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社会人編
世界で二番目に幸福な男①
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伊織は自分がどうすべきか分からなかった。しかし幸いなことに、伊織にはこういう時に頼ることができる友人がいる。
「そこまで来て何もせずに帰してくれるって……聖人なのかしら」
ほっそりとした指を頬に添えながら、上品に首を傾げる女性。しなやかな猫を思わせる瞳と涼やかな美貌は、歳を重ねても衰えるどころかその輝きを増している。
「相手がこの浅葱くんだなんて、可哀想に……本当に貴方って、いつまで経っても煮え切らない男なんだから」
「樺地さんのおっしゃる通りで……」
ぴしゃりと一撃を食らわせた玲子はワイングラスを傾ける。明日は平日のはずだが、一杯だけと言って既に一度グラスを空けていた。
伊織はしおしおと萎んだ風船のように、玲子の目の前の席で肩を竦めていた。
「状況を整理すると……会社の後輩に告白されて、一番じゃなくてもいいからって縋られて、どうしたらいいか分かんなくなって俺らに助けを求めた、で合ってる?」
「ええっと、正確には樺地さんを、なんだけど……」
伊織は玲子の隣でトマトクリームパスタを味わっていた龍成に視線を向けた。
「はあ? なんだよ、その言い草は。折角来てやったのにさあ」
「親友が聞いて呆れるわね。この機会に浅葱くんの親友枠、わたしにしたらどうかしら?」
「玲子ちゃん、いくらなんでもそれはないって!」
打って変わって情けない声を出す龍成を、玲子は鼻で笑った。店に来た時からこんな調子なので、大方喧嘩でもしたのだろう。龍成には気の毒だが、痴話喧嘩に巻き込まれている余裕はないのでそこには触れないでいる。
龍成と玲子が友人から恋人になって、もう三年ほど経っただろうか。二人の出会いのきっかけは玲子が、失恋の憂さ晴らしで始めたオンラインゲームである。伊織が知らぬ間にランキング上位に食い込むまでにのめり込んでいた玲子を、同じゲームをやっているという理由で龍成に紹介したことが始まりだった。
紆余曲折あり、恋人となった二人は去年から同棲しているらしい。二人とも譲らないタイプなので、しょっちゅう言い合いをしている。勝敗はほぼ玲子の圧勝だが。
気が付けば、二人の話は何故かどちらが伊織の親友に向いているか、いうことになっていた。何がどうしてそうなったのか。伊織からしてみれば玲子は戦友で、龍成は腐れ縁といったところである。
「まあまあ、二人とも落ち着いてよ。っていうか、俺の話を聞いて欲しいんですけど」
いつまでも微笑ましいなどと言って、呑気に見ているわけにもいかない。伊織が間に入ってようやく二人の口が止まった
話の流れを元に戻し、クールダウンした龍成が尋ねる。
「実際さ、伊織的にはどうなの」
「どうって?」
「その後輩のこと、いいと思ってんのか、思ってないのか」
伊織は暫し考え込むように目を伏せた。
「……いいとは思ってる」
「おっ、じゃあいいじゃん。付き合えば?」
「えっ?」
「だって嫌いじゃないんだろ。聞く限りすげえ良い男だし。どっちかって言えば好きってところまでいってるんなら、迷う必要なくない?」
龍成の言うことは最もなのだろう。それなのに伊織がいつまで経っても決断できないのは何故か。
玲子が小さくため息を吐いた。
「貴方がそうなるってことは、十中八九、彼のせいでしょう」
伊織は小さく呻いた。一人だけ知らない龍成は、怪訝そうに玲子の顔を見ている。
「え、誰……っつうか、なんのこと?」
「浅葱くんの初恋の男」
「待って、玲子ちゃんは知ってんの??」
