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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百五拾七話 乱が起こってしまいましたが何か! その八(終結)
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「何を気の抜けるような声を上げておるのじゃ? 目の前の光景を目の当たりにして争おうなどと考える者が早々おる訳があるまい。
どうやら自分が何をしでかしたのかわかっておらんようじゃのぉ鍛冶師殿は。」
呆れ顔で、そんな事を言いながら近づいてくるモーヴィに俺は渋面をつくると、今度は両手を挙げ直立不動のままでいる海兵と海賊の向こう側から、眉間に皺を寄せてふて腐れた様な顔をしたファレナが右手に持った扇(中華風)で左の掌をパシパシと当てながらゆっくりと歩いて近づいて来た。
「モーヴィ爺、ご苦労さま。詳しい事は後で話すけれど、今回の事でレヴィアタン街内も周辺海域もしばらくの間は静かになりそうだわ。それから鍛冶師殿も、ご協力に感謝します。
しかし、これはあまりにも・・・まぁヒルダ殿や賢虎様からそれとなく聞き、アルバート様からも書簡をいただいてはいましたが、私達の予測を大幅に超える力量だったのですね。
はぁ~・・」
ジト目を向けられる事となった俺は、ファレナの言葉と表情に冷や汗が背中を流れた。そんな俺の渋面と反応に、ファレナは少し溜飲が下がったのか表情を弛める。
「実を言うと、今回のような騒ぎが起こる事は随分前から予想していたのよ。それで、一罰百戒じゃないけど今回は徹底的に叩き潰して、同じ様な騒ぎを起こそうなんて考えを持たない様にしようと思っていたんだけど、流石に武装蜂起した相手に手を出す訳にはいかないから・・・」
と、隠していた思惑を吐露し始めたのだが、そんなファレナの言葉を遮る様に声が、
「まだだ、まだ諦めぬぞぉ!
この街は元は我らの街だったのだ、それを騙し奪い取ったレヴィアタン家をはじめとした海竜人族の手から取り戻さねばならんのだ!!
何をしている!武具を拾えぇ!簒奪者から我ら魚人族の手に『街』を取り戻すのだぁ~!!」
響き渡る声の主へと目を向けると、そこには恰幅が良い、服や甲冑なども他の海賊とは一目で違うと分かる様な豪奢な物を身に着けた一人も魚人族の初老の男が、目を血走らせながら腰にさげていたと思われる九鈎刀(呉鉤=蛮刀の一種で幅広の湾曲した刀身の峰が鋸歯の様な形状になっていて、その九つの刃の先端に飾り房が下げられている)を振り上げてていた。
そして、その周りにいる海賊たちも一癖も二癖もある様な面構えの男女四名がそれぞれの得物を構えて初老の男に賛同する様に、構えを取る。そして、海兵と海賊とが入り乱れている一角からも・・
「何をしてるんだい! 首領トゥラバの檄が聞こえなかったのかい!?さっさと武具を拾え!簒奪者に加担する奴らを排除するんだよぉ!!」
声を上げ、手にもった倭刀を振るい近くにいた海兵へと斬りかかって行く女海賊に、降伏の意思を示していた海賊たちも、率いる者には逆ららえないのか死を覚悟し絶望の光を目に宿しながら足元の転がる武具へと手を伸ばし・・・
「いい加減にしな! 往生際が悪いんだよ、既に勝敗は決してるんだ。これ以上無駄な人死にを出してどうするつもりだい。
降伏の意思があるならそのまま動くんじゃないよ!
