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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百拾八話 海賊船を追い掛けますが何か!
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「見えた! 右舷四十五度、追走中の僚艦と共に海賊船を発見!!」
突然、頭上からの声に思わず仰ぎ見るその先には、帆柱の頂上付近に設置されている見張り台の上で、右前方に腕を上げて指し示す妖鳥人族(海鳥系?)の姿が見えた。その姿が指し示す海原の先を眺めると蒼い波間の奥に微かな船影らしき物が見え隠れしていた。
「風巖! 僚艦と敵船との距離はどうだ?」
妖鳥人族の声に船倉から慌てて飛び出して来たモービィは、額に手を当てて海原に目をやりながら声を張り上げると、即座に見張り台に居る妖鳥人族(風巖)から、
「僚艦と敵船との距離、極めて至近! 交戦状態に入っている模様!!」
と帰って来た。その声にモービィは大きく舌打ちした。
「チィ! 何をやっとるのだ、単独では敵船との交戦を避け、つかず離れず追走するに留めよと厳命しておいたに!! ドーファン、あの船の船長は誰じゃ!?」
共に船倉から飛び出して来たドーファンを怒鳴りつけたが、
「確かあの船の船長は・・・あ~ぁ、最近船長に抜擢された『宗谷虎太良』でしたね。船長になっての初手柄をと先走ったんでしょう。まぁ、若い船長には有り勝ちな事です。」
平然と答える。
その返答にモービィは眉間に皺を寄せてドーファンを睨み付けるのだが、ドーファンは全く意に反さず、モービィの視線など何処吹く風とばかりに無視をして交戦中の僚船と海賊船をジッと見つめていた。その視線に促される様にモービィも交戦中の二隻の船に視線を戻し、
「間に合えば良いが・・・」
とポツリと溢すと、ドーファンも軽く頷き、
「総員! これより僚艦と交戦中の海賊船撃滅に向かう!!一旦左舷方向に舵を切り迂回するようにして海賊船の頭を押さえる。船足を上げよ!」
海風に負けぬ大音量の号令がドーファンの口から発せられると帆船の全乗組員から一斉に『応!』と声が上がり、それまで風を受けていた中央の帆柱に加え前後に備えられている二枚の帆が即座に広げられると帆一杯に海風を受け、帆船は船足を上げていった。
その様子を俺は感心しながら眺めていると、乗組員の働きに満足そうな表情を浮かべたファレナが、
「流石はモービィ爺の乗る鎮守船隊旗艦の乗組員たち。相変わらず小気味よい働きを見せる♪」
嬉しそうに呟いていた。
三連の帆に海風を受け帆船は、目標である海賊船から一旦離れ左舷方向に大きく迂回をするような航路を取っていたが、帆船の舳先に仁王立ちでジッと何かを見つめていたモービィが何かを見つけたのか大きく手を振るのに合わせて、舵を右舷に切った途端海風を受けていた帆が大きく膨らみ、それまでよりも強い風を受け始めると一気に船足が増して行った。
その急激な増速に思わずたたらを踏む俺やアプロ達。
「お~っと、いきなりなんだ?急に船足が早くなったような・・・」
転ばないようにと体勢を整えながら口からついて出た言葉に、
「すまない、先に教えておくべきだったな。今、モービィ爺の合図と共に帆船が海の流れに乗ったのだ。」
というファレナの言葉に続き何故か紫慧からも、
「それだけじゃなく、海の道に乗る為に舵を切ったのに合わせて風も真後ろからの風を受けるようになったから急激に船足が上がったんだよ。」
と教えてくれたのだが、その紫慧の言葉にファレナは驚きの表情を浮かべ、