龍成は椅子から身を仰け反らせて驚いていた。目を剥いている龍成を一瞥してから、玲子はひやりとした視線を伊織に注ぐ。
「ねえ、いい加減教えてあげなさいよ。じゃないと後が面倒なの」
「……そうだよね」
玲子はとにかく誠実な女性である。龍成と恋仲になっても、伊織が望まないという一点で、黙っていていたらしい。言いようのない感謝をおぼえた。
伊織は覚悟を決めたように大きく深呼吸をする。ぽかんととぼけた顔をしている龍成を見据えた。
「龍成にも、大学の時に少しだけ相談したこと、あると思うんだけど」
「えっ………ああ、そうだったな。教えてくれなかったけど」
「うん、ごめんね。それ、というか俺が好きだった人っていうのが………早月なんだよね」
龍成は声も出ないようだった。その場に縫い止められように固まったまま、幾度も瞬きを繰り返している。伊織がその様を手汗を握り締めながら見つめていると、やがて糸が切れた人形のように、龍成は背もたれに凭れ掛かる。
「………あー……すごいなんか………俺の頭の中で全てが繋ぎ合わさっていく感覚……」
ぼんやりと天井を見上げていたが、唐突にがばりと身を起こした。
「えっ、マジで言ってる?」
「うん」
「いつから?」
「……高校の時?」
「え、えぇッッ……うわあ、マジ、マジか。気づかなかった……わけじゃないな、俺聞いたことあるよな?」
「ああー……確かに、あるかも。でもあの時はまだ、だったかな」
「俺、預言者? 怖っ、自分の勘も怖いし、何より地雷踏んでそうで怖い」
龍成は自分の体を抱き込むようにしてぶるりと身を震わせた。伊織は過去の記憶を手繰り寄せつつ、苦笑いを浮かべている。
龍成はおそるおそるといった様子で伊織に問うた。
「好きだった、ってことはふられたってこと?」
そこで、ここまで大人しくしていた玲子が伊織の代わりに答えてしまう。
「違うわ。結局言わないまま終わりにしたのよ。しかも五年間も音信不通」
「お、音信不通は言い過ぎ……」
「………伊織、マジ?」
「浅葱くんって臆病なんだか、豪胆なんだか、分からないのよね」
「……いやー、すげえよ。ていうか早月もすげえな」
「ああ、それはわたしも同意見。彼も、実際よく分からない男よね。揃いも揃って本当に……」
ため息混じりの呟きに、伊織には返す言葉もない。
「でもさ、その、早月とその後輩、なんの関係が」
そう言いかけて、龍成は口を閉じた。隣の玲子をちらりと見遣る。玲子は呆れたように首を横に振った。
やはり勘が鋭い親友たちである。
「……まだ好きなんだ、早月のこと」
違う、と声を出さずに唇の動きだけで否定した。好きじゃない。環への恋にはとっくに蓋をしてしまっている。
「でも、忘れられないんでしょう」
玲子の言葉が伊織の胸を抉った。それが一番しっくりきたからだ。
三人のテーブルにしんとした空気が満ちていく。一番初めに口を開くのはやはり龍成だった。
「……伊織が、次にいきたいってことなら、俺は後輩と付き合うのもありだと思うけど」
「次……」
「やっぱりさ、上書きが一番効くんだよ。そういうのって」
初恋を拗らせ続けた伊織より、龍成の方がずっと大人で、経験も重ねてきている。現在の恋人である玲子のことを気にしながらも、龍成は率直な意見を述べていた。
上書き。心の中でその言葉を繰り返す。
「わたしは断るにしても、受け入れるにしても、結局その選択をした浅葱くんがどう思うかだと思うわ」
どうやら玲子の意見は、龍成とは違うようだ。
どういうことかと首を捻る。玲子はほんのりと口元を緩めた。
「浅葱くんが絶対曲げたくなかったものって何? 早月くんとの距離を置いてまで、譲りたくなかったものは?」
この身を焦がすような初恋を、無理矢理押し込めてまで譲りたくなかったもの。
伊織がどうしても耐えられなかったもの。
