君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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二人の西宮君

リビングダイニング

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 人が住んでいるにしては殺風景なリビングダイニング。調理器具が多いから、料理は比較的よくするのだろう。冷 蔵庫、覗いてもいいのかな。少しくらいいいよね。
 コーヒー、コーヒー、コーヒー。同じメーカーの同じコーヒーが並んでいる。彼はコーヒーが好きなのか。冷蔵庫はもうおしまいにしよう。
 綺麗なシンクだ。試しに流してみた水も綺麗だ。あの血はとっくの昔に乾いてしまっていた。その血を綺麗に洗い流す。置いてある洗剤で丁寧に。傷は浅く、あの血は一体どこから流れてきたのかしら。
 隣の部屋には、彼の寝ているベッドであろうものがある。シンプルな青い布団が敷かれている。これは、シングルベッドではないな。
 まだお風呂を見ていない。私の大好きなお風呂はどんな感じなのだろう。

「ただいまー。」
 彼の声がした。彼が帰ってきたようだ。
「あ、里村さんの靴かな。里村さーん。」
「は、はい!」
 バタバタと走る音がする。そんなに急がなくても。
「里村さん、どう、気に入った?」
「お風呂、お風呂が見たい。」
「うん。」
 

彼に連れられて、廊下に出た。横にスライドするタイプの扉を開けたら、新緑の匂いがした。ここはここでまたいい匂いがする。落ち着く。洗面台に置かれている石鹸は薄い紫色で、私の好みの色をしている。
「ここが、お風呂場。」
 部屋の雰囲気から、彼は几帳面なのだろう。このお風呂場もとても丁寧に手入れされている。物がごちゃごちゃ置いてある訳でもない。これ、女物のシャンプーでは…。
「どうかしたの?」
「なんでもないです。」
 

女物のシャンプーを置く程、彼の家にはよく女の人が出入りしているのか。今、聞けるほど、私と彼の距離は近い訳ではない。聞けない。

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