「紫慧殿! 貴女は海の流れや海風が分かるのか?!」
と問いただして来た。そのファレナの剣幕に紫慧は驚き及び腰になりながらも、
「せ・精霊達が色々と教えてくれるから多少の事は分かるよ。でも、精霊って結構気まぐれだからね、今回は偶々かな~。」
と苦笑を浮かべると、紫慧の『偶々』という言葉に怪訝な表情を浮かべながらも、
「そうか、偶々か・・・。そうだろうな、モービィ爺も長年海に出て漸く海の流れが読める様になったと言っていたからな。そんな一朝一夕に出来る事では無いか・・・だが、偶々であろうと精霊が教えてくれる事もあるのだな。良い事を聞いた・・」
と、それ以上追及してくる事は無かった。そんなファレナの様子に紫慧はホッと胸を撫で下ろしていたが、肩に乗る炎が紫慧にだけ聞こえるような小さな声で、
「紫慧様! 少し不用意ですよ。精霊術を使う事が出来る妖精族や妖獣人族の者達でも、精霊の方から語り掛けその言葉を理解できる者は少数。しかも、紫慧様の様に属性に係わらず様々な精霊と語り合える者は稀有な存在なのですからご用心下さい。ファレナ殿がそうだとは申しませぬが力を持つ者を囲いたがる為政者は多いのですから。」
と窘めていた。そんな炎の言葉にそんな物なのか?と考えていると、紫慧から離れたファレナが俺の方に歩み寄り、
「ところで、つかぬ事を聞くのだが・・津田殿の頭の上に乗る子虎はもしや賢虎のフウ様ではないか?
実はフウ様とは以前お会いしたことがあったのでご挨拶をと思っていたのだが、御目にかかれる時はいつも津田殿の頭の上で気持ち良さそうに寝ておられるので、声を掛け辛く気を逃していたのだ。それで、せめて確認だけでもと思いいつも頭に乗せている津田殿に尋ねるのだが・・・」
と声を掛けて来た。今まで幾らでも声を掛ける機会ならあっただろうにとファレナの言葉が腑に落ちず、彼女の真意が分からず俺に向ける瞳に目を合わせると、微かだが瞳の奥に怯えのような物が見え隠れしていた。その怯えが何から来るのか分からなかったが、
「確かに今俺の頭の上で寝ている奴が賢虎フェイフォンフウだが、ファレナ殿に何かしでかしたのかコイツ?」
と尋ねると、ファレナはものすごい勢いで首を左右に振って、
「とんでもない! 以前お会いした時に我らの方が粗相をしフウ様を怒らせてしまったのだ。それ以来一度謝罪をと思っていたのだがその機会に恵まれず・・・。
津田殿、今度フウ様が目を覚まされた時に私が『縁に連なりし者が失礼な事を口にし、申し訳なかった』と言っていたと伝えて欲しい」
それだけを告げると、軽く頭を下げモービィの立つ舳先の方へと去って行った。
「ほ~ぉ、なかなかに礼儀正しい娘ではないか。」
ファレナが立ち去ると直ぐに頭の上からポツリと声が聞こえてきた。
「なんだよフウ、起きてたのか? だったらファレナの話しを聞いてやれば良かっただろう、なんでいつも寝たふりをしてるんだ。何があったかは知らないがちょっと失礼だぞ!」
窘める俺の言葉にフウは意に介していないかのように、立ち上がって四肢に力を入れたかと思うと声にならない声を上げて伸びをすると、ヒョイッと頭の上から甲板に飛び降りてトコトコと歩いて行ったかと思うと甲板から落ちないように設置されている手摺の上に飛び乗り、
「驍廣、何を愚図愚図しておるのじゃ? お主はモービィの武威を確認するために船に乗ったのじゃろうが、この風じゃと直に海賊船とやらと追いつく事じゃろう。 早ようぉモービィの近くに行かんか!!」
と逆に怒鳴り付けられてしまった。フウが視線を送る先を見ると、大きく迂回した為に波間の影に姿を消していた筈の乗船している帆船と同じ形の船と、二本のマストを広げたキャラック船と思しき帆船とが並走している姿が間近に迫っていた。
