君は誰よりも美しい

折方しょくえん

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二人の西宮君

孤独

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さっきの彼の発言。
「僕も帰ります。」

彼の中ではもうその家は自分の家ではなく、私と彼の二人の家になっている。
 何故彼は私にこんなことを言ったのだろう。
 他の誰でもなく、私に。1度も話したことない私に。
 不思議で仕方がない。
 何も述べずにいなくなってしまった彼はまるで雪うさぎのよう…。
 
 少し目を離すと消えてなくなってしまう、脆くて、小さくて、尊い。存在。
 私は彼のことを何も知らない。そのことは当たり前なはずなのに酷く惨めに感じた。
 
普段通らない道を1人寂しく歩く。
普段の道ではないだけで寂しさが増す。
少し、音楽でも聞こうかと思い、イヤホンに手をかける。
 若干絡まったイヤホンをほどきながら指定された彼の家まで向かう。しっかりとスマホで道を探って。
 さすがに、片手でほどくイヤホンはほどきにくい。
『目的地まで残り約100メートルです。』
 ブブーとバイブが鳴り、私のスマホが揺れた。
 その振動がイヤホンを伝って耳まで届く。
やたらと大きい音に聞こえて、焦ってイヤホンを外す。
 結局音楽を流すわけでもなく、ただただつけられていたイヤホン。
 虚しい。
 たったイヤホン1つにここまで感情移入してしまう私もイヤホン同様に虚しい。
 果たして虚しいという表現が私たちに合っているのか分からない。
 でも、少し、違う気がする。

 そろそろ見えてくるだろう。
 彼の家が。

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