君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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変化

おひさま

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「なんかあったのか。」
 私が話を切り出せずにいると、佐伯がそう声を掛けてくれた。
「うん、どこから話せばいいのか分からないほど色々あった。」
「まあ、まだお日様は照ってますし、時間はいくらでもあるので、ね。話しやすいところから順にどうぞ。ていうか、まず話したくないなら話さなくていいんだぞ。強要なんてしないから。」
「うん。」
 私は、少しずつ話しはじめた。
 話終わる頃には夕日が鮮やかに、煌びやかに落ちていた。
 雲一つない空は、佐伯みたいだと思った。
「重すぎるね。ごめんね。」
「いいや。困っていたのに助けになれなくてごめん。これからまた話したくなったら呼んでな。」
 佐伯の言葉ひとつひとつが私の心に滲んでいった。
 その感覚に安堵感を覚えた。
「あら、千流さんじゃない。」
「っ…!」
「こんにちは。こちらの男性は?」
「佐伯理人です。あ、里村とは古い友達って感じですかね。こんにちは。」
「今日もカプチーノをいただこうかしら。千流さん、理人くんも、またね。」
「さようなら。」
 カプチーノ。
 次は私も頼んでみようと思った。
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