どうしても納得がいかないってんなら、直接聞いてやろじゃないか。前に出なぁ!!」
周囲にの空気を震わすほどのファレナの怒声が響き渡った。その声に、一旦は降伏の意思を示していたものの、首領と呼ばれた初老の男からの檄と女海賊からの言葉で嫌々ながらも武具に手を伸ばそうとした海賊たちの手がピタッと止り、再び頭上に掲げられた。
そんな配下の海賊たちに初老の男は、大きく目を見開き驚きと困惑の表情を浮かべ、倭刀を振るう女海賊は狂気を孕んだ甲高い叫び声をあげて周囲にいる手を掲げる海賊に斬りかかろうとした瞬間、何処からともなく飛んで来た矢に肩を射貫かれて倭刀を手放して跪いた。
その様子を怯えた表情で見ていた一人の海賊の足元から伸びていた影が、何の前触れも無く揺らめいたかと思うと立ち上がり、次の瞬間には人の姿形をとり肩から血を流す女海賊の腕を掴むと有無を言わさず拘束していた。
射撃から拘束までの一連の流れに、海賊たちだけで海兵たちも言葉を失っていたが、俺にはそれが誰によって行われたのか分かっていたため女海賊を拘束している男の方へと歩きながら声を掛けた。
「よ~ぉ、お疲れ。絶妙な間での登場だな、ルークス。リリス。」
俺の声に射撃位置である鎮守府の屋根の上で、弓を持ったてを高く掲げて大きく振るリリスと、女海賊を拘束したまま被っていたフードを外し少し誇らしげに微笑むルークス。
「お、おい。あれはダークエルフか?・・」
「まさか・・あいつらの縄張りは東の森だろう。なんでこんな所に居るんだよ・・」
などと周囲に居る者同士で囁き合う声があちらこちらから聞こえてきた、が俺はそんな事は無視してそのままズンズンとルークスの元に向かって歩いて行くと、今度は岸壁を離れて自分達の方に近づいてくる俺を見て、引き攣り恐怖する表情を浮かべた海賊と海兵が俺の前を開けてゆき、ルークスまで続く一本道が出来ていた。
俺は目の前に現れた道をそのまま進みルークスの元に辿り着くと、ポンとルークスの肩を叩きながら、
「しかし、一番おいしい場面をルークスとリリスに取られたようだな。まさか狙ってたのか?」
とニヤリと笑いながら語り掛けると、ルークスは首を左右に激しく動かして、
「いやいや、とんでもない。たまたまだ。俺とリリスの二人だ先に状況の確認をしなければと港の方に来てみれば、大勢の海賊と海兵が争っている中、驍廣殿が大きな破壊音と共に海賊船を沈めたところに出くわしたんだ。
それで、その後の流れがどうなるか身を隠して様子を窺っていたんだが、折角収まりかけた争いを再び起こそうとしていたこいつの動きを封じようとしただけで、大勢は既に決していただろ?
それにほら!」
そういってルークスの視線の動きに合わせ、港から街へと続く街路へと視線を動かすと、
「おーぃ、驍廣~ぉ♪」
と元気よく手を振る紫慧を先頭に、アプロに真安、フクスなどの見知った顔ぶれの面々からポリティスなどのレヴィアタン街の住民らしき者達が、大挙してこちらへ歩いてくるのが見えた。
「「なっ!」」
紫慧の俺を呼ぶ声が聞こえたのだろう、争いが行われていた場所にはそぐわない明るい声にファレナを始めその場にいた物の視線が一斉に街から歩いてくる一団へ向けられると、奇しくも争う両陣営の指揮官である二人の口から同じ言葉が驚きと共に発せられた。もっとも、その言葉に続きは両社で全く違っていたが・・・
「ポリティス! 街に者達を争いの場に連れて来るとは何事だ!!気の場は危険だ直ぐに引き返せ。」
「な、なぜだ・・なぜ街の者がファレナを中心に集う!?