それは、伊織が環の特別で、一番ではないということ。
「……俺、二番目なのは嫌だったんだ」
「二番?」
「うん。櫻木くんの、次じゃ嫌だった」
問い返した龍成はまるで分からないような顔をしていた。玲子は共感はしないが、理解はしてくれているようである。
伊織の初恋はうんと大きく育ってしまい、そのうえ拗れて、捻れてしまっていた。
春生が駄目だから伊織、だなんて。そんな選択をされたら、それこそ憤死してしまいそうだった。
しかし伊織はとにかく自信がなかった。幼い頃より庇護の対象であり、どんなオメガよりも可憐で心優しい春生よりも、環に愛される自信が。
独白に近いそれに耳を傾けた龍成たちは顔を見合わせる。
「……そこで拗れてんのかー」
「拗らせた成人済み男性って、下手なホラーよりも怖いのよね」
「樺地さん、それ、結構傷付くんだけど……」
初恋拗らせアラサー男。我ながら酷い単語の羅列である。寒気さえした。
氷で薄まったジンジャエールを流し込む。
そんな伊織とは反対に、玲子は愉しそうに笑っていた。
「いいじゃない。貴方の頑固なところ、好きよ」
「え……ありがとう?」
「ここまできたら、飽きるまで貫きなさいな。たまには難しいことは考えずに、好きなようにしなさい」
普段はクールな玲子が親しい者にしか見せないやわい表情だった。伊織は目を見張り、そしてはにかみ笑いを見せた。
そんな二人のやり取りを見ていた龍成の唇が分かりやすく曲がった。腐れ縁の男のヤキモチを妬いてしまっている。
ただし、一番の親友に闇雲にそれをぶつけるわけがなく、声を控えめに上げるだけに留めた。
「浮気はさ、ダメだかんな」
「あら、大丈夫よ。龍成くん以外の男は基本ジャガイモに見えてるから」
「玲子ちゃん……!」
「もう、俺をダシにしないでよ」
つい先程まで言い合いをしていたのが嘘のように、ふんわりとどこか甘い雰囲気が漂っている。伊織は情けなく嘆きながらも、ダシにされても構わないと思うほど、この二人が伊織に寄り添ってくれることに救われていた。
「そこまで来て何もせずに帰してくれるって……聖人なのかしら」
ほっそりとした指を頬に添えながら、上品に首を傾げる女性。しなやかな猫を思わせる瞳と涼やかな美貌は、歳を重ねても衰えるどころかその輝きを増している。
「相手がこの浅葱くんだなんて、可哀想に……本当に貴方って、いつまで経っても煮え切らない男なんだから」
「樺地さんのおっしゃる通りで……」
ぴしゃりと一撃を食らわせた玲子はワイングラスを傾ける。明日は平日のはずだが、一杯だけと言って既に一度グラスを空けていた。
伊織はしおしおと萎んだ風船のように、玲子の目の前の席で肩を竦めていた。
「状況を整理すると……会社の後輩に告白されて、一番じゃなくてもいいからって縋られて、どうしたらいいか分かんなくなって俺らに助けを求めた、で合ってる?」
「ええっと、正確には樺地さんを、なんだけど……」
伊織は玲子の隣でトマトクリームパスタを味わっていた龍成に視線を向けた。
「はあ? なんだよ、その言い草は。折角来てやったのにさあ」
「親友が聞いて呆れるわね。この機会に浅葱くんの親友枠、わたしにしたらどうかしら?」
「玲子ちゃん、いくらなんでもそれはないって!」
打って変わって情けない声を出す龍成を、玲子は鼻で笑った。店に来た時からこんな調子なので、大方喧嘩でもしたのだろう。龍成には気の毒だが、痴話喧嘩に巻き込まれている余裕はないのでそこには触れないでいる。
龍成と玲子が友人から恋人になって、もう三年ほど経っただろうか。二人の出会いのきっかけは玲子が、失恋の憂さ晴らしで始めたオンラインゲームである。伊織が知らぬ間にランキング上位に食い込むまでにのめり込んでいた玲子を、同じゲームをやっているという理由で龍成に紹介したことが始まりだった。
