ソムリエ相談役

日向コタ

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1.ワインバー「HIBIKI」オープン

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 東京の新宿飲み屋街の片隅で、3年前にワインバー「HIBIKI」はオープンした。マスターのケイが一人で経営するお店で、ケイの人柄や、ワインの味を求めて様々なお客さんが来店する。店内はこじんまりとしており、カウンター3席のみである。

 ケイは元々一流ホテルのレストランでソムリエとして働いていたが定年退職し、念願のワインバー「HIBIKI」をオープンした。HIBIKIの名前の由来は単純である。元カノの名前だ。
 ケイにはホテルソムリエ時代に彼女がいた。名前は響さんと言った。彼女とは5年ほどお付き合いし、結婚も視野に入れていたが、そんな時に彼女の浮気が発覚した。話し合いの結果別れることになったのだが、ケイは彼女に相当惚れ込んでいたため、2年ほど失恋のショックから立ち直ることができず、仕事に没頭することだけが唯一の忘れられる方法だった。
 そんな失恋のショックも長い時の流れが解決してくれたが、ケイに新たな恋人ができることはなかった。お人好しで誰からも好かれるタイプの男性だが、「恋愛対象」として見られることがなかなかないようだ。
 結局、60歳で定年を迎えるまで独り身を貫いたケイは、第二の人生としてワインバーをオープンした。事業としての成功ではなく、お店を構えることで訪れてくる色々なお客さんと話をしたい、ワインを楽しんでもらいたいという気持ちから、ワインバーのオープンを決めたのだ。

 HIBIKIは夜20時に開店し、翌朝5時に閉店する。夜遅くも営業しているため、大概はすでに何処かで飲んできたお客さんだ。しかし、バリバリ夜まで働くサラリーマンが仕事終わりに飲みに来たりもする。HIBIKIはそんな人たちの「心の拠り所」となっていた。
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