俺は慌てて紫慧とアプロそれにアルディリアには船倉に身を隠すように指示して、一人モービィとファレナが居る帆船の舳先へと走った。
突然、頭上からの声に思わず仰ぎ見るその先には、帆柱の頂上付近に設置されている見張り台の上で、右前方に腕を上げて指し示す妖鳥人族(海鳥系?)の姿が見えた。その姿が指し示す海原の先を眺めると蒼い波間の奥に微かな船影らしき物が見え隠れしていた。
「風巖! 僚艦と敵船との距離はどうだ?」
妖鳥人族の声に船倉から慌てて飛び出して来たモービィは、額に手を当てて海原に目をやりながら声を張り上げると、即座に見張り台に居る妖鳥人族(風巖)から、
「僚艦と敵船との距離、極めて至近! 交戦状態に入っている模様!!」
と帰って来た。その声にモービィは大きく舌打ちした。
「チィ! 何をやっとるのだ、単独では敵船との交戦を避け、つかず離れず追走するに留めよと厳命しておいたに!! ドーファン、あの船の船長は誰じゃ!?」
共に船倉から飛び出して来たドーファンを怒鳴りつけたが、
「確かあの船の船長は・・・あ~ぁ、最近船長に抜擢された『宗谷虎太良』でしたね。船長になっての初手柄をと先走ったんでしょう。まぁ、若い船長には有り勝ちな事です。」
平然と答える。
その返答にモービィは眉間に皺を寄せてドーファンを睨み付けるのだが、ドーファンは全く意に反さず、モービィの視線など何処吹く風とばかりに無視をして交戦中の僚船と海賊船をジッと見つめていた。その視線に促される様にモービィも交戦中の二隻の船に視線を戻し、
「間に合えば良いが・・・」
とポツリと溢すと、ドーファンも軽く頷き、
「総員! これより僚艦と交戦中の海賊船撃滅に向かう!!一旦左舷方向に舵を切り迂回するようにして海賊船の頭を押さえる。船足を上げよ!」
海風に負けぬ大音量の号令がドーファンの口から発せられると帆船の全乗組員から一斉に『応!』と声が上がり、それまで風を受けていた中央の帆柱に加え前後に備えられている二枚の帆が即座に広げられると帆一杯に海風を受け、帆船は船足を上げていった。
その様子を俺は感心しながら眺めていると、乗組員の働きに満足そうな表情を浮かべたファレナが、
「流石はモービィ爺の乗る鎮守船隊旗艦の乗組員たち。相変わらず小気味よい働きを見せる♪」
嬉しそうに呟いていた。
三連の帆に海風を受け帆船は、目標である海賊船から一旦離れ左舷方向に大きく迂回をするような航路を取っていたが、帆船の舳先に仁王立ちでジッと何かを見つめていたモービィが何かを見つけたのか大きく手を振るのに合わせて、舵を右舷に切った途端海風を受けていた帆が大きく膨らみ、それまでよりも強い風を受け始めると一気に船足が増して行った。
その急激な増速に思わずたたらを踏む俺やアプロ達。
「お~っと、いきなりなんだ?急に船足が早くなったような・・・」
転ばないようにと体勢を整えながら口からついて出た言葉に、
「すまない、先に教えておくべきだったな。今、モービィ爺の合図と共に帆船が海の流れに乗ったのだ。」
というファレナの言葉に続き何故か紫慧からも、
「それだけじゃなく、海の道に乗る為に舵を切ったのに合わせて風も真後ろからの風を受けるようになったから急激に船足が上がったんだよ。」
と教えてくれたのだが、その紫慧の言葉にファレナは驚きの表情を浮かべ、
「紫慧殿! 貴女は海の流れや海風が分かるのか?!」
と問いただして来た。そのファレナの剣幕に紫慧は驚き及び腰になりながらも、
「せ・精霊達が色々と教えてくれるから多少の事は分かるよ。でも、精霊って結構気まぐれだからね、今回は偶々かな~。」
