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二人の西宮君
初めてのお昼ご飯
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彼と一緒に歩く家までの道は寂しくなんかなかった。私の家まであと十五分。少し浮足立っている彼に私まで自然と頬が緩む。
家までの道は互いに自己紹介をしたり、くだらない話をしたりした。少しは彼のことを知れた気がする。私は自分の部屋に行き、ある程度の服を鞄に詰めた。今後、お母さんに手伝ってもらって、タンスを運ばなければ。
「料理って得意?」
「僕は基本自炊でこの三年間生きてきたからね。バイト先でも調理担当だし。」
「一回食べてみたい。」
「丁度お昼時だから、買い物行って作って食べよっか。」
「ありがとう。」
彼は出会って二日の私に、ここまで親しくしてくれて、優しくしてくれて。扱いに慣れている気がする。
二人で買い物をする感覚は新鮮で、今まで体験したことがなかった。少し手に取るだけで分かるのか、すらすらと買い物を進めていった。十分程度で買い物は終わり、体感ではさらに早く感じられた。平日の昼間でもスーパーに人はいた。
家に着くと手慣れた手付きで料理を始めた。コンロは一つしかないため、調理は大変そうだった。手伝うと言ったものの、彼はそれを拒否した。
自分で作った味を食べてほしいそうだ。
今日のお昼ご飯は、わかめと豆腐の味噌汁、鮭の塩焼き、海藻サラダ、ご飯。パパっと作り、ニコニコした顔をして、美味しいかなと聞いてくる。
美味しくないわけがない。鮭は、味の付いていないものを買い、彼が好みの味にしていた。ほんのり甘くて、鮭の味が引き出されていて、凄く美味しい。お味噌汁も、味が濃すぎず、味噌の風味が良い。私の家の味噌汁は赤みそだが、彼は合わせ味噌を使っているようだ。いつもとは違う味。
「美味しい。」
「ありがとう。いっぱい食べて。」
こうやって何人も口説いてきたのか。そのうちの一人なのか。
いや、これは
家までの道は互いに自己紹介をしたり、くだらない話をしたりした。少しは彼のことを知れた気がする。私は自分の部屋に行き、ある程度の服を鞄に詰めた。今後、お母さんに手伝ってもらって、タンスを運ばなければ。
「料理って得意?」
「僕は基本自炊でこの三年間生きてきたからね。バイト先でも調理担当だし。」
「一回食べてみたい。」
「丁度お昼時だから、買い物行って作って食べよっか。」
「ありがとう。」
彼は出会って二日の私に、ここまで親しくしてくれて、優しくしてくれて。扱いに慣れている気がする。
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家に着くと手慣れた手付きで料理を始めた。コンロは一つしかないため、調理は大変そうだった。手伝うと言ったものの、彼はそれを拒否した。
自分で作った味を食べてほしいそうだ。
今日のお昼ご飯は、わかめと豆腐の味噌汁、鮭の塩焼き、海藻サラダ、ご飯。パパっと作り、ニコニコした顔をして、美味しいかなと聞いてくる。
美味しくないわけがない。鮭は、味の付いていないものを買い、彼が好みの味にしていた。ほんのり甘くて、鮭の味が引き出されていて、凄く美味しい。お味噌汁も、味が濃すぎず、味噌の風味が良い。私の家の味噌汁は赤みそだが、彼は合わせ味噌を使っているようだ。いつもとは違う味。
「美味しい。」
「ありがとう。いっぱい食べて。」
こうやって何人も口説いてきたのか。そのうちの一人なのか。
いや、これは
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