君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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変化

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「じゃあ、和門。」
「うん。」
「和門は何で同棲しようって言ったの。望んだ人って、どういうことだったの。」
『里村千流さんでしょ。僕が望んだ人だ。』
 私はあの言葉を良く覚えている。忘れてなどいない。
「一目惚れだったんだ。」


「嘘言わないでよ。あのとき、楠さんと関係あるじゃない。」
「怖かった。」
「え。」
 つい間髪入れてしまった。
「伊頼を失って、また一人になるのが怖かった。だから、代わりを探していた。それで、君をみつけた。」
「じゃあ、私は伊頼さんの代役なの。」
「そんなつもりじゃない。千流は千流。」
 私は何も言えなかった。
「じゃあ。じゃあ。」
 私は俯くだけだった。そこから先が言葉にならなかった。
 泣きたくなかったのに、涙は留めなく溢れてきて、ぽたぽたとテーブルの上に落ちた。
 涙が滲む世界を見ながらも、コーヒーの上に一粒涙が落ちたのは、嫌にはっきりと見えた。
「結局私はその程度なんだね。」
 嫌味しか言えなかった。
 セックスのことも、電話のことも、まだまだ言うことはいくらでもあったはずなのに。
 他に言葉は出てこなかった。
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