間違っていたというのか?これまで魚人族の為に昔の自由な街を取り戻そうとしていた儂は、間違っていたというのか・・・」
紫慧を先頭に真っ直ぐに争いの場にやって来た街の者達は、そのまま真っ直ぐファレナの元に集まり、その光景をみた首領トゥラバは愕然とした表情を浮かべその場に崩れ落ちた。
かくして、レヴィアタン街を騒させた衛兵団の反乱と海賊の襲撃は幕を閉じたのだった。
どうやら自分が何をしでかしたのかわかっておらんようじゃのぉ鍛冶師殿は。」
呆れ顔で、そんな事を言いながら近づいてくるモーヴィに俺は渋面をつくると、今度は両手を挙げ直立不動のままでいる海兵と海賊の向こう側から、眉間に皺を寄せてふて腐れた様な顔をしたファレナが右手に持った扇(中華風)で左の掌をパシパシと当てながらゆっくりと歩いて近づいて来た。
「モーヴィ爺、ご苦労さま。詳しい事は後で話すけれど、今回の事でレヴィアタン街内も周辺海域もしばらくの間は静かになりそうだわ。それから鍛冶師殿も、ご協力に感謝します。
しかし、これはあまりにも・・・まぁヒルダ殿や賢虎様からそれとなく聞き、アルバート様からも書簡をいただいてはいましたが、私達の予測を大幅に超える力量だったのですね。
はぁ~・・」
ジト目を向けられる事となった俺は、ファレナの言葉と表情に冷や汗が背中を流れた。そんな俺の渋面と反応に、ファレナは少し溜飲が下がったのか表情を弛める。
「実を言うと、今回のような騒ぎが起こる事は随分前から予想していたのよ。それで、一罰百戒じゃないけど今回は徹底的に叩き潰して、同じ様な騒ぎを起こそうなんて考えを持たない様にしようと思っていたんだけど、流石に武装蜂起した相手に手を出す訳にはいかないから・・・」
と、隠していた思惑を吐露し始めたのだが、そんなファレナの言葉を遮る様に声が、
「まだだ、まだ諦めぬぞぉ!
この街は元は我らの街だったのだ、それを騙し奪い取ったレヴィアタン家をはじめとした海竜人族の手から取り戻さねばならんのだ!!
何をしている!武具を拾えぇ!簒奪者から我ら魚人族の手に『街』を取り戻すのだぁ~!!」
響き渡る声の主へと目を向けると、そこには恰幅が良い、服や甲冑なども他の海賊とは一目で違うと分かる様な豪奢な物を身に着けた一人も魚人族の初老の男が、目を血走らせながら腰にさげていたと思われる九鈎刀(呉鉤=蛮刀の一種で幅広の湾曲した刀身の峰が鋸歯の様な形状になっていて、その九つの刃の先端に飾り房が下げられている)を振り上げてていた。
そして、その周りにいる海賊たちも一癖も二癖もある様な面構えの男女四名がそれぞれの得物を構えて初老の男に賛同する様に、構えを取る。そして、海兵と海賊とが入り乱れている一角からも・・
「何をしてるんだい! 首領トゥラバの檄が聞こえなかったのかい!?さっさと武具を拾え!簒奪者に加担する奴らを排除するんだよぉ!!」
声を上げ、手にもった倭刀を振るい近くにいた海兵へと斬りかかって行く女海賊に、降伏の意思を示していた海賊たちも、率いる者には逆ららえないのか死を覚悟し絶望の光を目に宿しながら足元の転がる武具へと手を伸ばし・・・
「いい加減にしな! 往生際が悪いんだよ、既に勝敗は決してるんだ。これ以上無駄な人死にを出してどうするつもりだい。
降伏の意思があるならそのまま動くんじゃないよ!
