18 / 26
変化
やっと
しおりを挟む
リビングに戻ると、彼がコーヒーを淹れていてくれた。二つのカップからは湯気がたっていた。
「和門、お風呂どうぞ。」
「うん。」
同棲をしているからといって、必ずしも二人の時間が多くあるわけではない。結構一人の時間が長く、案外孤独を感じることも多くある。
私は、今はボブ程度の長さになった髪の毛を乾かして待つことにした。
20分程度で、彼はお風呂からあがってきた。リビングのソファーに腰掛けて、話を始めた。
「なんで、伊頼のことを?」
「それよりも先に髪の毛乾かしたら。」
「今日くらい自然乾燥でも構わない。そんなことより、今はこっちの話をしよう。」
そう言うなら、もっと早く教えてくれても良かったじゃない。と、感じるのは、私だけだろうか。
「楠さん、今日バイト先に来たの。名前だけ名乗って、カプチーノを頼んで、帰って行ったわ。」
色々と聞きたいことがあったけれど、質問攻めをしてしまっては、嫌われると思った。だから、あの時みたいに至って私は平然としてますよ、といった調子で事実だけを述べた。
彼がコーヒーを一口飲んだ。目線を向ける先に困っていたから、彼のカップをただみつめていた。
今、彼の顔を見る勇気はない。
「私、全部知りたいよ。教えてほしい。」
「全部話して、幻滅されるのが怖い。嫌われてしまいそう。」
彼が目線を下に向けたのが分かった。
私は、自分の顔が火照ってきたのを感じた。
ああ、今私怒っているのか。
何言ってんだこいつ。
好きすぎてどうすればいいの。
もう冷静沈着な里村千流はやめよう。
今日くらい感情をぶつけてもいいだろう。
気付いたら、私は立ち上がっていた。
「和門、お風呂どうぞ。」
「うん。」
同棲をしているからといって、必ずしも二人の時間が多くあるわけではない。結構一人の時間が長く、案外孤独を感じることも多くある。
私は、今はボブ程度の長さになった髪の毛を乾かして待つことにした。
20分程度で、彼はお風呂からあがってきた。リビングのソファーに腰掛けて、話を始めた。
「なんで、伊頼のことを?」
「それよりも先に髪の毛乾かしたら。」
「今日くらい自然乾燥でも構わない。そんなことより、今はこっちの話をしよう。」
そう言うなら、もっと早く教えてくれても良かったじゃない。と、感じるのは、私だけだろうか。
「楠さん、今日バイト先に来たの。名前だけ名乗って、カプチーノを頼んで、帰って行ったわ。」
色々と聞きたいことがあったけれど、質問攻めをしてしまっては、嫌われると思った。だから、あの時みたいに至って私は平然としてますよ、といった調子で事実だけを述べた。
彼がコーヒーを一口飲んだ。目線を向ける先に困っていたから、彼のカップをただみつめていた。
今、彼の顔を見る勇気はない。
「私、全部知りたいよ。教えてほしい。」
「全部話して、幻滅されるのが怖い。嫌われてしまいそう。」
彼が目線を下に向けたのが分かった。
私は、自分の顔が火照ってきたのを感じた。
ああ、今私怒っているのか。
何言ってんだこいつ。
好きすぎてどうすればいいの。
もう冷静沈着な里村千流はやめよう。
今日くらい感情をぶつけてもいいだろう。
気付いたら、私は立ち上がっていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる