君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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二人の西宮君

二人目の西宮君

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「おはよ。」
「おはよー、和門。」
 顔に出ていないみたいで安心した。
「今日、朝ご飯どうする?」
「どうしよっか。」
 話が全然頭に入ってこない。昨夜のことがずっと頭にあって。
 聞いても、いいのかな。
 聞いたら、どうなるのかな。
 どうすれば、最善かな。
 彼の心の中に入っていきたい。でも、まだ出会ってから三日目。圧倒的他人。ただ同じ空間を共にするだけの、他人。一番苦しい位置づけ。
 近づいてもいいかな…。
 でも、私はなんでここまで彼のことを考えているのだろう。無駄とは言わない。でも、時間が時間だ。そのうえ、相手から同棲をお願いされて、という関係だ。
 なんで私は彼に近づこうとするのだろう。
 あくまで、大学に近い、そして、いつまでも実家にいるわけにいない、という二つの理由だけなのに。
 距離を近づけなくてもいいのに。
「千流。」
 急に名前が呼ばれて驚いてしまう。
「ど、どうしたの?」
「今日、様子おかしいよ。大丈夫?」
「…。」
「なぁ。千流。どうしてなのかは、ちゃんと言えよ。」
 急な彼の言葉遣いに驚く。
「わ、私より和門の方がおかしい。どうしたの。」
「違う、違う。」
 明らかに彼の様子がおかしかった。
 昨日の電話、かな。
「ねぇ、和門。私も和門にちゃんと言ってほしい。昨日の夜のこと、ちゃんと教えて。」
「俺の心に入ってくるな。名前で呼ぶな。こっち来るな。やめろ、来るな。」
「落ち着いて。ねぇ。」
「あっちいけ。依頼。」

い、よ、り……。

「西宮君を苦しめてるのは誰なの。力になりたい。」
「もう、自室行くわ。入ってくるなよ。」
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