!!』
「失礼しやす。お客人!船長が呼んでおりやす。すいやせんが、甲板までおいでくだせぇ!!」
突然、勢いよく扉が叩かれると扉の外から声が掛けられた。すると、それまでブツブツ呟いていた色白金髪はゆっくりと顔を上げたかと思うとその顔には愉悦する様な笑みが浮かび、
「漸くこの退屈とオサラバ出来るのかな?僕を呼ぶんだからそれ相応の玩具じゃないと許さないぞ♪」
そう呟きを残すと、軽い足取りで扉を開け部屋を後にするのだった。
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「後方の船影消失。転舵した模様!」
「船長!」
「分かってる! 間違いなくモービィの親爺様だ。こりゃぁ大目玉を喰らう事になるなぁ。」
「虎太良~ぉ、『大目玉を喰らう事になるなぁ』じゃないだろうぉ。追尾だけを厳命されていたのに、勝手に停船命令なんか出すからこんな事になってるんだぞ。だからボクはやめとけと言ったんだ! それなのに・・・」
「ガタガタ騒ぐな!鬱陶しい!!
大体、船の上では船長と呼べって言っといただろう、お前も副長になったんだから公私の区別をつけろよ。」
帆柱の上からの物見の知らせに、後方でチラリと見えていた船影は波間の影にその姿を消していたが、その動きから、我らの頭モービィの親爺様が乗り込みレヴィアタン街を発した船である事は直ぐに推測が出来、俺は思わず苦虫を噛み潰したように顔を顰めると、隣で物見の言葉を聞いていた船の副長で幼馴染でもある妖羆人族の天塩剛太がその大きな図体に似合わない情けない声を上げて俺を非難してきた。
俺は僚艦と共に周辺海域の保安巡航の為にレヴィアタン街を出港しその任に就いていたのだが、出港して二日目にしてサメの骸骨を旗の絵柄に掲げるケルシュ海賊団所属と思われる一隻の船を発見した。
俺は即座にレヴィアタン街へ『海賊船発見!』の一報を伝えるように配属されていた連絡要員に厳命し、海賊船を見失わないように追跡を開始した。
『ケルシュ海賊団を発見した場合には即座にレヴィアタン街に知らせ、後続の船を待って万全の態勢を整え海賊船を捕捉撃滅する様に』
と、命じられていたからだ。
だが、それから五日の間俺達が追跡している事を分かっている筈なのに海賊船は慌てて逃走を図る訳でもなく、逃げるのを止めて牙を剥いてくる訳でもなく、時には海風の乗って笑い声まで聞こえてきた。その様子に俺はその船を海賊船とした自分の判断が間違っていたのでは?との考えが浮かび、副長の剛太が止めたにも拘らず、その船に停船するように呼びかけた。
その途端、それまで陽気な笑い声が聞こえて来ていた船から突然、矢が放たれ俺の頬を掠めたのを皮切りに、何十と言う矢が俺達の船に打ち込まれる事となり、俺は慌てて転舵を命じ一旦距離を取り乗員に応戦を命じる事となってしまったのだ。
その後、一定の距離を保ち弓矢による攻撃の応酬となったが、直ぐに物見がレヴィアタン街方向から近づく船影が見え、直ぐに波間の影に見えなくなったと告げて来たのだ。
「剛太!愚痴は良いから、どう見る?」
「僕に改めて聞くまでもないだろう?あの動きは間違いなくあの陰険副官の指揮に決まってるだろ。その内海賊船の頭を押さえに姿を現すだろうなぁ。」
「やっぱりお前もそう思うか・・・だとしたら」
「あぁ、少し攻撃の手を強めて僕たちの船に敵の目を向けた方が効果的だろうな。そうでもしない事には親爺様のゲンコツだけじゃなく、陰険副官から長々と説教を喰らう事になるのは確実だな。」
俺は剛太の言葉に腹を決め、乗員に陰険副官の策に合わせる様に後方から海賊船への攻撃を強めるよう指示を出した。
◇
「・・・風が変わったか?どう見る。」
「へぃ。微かですが波間に船影が見えた気がしやす。餌に食いついて来たのやも知れやせん。」
「・・・そうか。どいつが掛かったと思う。」
「そうでやすねぇ。一旦姿を見せるほど近づいて来たのに直ぐに姿を消しやした。こんな嫌らしい操船をするのは、一人しかおりやせん。」
傍らで思案顔を浮かべる魚人族の小男の言葉に、額から頬に掛けて大きな刀傷のある凶相の男はニヤリと笑みを浮かべ、
「そうか。とすると、彼奴も一緒だな。頭領に切先を折られたと言うのに懲りない奴だ。だが丁度良い、彼奴がいなくなれば小生意気なあのも女が頼りとするのは、小賢しい鯨人族だけ。
そうなれば、表の奴らが何とかするだろうからな。これで、昔の混沌としたレヴィアタン街を取り戻せる。
おい! お客人をお呼びしろ!!」
「では?」
「あぁ、じきに後方の船から俺達の目を引くために攻勢が強まる。その対応に追われている様に見せ掛けておけ、差配はグロウビィお前に任せる。」
「へぃ! 分かりやした。それで船長はどうされるんで?」
「俺は前方から俺達の頭を押さえようと迂回してくる彼奴のお出迎えをしないとな・・・そしてこの世からご退場いただこう♪」
「・・お客人の事、本当に信用しても良ぅございやすか?あっしはどうにも・・・」
「まぁ、お前の懸念も分かるがな。元々、このために来ているのだ。今更矛を逆さまにする事も無かろう。尤も、俺の傍らにいてその様な事を企むと言うのならやってみる事だ、一節紡ぐ間に胴から首が離れる事になるだけだがな。」
凄絶な笑みを浮かべる『船長』と呼ばれた男の表情に、顔を青く変える魚人族は即座に拱手すると、、『お客人』の元に船長の言葉を届ける為、手下の魚人族を走らせ、自分は船長の前から逃げ出すように帆船の甲板を艦尾へと走った。
そんな魚人族の様子など気にすることなく、凶相の船長は舳先に歩を進めながら獲物を待ち受ける漁師の様にギラギラとした表情を浮かべるのだった。
◇
「は~ぁ、退屈ですぅ。フェアネン様も酷いですぅ、こんな魚臭い所に行ってこいだなんて・・・」
帆船の奥にも置けられた一室で与えられた枕に顔を埋めてブツブツと恨み言を呟くものが一人。
その者は、小柄で、海で暮らす者特有の日焼けなど一欠けらも無い、真っ新な白色の肌が、そして頭に被るフードからは黄金色に輝く髪の毛が出ていて、この船に乗船する他の者達とは明らかに異なる容姿をしていた。
『ドン!ドン!ドン!!』
「失礼しやす。お客人!船長が呼んでおりやす。すいやせんが、甲板までおいでくだせぇ!!」
突然、勢いよく扉が叩かれると扉の外から声が掛けられた。すると、それまでブツブツ呟いていた色白金髪はゆっくりと顔を上げたかと思うとその顔には愉悦する様な笑みが浮かび、
「漸くこの退屈とオサラバ出来るのかな?僕を呼ぶんだからそれ相応の玩具じゃないと許さないぞ♪」
そう呟きを残すと、軽い足取りで扉を開け部屋を後にするのだった。
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