君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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二人の西宮君

彼の優しさ

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 ゆっくりと午後の時間を過ごし、二人で様々な話をした。一人暮らしが長い彼は私より物知りで沢山教えてくれた。少しは彼のことを知れた気がする。
 夜ご飯は近くのファミレスにいった。高校から近いため同級生たちにばれてしまうかもしれない。少し不安もある中、二人でご飯を食べた。
 荷物を運んだり、整理をしたりしたため、疲れが溜まっていた。
 早くお風呂に入りたい。
「和門、お風呂借りていい?」
「うん。シャンプーとかもあるから使って。タオルは上の籠に入ってるから。」
 あのシャンプー、どんな香りか。
 私が使っているシャンプーより甘い。フローラルの香りが好きな私はそのシャンプーがとても気に入った。
入れ替わりで彼がお風呂に入った。私はこの長い髪の毛を乾かす。彼が出てくるまでの時間しか乾かす時間が無い。少し窮屈さを感じる。
「僕と同じ匂いがする。」
 そう言って彼が抱き着いてきた。距離の近づけ方が今までになく、違和感を感じる。
 少し気持ちが悪い。
 でも、拒否をすることはなく、数分間そのままにしていた。
 拒否ができなかったわけではない。
 意図的にしなかった。
「千流。」
 抱き着いたまま彼が耳元で囁くように言った。若干身震いして、でも、大人しく返事をする。
「んー?」
「僕のこと、嫌い?」

「なんで?」

 私はバカだから、先に、質問で返してしまう。思ったことをすぐ口に出してしまう。これは良くない私の癖だ。

「やっぱりなんでもないや。これからよろしくね。」
「うん。」
 彼はあまり突っ込んでこない。私の個人的事情も聞いてこない。
 何故だろう。
 彼の優しさか、何か。
 とりあえず、私も彼のことはあまり聞かないでおこう。

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