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二人の西宮君
同棲生活
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「ねぇ、西宮君。同棲って、私はどうすればいいのかしら。」
「どうするって…?」
どうやら、言葉の意味を理解していないようだった。私も明確に聞きたいことを言っていた訳ではないから、妥当な反応だと思うのだが。彼はポカンとしていた。
「借りている家だったら家賃とか、食事代とか、光熱費とか。それに母への説明も。」
「嫌なら嫌で。別に僕が勝手に言ったことなんですから。お金の面は、すべて僕が支払うから大丈夫です。気にしないでください。」
「それは駄目です。お金の支払いはちゃんとします。母にはなんて言えばいいですか。」
「彼氏、とでも言えば納得するのでは。」
「西宮君がそれでいいのなら、私はそう説明します。」
突発的に言ったことなのかと勝手に判断していたが、全くそんなことはなかった。彼は沢山考えていた。私は普通に返事をしてしまったけど、良かったのかしら。
「ところで、私で良いのですか?人違いとかではないのかしら。」
「里村千流、さんですよね。僕が望んだ人。僕は君がよかったんだ。」
彼のあまりにも真っ直ぐな一言に、聞いた私が困ってしまった。私の想像の二倍も、三倍も上をいく人だと改めて実感した。
私はこれからどんな暮らしをすることになるのだろう。そういえば今どき珍しい僕っ子。私の周りではあまりいなかった。
「今日、どうする?」
「今日は、母にも話してないし、一回家に帰ります。」
「敬語、なしにしない?」
去り際に彼が一気に距離を縮めてきた。私はやっぱり、はい、と答えてしまった。
「バイバイ。」
「うん、またね。」
「またね」ってやっぱり彼は本気なのか。発言一つ一つが、意識してなくても私を喜ばせてくれる。でも、私のこの感情が喜んでいるのかどうかは、分からない。
「どうするって…?」
どうやら、言葉の意味を理解していないようだった。私も明確に聞きたいことを言っていた訳ではないから、妥当な反応だと思うのだが。彼はポカンとしていた。
「借りている家だったら家賃とか、食事代とか、光熱費とか。それに母への説明も。」
「嫌なら嫌で。別に僕が勝手に言ったことなんですから。お金の面は、すべて僕が支払うから大丈夫です。気にしないでください。」
「それは駄目です。お金の支払いはちゃんとします。母にはなんて言えばいいですか。」
「彼氏、とでも言えば納得するのでは。」
「西宮君がそれでいいのなら、私はそう説明します。」
突発的に言ったことなのかと勝手に判断していたが、全くそんなことはなかった。彼は沢山考えていた。私は普通に返事をしてしまったけど、良かったのかしら。
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「バイバイ。」
「うん、またね。」
「またね」ってやっぱり彼は本気なのか。発言一つ一つが、意識してなくても私を喜ばせてくれる。でも、私のこの感情が喜んでいるのかどうかは、分からない。
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