紆余曲折あり、恋人となった二人は去年から同棲しているらしい。二人とも譲らないタイプなので、しょっちゅう言い合いをしている。勝敗はほぼ玲子の圧勝だが。
気が付けば、二人の話は何故かどちらが伊織の親友に向いているか、いうことになっていた。何がどうしてそうなったのか。伊織からしてみれば玲子は戦友で、龍成は腐れ縁といったところである。
「まあまあ、二人とも落ち着いてよ。っていうか、俺の話を聞いて欲しいんですけど」
いつまでも微笑ましいなどと言って、呑気に見ているわけにもいかない。伊織が間に入ってようやく二人の口が止まった
話の流れを元に戻し、クールダウンした龍成が尋ねる。
「実際さ、伊織的にはどうなの」
「どうって?」
「その後輩のこと、いいと思ってんのか、思ってないのか」
伊織は暫し考え込むように目を伏せた。
「……いいとは思ってる」
「おっ、じゃあいいじゃん。付き合えば?」
「えっ?」
「だって嫌いじゃないんだろ。聞く限りすげえ良い男だし。どっちかって言えば好きってところまでいってるんなら、迷う必要なくない?」
龍成の言うことは最もなのだろう。それなのに伊織がいつまで経っても決断できないのは何故か。
玲子が小さくため息を吐いた。
「貴方がそうなるってことは、十中八九、彼のせいでしょう」
伊織は小さく呻いた。一人だけ知らない龍成は、怪訝そうに玲子の顔を見ている。
「え、誰……っつうか、なんのこと?」
「浅葱くんの初恋の男」
「待って、玲子ちゃんは知ってんの??」
龍成は椅子から身を仰け反らせて驚いていた。目を剥いている龍成を一瞥してから、玲子はひやりとした視線を伊織に注ぐ。
「ねえ、いい加減教えてあげなさいよ。じゃないと後が面倒なの」
「……そうだよね」
玲子はとにかく誠実な女性である。龍成と恋仲になっても、伊織が望まないという一点で、黙っていていたらしい。言いようのない感謝をおぼえた。
伊織は覚悟を決めたように大きく深呼吸をする。ぽかんととぼけた顔をしている龍成を見据えた。
「龍成にも、大学の時に少しだけ相談したこと、あると思うんだけど」
「えっ………ああ、そうだったな。教えてくれなかったけど」
「うん、ごめんね。それ、というか俺が好きだった人っていうのが………早月なんだよね」
龍成は声も出ないようだった。その場に縫い止められように固まったまま、幾度も瞬きを繰り返している。伊織がその様を手汗を握り締めながら見つめていると、やがて糸が切れた人形のように、龍成は背もたれに凭れ掛かる。
「………あー……すごいなんか………俺の頭の中で全てが繋ぎ合わさっていく感覚……」
ぼんやりと天井を見上げていたが、唐突にがばりと身を起こした。
「えっ、マジで言ってる?」
「うん」
「いつから?」
「……高校の時?」
「え、えぇッッ……うわあ、マジ、マジか。気づかなかった……わけじゃないな、俺聞いたことあるよな?」
「ああー……確かに、あるかも。でもあの時はまだ、だったかな」
「俺、預言者? 怖っ、自分の勘も怖いし、何より地雷踏んでそうで怖い」
龍成は自分の体を抱き込むようにしてぶるりと身を震わせた。伊織は過去の記憶を手繰り寄せつつ、苦笑いを浮かべている。
龍成はおそるおそるといった様子で伊織に問うた。
「好きだった、ってことはふられたってこと?」
そこで、ここまで大人しくしていた玲子が伊織の代わりに答えてしまう。
「違うわ。結局言わないまま終わりにしたのよ。しかも五年間も音信不通」
「お、音信不通は言い過ぎ……」
「………伊織、マジ?」
「浅葱くんって臆病なんだか、豪胆なんだか、分からないのよね」
「……いやー、すげえよ。ていうか早月もすげえな」
