最弱職な彼にも栄光あれ!

夜ヶ崎 雪

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第1章 銀狼族の落ちこぼれ

義理の妹

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 現在、我が家の夕飯の食卓には、重苦しい空気が漂っていた。

「ハルト、アリスから聞いたぞ。生徒に『ダークパスト』使ったらしいじゃないか」
「実害は無いとはいえ、どうなのかしら……人生の中で一番恥ずかしい出来事を強制的に思い出させる、なんて……」

 両親が渋い表情でそんなことを言ってくる。
 途中で2人、早退してしまったが、初日に伝えるべきことは大体伝えていたから、そこは大丈夫だろう。あの後、別に特に何かした訳でもないし。

「いやでもさ、銀狼族の子供ってのは特に躾を厳すべきだと思うんだよ。なんたって、子供の内から凄い力を持つことになるんだからさ」
「……まぁ、一理あるな」
「そうねぇ……ハルトもアリスも少し甘やかし過ぎて、こんなことになってしまったし……」
「「ごめんなさい」」

 母さんの可哀想なものを見る目が辛いです。
 俺がその視線からなんとか逃がれようと身じろぎをしていると。

「ーーところで、お兄ちゃん。今日ミーナさんにお兄ちゃんって呼ばれてたよね? 義理の妹は私一人じゃ足りなかったの?」

 アリスが光を失った目で無表情のまま、こちらに顔を向ける。こっわ!

「まあまあ、アリスがそんなにお兄ちゃん大好きっ娘だったとは」
「ベ、別に好きとかじゃないから! ちょっと妹として気になっただけで……」
「ふふ、アリスったら赤くなっちゃって。ねぇ、どうかしらハルト。アリスが3年後に学校を卒業したら、そのままアリスのこと貰ってくれないかしら?」
「何言ってるの、お母さん!? も、もう……本当に……まったく……」

 アリスは顔をほんのり赤く染めながら、そわそわと落ち着かない様子で両手の指を絡ませながら、ちらちらとこっちに視線を送ってくる。
 確かに、3年後アリスが無事学校を卒業出来れば、その時は15歳。この国の法律では15で結婚出来る筈だから、ちょうどアリスは結婚出来る歳になる計算だ。

「……あー、でも俺、将来可愛い貴族の娘と結婚するつもりだからなぁ。あ、そうだアリス、愛人で我慢してくれないか?」
「最低! お兄ちゃん、さいってい!!」

 ダメか。
 血の繋がらない妹と結婚なんて、誰もが羨む状況だが、ままならないものだ。

 まあ、ミーナのお兄ちゃん呼びについては誤魔化せたしいっか。
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