どうしても納得がいかないってんなら、直接聞いてやろじゃないか。前に出なぁ!!」
周囲にの空気を震わすほどのファレナの怒声が響き渡った。その声に、一旦は降伏の意思を示していたものの、首領と呼ばれた初老の男からの檄と女海賊からの言葉で嫌々ながらも武具に手を伸ばそうとした海賊たちの手がピタッと止り、再び頭上に掲げられた。
そんな配下の海賊たちに初老の男は、大きく目を見開き驚きと困惑の表情を浮かべ、倭刀を振るう女海賊は狂気を孕んだ甲高い叫び声をあげて周囲にいる手を掲げる海賊に斬りかかろうとした瞬間、何処からともなく飛んで来た矢に肩を射貫かれて倭刀を手放して跪いた。
その様子を怯えた表情で見ていた一人の海賊の足元から伸びていた影が、何の前触れも無く揺らめいたかと思うと立ち上がり、次の瞬間には人の姿形をとり肩から血を流す女海賊の腕を掴むと有無を言わさず拘束していた。
射撃から拘束までの一連の流れに、海賊たちだけで海兵たちも言葉を失っていたが、俺にはそれが誰によって行われたのか分かっていたため女海賊を拘束している男の方へと歩きながら声を掛けた。
「よ~ぉ、お疲れ。絶妙な間での登場だな、ルークス。リリス。」
俺の声に射撃位置である鎮守府の屋根の上で、弓を持ったてを高く掲げて大きく振るリリスと、女海賊を拘束したまま被っていたフードを外し少し誇らしげに微笑むルークス。
「お、おい。あれはダークエルフか?・・」
「まさか・・あいつらの縄張りは東の森だろう。なんでこんな所に居るんだよ・・」
などと周囲に居る者同士で囁き合う声があちらこちらから聞こえてきた、が俺はそんな事は無視してそのままズンズンとルークスの元に向かって歩いて行くと、今度は岸壁を離れて自分達の方に近づいてくる俺を見て、引き攣り恐怖する表情を浮かべた海賊と海兵が俺の前を開けてゆき、ルークスまで続く一本道が出来ていた。
俺は目の前に現れた道をそのまま進みルークスの元に辿り着くと、ポンとルークスの肩を叩きながら、
「しかし、一番おいしい場面をルークスとリリスに取られたようだな。まさか狙ってたのか?」
とニヤリと笑いながら語り掛けると、ルークスは首を左右に激しく動かして、
「いやいや、とんでもない。たまたまだ。俺とリリスの二人だ先に状況の確認をしなければと港の方に来てみれば、大勢の海賊と海兵が争っている中、驍廣殿が大きな破壊音と共に海賊船を沈めたところに出くわしたんだ。
それで、その後の流れがどうなるか身を隠して様子を窺っていたんだが、折角収まりかけた争いを再び起こそうとしていたこいつの動きを封じようとしただけで、大勢は既に決していただろ?
それにほら!」
そういってルークスの視線の動きに合わせ、港から街へと続く街路へと視線を動かすと、
「おーぃ、驍廣~ぉ♪」
と元気よく手を振る紫慧を先頭に、アプロに真安、フクスなどの見知った顔ぶれの面々からポリティスなどのレヴィアタン街の住民らしき者達が、大挙してこちらへ歩いてくるのが見えた。
「「なっ!」」
紫慧の俺を呼ぶ声が聞こえたのだろう、争いが行われていた場所にはそぐわない明るい声にファレナを始めその場にいた物の視線が一斉に街から歩いてくる一団へ向けられると、奇しくも争う両陣営の指揮官である二人の口から同じ言葉が驚きと共に発せられた。もっとも、その言葉に続きは両社で全く違っていたが・・・
「ポリティス! 街に者達を争いの場に連れて来るとは何事だ!!気の場は危険だ直ぐに引き返せ。」
「な、なぜだ・・なぜ街の者がファレナを中心に集う!?
間違っていたというのか?これまで魚人族の為に昔の自由な街を取り戻そうとしていた儂は、間違っていたというのか・・・」
紫慧を先頭に真っ直ぐに争いの場にやって来た街の者達は、そのまま真っ直ぐファレナの元に集まり、その光景をみた首領トゥラバは愕然とした表情を浮かべその場に崩れ落ちた。
かくして、レヴィアタン街を騒させた衛兵団の反乱と海賊の襲撃は幕を閉じたのだった。
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