ソムリエ相談役

日向コタ

文字の大きさ
上 下
12 / 12

12.親子

しおりを挟む
 最近、親子でワインを飲みに来たお客さんがいた。娘が20歳になったばかりということで、お父さんが嬉しくなって一緒に飲みに来たとのこと。
 娘さんはお父さんにすすめられた赤ワインを一口飲むと、「苦っ!」と顔をしかめた。

 「かおりにはまだ早かったか。でもな、だんだん美味しく感じるようになるんだよこれが。」

 「いつ頃から美味しく感じるかなー?」

 「どうだろう。お父さんは社会人になって仕事で疲れはてた時、初めてビールの美味しさに気づいたんだ。ワインの味がわかるようになったのは、ずいぶん後かもな。」

 「それじゃ私がワインバーに来るのは早かったんじゃないの?」

 「いや、ワインみたいな味の違いを楽しむ飲み方ができると、お酒ってのは楽しいと思うんだ。ばかみたいに騒ぎながら飲むのもいいけど、かおりにはもっと楽しい飲み方を知ってもらいたくてね…。」

 「父さん、私を心配してるんでしょ。サークルで飲み会とかあると、いつも帰ってから質問攻めにあうし。」

 「ま、そんなとこだな。」そう言うと、お父さんは赤ワインの香りをかぎ、舌でころがすように味わった。

 「かおりさん、先日は20歳のお誕生日おめでとうございます。こちらは、お父様から預かっていた赤ワインです。どうぞ。」ケイはそう言うと、イタリア・バルバレスコをかおりさんに手渡した。

 「え、なに私の?!いつの間に…。」

 「そちらのワインはワインの女王と呼ばれます。お父様がわざわざかおりさんの生まれた年のヴィンテージの1本を、ご用意されました。」

 「ま、いつかそのワインの味がわかるようになることだな。」お父さんは、照れ隠しをするようにワインに口をつけた。

 「お父さんのこういうとこ、好きだよ。」かおりはそう言うと、ワインをそっとカバンにしまった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~

新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。 佐倉 かなた 長女の影響でエロゲを始める。 エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。 口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM 美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな 橋本 紗耶香 ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。 橋本 遥 ど天然。シャイ ピュアピュア 高円寺希望 お嬢様 クール 桑畑 英梨 好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク 高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才 佐倉 ひより かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。

狐小路食堂 ~狐耳少女の千年レシピ~

無才乙三
キャラ文芸
繁華街から外れた暗い暗い路地の奥にその店はある。 店の名は『狐小路食堂』 狐耳の少女が店主をしているその飲食店には 毎夜毎晩、動物やあやかし達が訪れ……? 作者:無才乙三(@otozoumusai)表紙イラスト:白まめけい(@siromamekei) ※カクヨムにて2017年1月から3月まで連載していたグルメ小説のリメイク版です。 (主人公を男性から少女へと変更)

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

『遺産相続人』〜『猫たちの時間』7〜

segakiyui
キャラ文芸
俺は滝志郎。人に言わせれば『厄介事吸引器』。たまたま助けた爺さんは大富豪、遺産相続人として滝を指名する。出かけた滝を待っていたのは幽霊、音量、魑魅魍魎。舞うのは命、散るのはくれない、引き裂かれて行く人の絆。ったく人間てのは化け物よりタチが悪い。愛が絡めばなおのこと。おい、周一郎、早いとこ逃げ出そうぜ! 山村を舞台に展開する『猫たちの時間』シリーズ7。

つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して♡-

halsan
キャラ文芸
超限界集落の村役場に一人務める木野虚(キノコ)玄墨(ゲンボク)は、ある夏の日に、宇宙から飛来した地球外生命体を股間に受けてしまった。 その結果、彼は地球外生命体が惑星を支配するための「胞子力エネルギー」を三つ目の「きんたま」として宿してしまう。 その能力は「無から有」 最初に現れたのは、ゲンボク愛用のお人形さんから生まれた「アリス」 さあ限界集落から発信だ!

群青の空

ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
キャラ文芸
十年前―― 東京から引っ越し、友達も彼女もなく。退屈な日々を送り、隣の家から聴こえてくるピアノの音は、綺麗で穏やかな感じをさせるが、どこか腑に落ちないところがあった。そんな高校生・拓海がその土地で不思議な高校生美少女・空と出会う。 そんな彼女のと出会い、俺の一年は自分の人生の中で、何よりも大切なものになった。 ただ、俺は彼女に……。 これは十年前のたった一年の青春物語――

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

Aコードコンチェルト

ツヅラ
キャラ文芸
 能力者教育機関“ヴェーベ”の、北東教育機関の最上級生であるA級能力者チームは、とにもかくに、A級能力者の使命である、怪人を倒すことにやる気がなかった。  おかげで、貢献度はぶっちぎりの最下位。  その日も、怪人が現れたが、いつも通り、やる気もなく出撃する予定もなかった。だが、顧問のクビがかかっているという話を聞き、慌てるように、怪人を倒しに向かった。そして、増殖する新種の怪人と退治することになった。  その日、ヴェーベを訪れていたルーチェとその父、ルシファエラは、怪人に襲われ、ガレキの下敷きとなった。  二人は、近くにいた能力者に助けられ、一命を取り留めたルシファエラは、その時、助けてもらった能力者に、ルーチェと、あるデータを帝国本土まで無事に運ぶことを依頼することにした。  初めて帝国本土にやってきた能力者たちは、そこである陰謀と出会うのだった。 ※小説家になろうにアップしたものの編集版です

処理中です...