君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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変化

やっと

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 リビングに戻ると、彼がコーヒーを淹れていてくれた。二つのカップからは湯気がたっていた。
「和門、お風呂どうぞ。」
「うん。」
 同棲をしているからといって、必ずしも二人の時間が多くあるわけではない。結構一人の時間が長く、案外孤独を感じることも多くある。
 私は、今はボブ程度の長さになった髪の毛を乾かして待つことにした。
 20分程度で、彼はお風呂からあがってきた。リビングのソファーに腰掛けて、話を始めた。
「なんで、伊頼のことを?」
「それよりも先に髪の毛乾かしたら。」
「今日くらい自然乾燥でも構わない。そんなことより、今はこっちの話をしよう。」
 そう言うなら、もっと早く教えてくれても良かったじゃない。と、感じるのは、私だけだろうか。
「楠さん、今日バイト先に来たの。名前だけ名乗って、カプチーノを頼んで、帰って行ったわ。」
 色々と聞きたいことがあったけれど、質問攻めをしてしまっては、嫌われると思った。だから、あの時みたいに至って私は平然としてますよ、といった調子で事実だけを述べた。
 彼がコーヒーを一口飲んだ。目線を向ける先に困っていたから、彼のカップをただみつめていた。
 今、彼の顔を見る勇気はない。
「私、全部知りたいよ。教えてほしい。」
「全部話して、幻滅されるのが怖い。嫌われてしまいそう。」
 彼が目線を下に向けたのが分かった。
 私は、自分の顔が火照ってきたのを感じた。
 ああ、今私怒っているのか。
 何言ってんだこいつ。
 好きすぎてどうすればいいの。
 もう冷静沈着な里村千流はやめよう。
 今日くらい感情をぶつけてもいいだろう。
 気付いたら、私は立ち上がっていた。
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