21 / 26
変化
涙
しおりを挟む
「じゃあ、和門。」
「うん。」
「和門は何で同棲しようって言ったの。望んだ人って、どういうことだったの。」
『里村千流さんでしょ。僕が望んだ人だ。』
私はあの言葉を良く覚えている。忘れてなどいない。
「一目惚れだったんだ。」
「嘘言わないでよ。あのとき、楠さんと関係あるじゃない。」
「怖かった。」
「え。」
つい間髪入れてしまった。
「伊頼を失って、また一人になるのが怖かった。だから、代わりを探していた。それで、君をみつけた。」
「じゃあ、私は伊頼さんの代役なの。」
「そんなつもりじゃない。千流は千流。」
私は何も言えなかった。
「じゃあ。じゃあ。」
私は俯くだけだった。そこから先が言葉にならなかった。
泣きたくなかったのに、涙は留めなく溢れてきて、ぽたぽたとテーブルの上に落ちた。
涙が滲む世界を見ながらも、コーヒーの上に一粒涙が落ちたのは、嫌にはっきりと見えた。
「結局私はその程度なんだね。」
嫌味しか言えなかった。
セックスのことも、電話のことも、まだまだ言うことはいくらでもあったはずなのに。
他に言葉は出てこなかった。
「うん。」
「和門は何で同棲しようって言ったの。望んだ人って、どういうことだったの。」
『里村千流さんでしょ。僕が望んだ人だ。』
私はあの言葉を良く覚えている。忘れてなどいない。
「一目惚れだったんだ。」
「嘘言わないでよ。あのとき、楠さんと関係あるじゃない。」
「怖かった。」
「え。」
つい間髪入れてしまった。
「伊頼を失って、また一人になるのが怖かった。だから、代わりを探していた。それで、君をみつけた。」
「じゃあ、私は伊頼さんの代役なの。」
「そんなつもりじゃない。千流は千流。」
私は何も言えなかった。
「じゃあ。じゃあ。」
私は俯くだけだった。そこから先が言葉にならなかった。
泣きたくなかったのに、涙は留めなく溢れてきて、ぽたぽたとテーブルの上に落ちた。
涙が滲む世界を見ながらも、コーヒーの上に一粒涙が落ちたのは、嫌にはっきりと見えた。
「結局私はその程度なんだね。」
嫌味しか言えなかった。
セックスのことも、電話のことも、まだまだ言うことはいくらでもあったはずなのに。
他に言葉は出てこなかった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。


キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

すれ違いのバレンタイン
神村結美
恋愛
高校2年生の美織は、勇気を出して好きな彼にチョコレートを渡すことにした。直接渡す勇気はなく、彼の机の中に入れた。『好きです』のメッセージを添えて。
机の中のチョコレートに気づいた智は、放課後に美織のところに向かう。
バレンタインの日に起こるプチすれ違いのお話。
※本編は、前中後編の3話で完結してます。
その後についての番外編もあります。
「小説家になろう」でも投稿しています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる