君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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変化

学生生活

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 「おはよう。」
 「おはよう、千流。」
 今日も彼の寝癖は爆発していて、見慣れたものなのに、つい笑みが零れてしまう。私は、何事もないかのように平静を取り繕うことももう手慣れたものになった。セックス後も、あの彼を見ても、同じようにいた。
 もしかしたら彼には悟られていたかもしれないが、触れられないならそれで良しと思っていた。
 同棲を始めてからは、一度も家に人が出入りしていないようだった。女物のシャンプーも、容量が減ることもなくピンクのカビにどんどん侵されていった。私は相変わらず彼のお気に入りというシャンプーに、コンディショナーに、買ってもらったトリートメントを使っている。
 ボディソープはいつもの桃の香りのするものを使っている。
 彼と生活するようになってから、自然と私も服や髪型、匂いなどを気にするようになった。一番の友達には男でもできたか、と疑われた。

 彼はいつも通り、バイトに、大学に、と学生生活を勤しんでいる。
 私も大学に入ってからは、バイトも始め、かつては関わることのなかった人に多く関わるようになった。
 そして、彼が良く好む髪型に、お洒落な美容院で変えてみたりもした。高校生活で得られなかった青春を後戻りして堪能している気分だった。
 でも、そんな生活を送れば送るほど、秘密を知りたくなるものだった。だからと言って、聞く勇気など私は持ち合わせていない。
 いつか、彼から言ってくれるのを気長に待つつもりだった。
 あの人と出会うまでは…。
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