と苦笑を浮かべると、紫慧の『偶々』という言葉に怪訝な表情を浮かべながらも、
「そうか、偶々か・・・。そうだろうな、モービィ爺も長年海に出て漸く海の流れが読める様になったと言っていたからな。そんな一朝一夕に出来る事では無いか・・・だが、偶々であろうと精霊が教えてくれる事もあるのだな。良い事を聞いた・・」
と、それ以上追及してくる事は無かった。そんなファレナの様子に紫慧はホッと胸を撫で下ろしていたが、肩に乗る炎が紫慧にだけ聞こえるような小さな声で、
「紫慧様! 少し不用意ですよ。精霊術を使う事が出来る妖精族や妖獣人族の者達でも、精霊の方から語り掛けその言葉を理解できる者は少数。しかも、紫慧様の様に属性に係わらず様々な精霊と語り合える者は稀有な存在なのですからご用心下さい。ファレナ殿がそうだとは申しませぬが力を持つ者を囲いたがる為政者は多いのですから。」
と窘めていた。そんな炎の言葉にそんな物なのか?と考えていると、紫慧から離れたファレナが俺の方に歩み寄り、
「ところで、つかぬ事を聞くのだが・・津田殿の頭の上に乗る子虎はもしや賢虎のフウ様ではないか?
実はフウ様とは以前お会いしたことがあったのでご挨拶をと思っていたのだが、御目にかかれる時はいつも津田殿の頭の上で気持ち良さそうに寝ておられるので、声を掛け辛く気を逃していたのだ。それで、せめて確認だけでもと思いいつも頭に乗せている津田殿に尋ねるのだが・・・」
と声を掛けて来た。今まで幾らでも声を掛ける機会ならあっただろうにとファレナの言葉が腑に落ちず、彼女の真意が分からず俺に向ける瞳に目を合わせると、微かだが瞳の奥に怯えのような物が見え隠れしていた。その怯えが何から来るのか分からなかったが、
「確かに今俺の頭の上で寝ている奴が賢虎フェイフォンフウだが、ファレナ殿に何かしでかしたのかコイツ?」
と尋ねると、ファレナはものすごい勢いで首を左右に振って、
「とんでもない! 以前お会いした時に我らの方が粗相をしフウ様を怒らせてしまったのだ。それ以来一度謝罪をと思っていたのだがその機会に恵まれず・・・。
津田殿、今度フウ様が目を覚まされた時に私が『縁に連なりし者が失礼な事を口にし、申し訳なかった』と言っていたと伝えて欲しい」
それだけを告げると、軽く頭を下げモービィの立つ舳先の方へと去って行った。
「ほ~ぉ、なかなかに礼儀正しい娘ではないか。」
ファレナが立ち去ると直ぐに頭の上からポツリと声が聞こえてきた。
「なんだよフウ、起きてたのか? だったらファレナの話しを聞いてやれば良かっただろう、なんでいつも寝たふりをしてるんだ。何があったかは知らないがちょっと失礼だぞ!」
窘める俺の言葉にフウは意に介していないかのように、立ち上がって四肢に力を入れたかと思うと声にならない声を上げて伸びをすると、ヒョイッと頭の上から甲板に飛び降りてトコトコと歩いて行ったかと思うと甲板から落ちないように設置されている手摺の上に飛び乗り、
「驍廣、何を愚図愚図しておるのじゃ? お主はモービィの武威を確認するために船に乗ったのじゃろうが、この風じゃと直に海賊船とやらと追いつく事じゃろう。 早ようぉモービィの近くに行かんか!!」
と逆に怒鳴り付けられてしまった。フウが視線を送る先を見ると、大きく迂回した為に波間の影に姿を消していた筈の乗船している帆船と同じ形の船と、二本のマストを広げたキャラック船と思しき帆船とが並走している姿が間近に迫っていた。
俺は慌てて紫慧とアプロそれにアルディリアには船倉に身を隠すように指示して、一人モービィとファレナが居る帆船の舳先へと走った。
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