君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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二人の西宮君

電話

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 彼は髪を乾かすと言い、離れていった。彼がいなくなった後、少し、寂しさを感じた。 何故か今までの男性たちとは違う感覚があった。不思議な安心感。居心地がいい。
 だからより寂しく感じるのか。
 初めて彼のベッドで寝た。彼の匂いに包まれていて、安心した。
 したはずだった。
 
何故だ。急に胸が苦しくなってきた。夜中なのに、目が覚めてしまい、彼を起こさないように家を出た。

 夜の街は、中学生以来だ。両親の離婚騒ぎで、私は家に居たくなく、よく、家を出ていた。決まって夜中に。
知り合いに会うこともなく、深夜ともなると人の目もない。居場所のなかった私にはなんとも居心地の良い空間だった。
 でも、今は、胸が苦しい。彼の家から出ても、結局。
 少し歩いて戻ろう。



 音を立てないように、そっとドアを開ける。何か、叫ぶ声が聞こえた。

『お前は俺にどうしてほしいんだよ。なんで、なんで近付いてくるんだよ。連絡してこないでくれ。ふざけるな。なんなんだよ。』
電話か…。
 びっくりした。
 聞くべきではなかった。
 聞いちゃいけなかった。
 何も見なかったことにして、聞かなかったことにして。
 それが正しい判断だ。

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