「ああ、それはわたしも同意見。彼も、実際よく分からない男よね。揃いも揃って本当に……」
ため息混じりの呟きに、伊織には返す言葉もない。
「でもさ、その、早月とその後輩、なんの関係が」
そう言いかけて、龍成は口を閉じた。隣の玲子をちらりと見遣る。玲子は呆れたように首を横に振った。
やはり勘が鋭い親友たちである。
「……まだ好きなんだ、早月のこと」
違う、と声を出さずに唇の動きだけで否定した。好きじゃない。環への恋にはとっくに蓋をしてしまっている。
「でも、忘れられないんでしょう」
玲子の言葉が伊織の胸を抉った。それが一番しっくりきたからだ。
三人のテーブルにしんとした空気が満ちていく。一番初めに口を開くのはやはり龍成だった。
「……伊織が、次にいきたいってことなら、俺は後輩と付き合うのもありだと思うけど」
「次……」
「やっぱりさ、上書きが一番効くんだよ。そういうのって」
初恋を拗らせ続けた伊織より、龍成の方がずっと大人で、経験も重ねてきている。現在の恋人である玲子のことを気にしながらも、龍成は率直な意見を述べていた。
上書き。心の中でその言葉を繰り返す。
「わたしは断るにしても、受け入れるにしても、結局その選択をした浅葱くんがどう思うかだと思うわ」
どうやら玲子の意見は、龍成とは違うようだ。
どういうことかと首を捻る。玲子はほんのりと口元を緩めた。
「浅葱くんが絶対曲げたくなかったものって何? 早月くんとの距離を置いてまで、譲りたくなかったものは?」
この身を焦がすような初恋を、無理矢理押し込めてまで譲りたくなかったもの。
伊織がどうしても耐えられなかったもの。
それは、伊織が環の特別で、一番ではないということ。
「……俺、二番目なのは嫌だったんだ」
「二番?」
「うん。櫻木くんの、次じゃ嫌だった」
問い返した龍成はまるで分からないような顔をしていた。玲子は共感はしないが、理解はしてくれているようである。
伊織の初恋はうんと大きく育ってしまい、そのうえ拗れて、捻れてしまっていた。
春生が駄目だから伊織、だなんて。そんな選択をされたら、それこそ憤死してしまいそうだった。
しかし伊織はとにかく自信がなかった。幼い頃より庇護の対象であり、どんなオメガよりも可憐で心優しい春生よりも、環に愛される自信が。
独白に近いそれに耳を傾けた龍成たちは顔を見合わせる。
「……そこで拗れてんのかー」
「拗らせた成人済み男性って、下手なホラーよりも怖いのよね」
「樺地さん、それ、結構傷付くんだけど……」
初恋拗らせアラサー男。我ながら酷い単語の羅列である。寒気さえした。
氷で薄まったジンジャエールを流し込む。
そんな伊織とは反対に、玲子は愉しそうに笑っていた。
「いいじゃない。貴方の頑固なところ、好きよ」
「え……ありがとう?」
「ここまできたら、飽きるまで貫きなさいな。たまには難しいことは考えずに、好きなようにしなさい」
普段はクールな玲子が親しい者にしか見せないやわい表情だった。伊織は目を見張り、そしてはにかみ笑いを見せた。
そんな二人のやり取りを見ていた龍成の唇が分かりやすく曲がった。腐れ縁の男のヤキモチを妬いてしまっている。
ただし、一番の親友に闇雲にそれをぶつけるわけがなく、声を控えめに上げるだけに留めた。
「浮気はさ、ダメだかんな」
「あら、大丈夫よ。龍成くん以外の男は基本ジャガイモに見えてるから」
「玲子ちゃん……!」
「もう、俺をダシにしないでよ」
つい先程まで言い合いをしていたのが嘘のように、ふんわりとどこか甘い雰囲気が漂っている。伊織は情けなく嘆きながらも、ダシにされても構わないと思うほど、この二人が伊織に寄り添ってくれることに救われていた。
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