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「じゃあ、天使ですか?でも、あなたには翼がない…どうして?」
「…ひとの正体を探る前に、まず君から名乗るべきではないのかい?それが礼儀というものだよ」
「すみません…!オレは、トオトセと言います。あなたの名前を伺っても?」
「…カノだ。…翼は今は、ない」
「今は…?」
カノはそれ以上、教えてくれなかったので、トオトセも話題を変えることにした。
「カノさんはどうしてここにいるんですか?ここに置いてある本はすべて神の言葉で書かれているようですが、読めるんですか?」
「……ここは私の家のようなものだ。長いこと住んでいれば、嫌でも読めるようになるさ」
「え、すごい!神様じゃないのに、神の言葉が読めるということは上級天使なんですね!」
チトセから聞いたことがある。
上級天使は神様を支える役目なので、必ず神の言葉を習得しなければならず、神の言葉を読めるのは天使の中でも上級天使だけなのだと。
どおりでただ者ではないと感じたわけだ。
「…カノさんは上級天使だけど、翼がないんですよね?もうずっとここから出ることもなく、誰にも会ってないんですか?」
「…ああ、そうだな。ここにある本すべて読み終わるくらい、長いことこの場所に閉じ込められているな。…そろそろ新しい本でも読みたいものだ」
にわかには信じがたい話だった。
ここには星の数ほどの本がある。
全部読み終わるには膨大な時間がかかったはずだ。
その間ずっと孤独な日々を送っていたなんて、トオトセだったら耐えられない。本を読み終わる前に狂っていただろう。
カノがどれだけ寂しく辛かったかを想像すると、胸が苦しくなった。
「…だったら、オレ、カノさんのために毎日新しい本を持って来ます!それから話し相手にもなります!毎日読書だけじゃ、つまらないでしょう?」
「…君、本気かい?見たところ学生のようだが、毎日境界に来れるほど暇でもないだろ。…ここで見たこと聞いたことはすべて忘れなさい」
「大丈夫です!オレ、もうすぐ卒業するから、今の時期はそんなに忙しくないんです。だから明日も必ず来ますね!」
「いや、だから」
「どういう本が好きですか?ソフトカバーですか?それともハードカバーですか?あ、それとも巻物派ですか?」
「私の話を…」
彼がぺらぺらと話し続けるので、カノはもう何か言うのを諦めた。
この小さな天使はいったいどういうつもりなのだろう。
突然新しい気配を感じたので、何かと思ったら、現れたのはこどもの天使だった。
否、実際には青年と呼ばれる歳なのだろうが、千近く生きている自分からすれば、生まれたての赤ん坊のようにか弱い存在にしか見えなかった。
彼は整った顔立ちで、爽やかな雰囲気をまとっていた。特に、さらさらの黒髪と意志の強そうな黒い目が珍しいと思った。
天使はもっと色素が薄い生き物だが、これだけ明るくておしゃべりなので、普通と違っていてもよっぽど大切に育てられたのだろうと容易に推測できた。
「…君、今日は帰りなさい。そして、もうここに来てはいけないよ」
カノが突き放すように背を向けて言いながら、神殿の奥に姿を消した。
「カノさん!オレ、明日も絶対来ますから!」
トオトセの声だけが虚しく響く…。
「…ひとの正体を探る前に、まず君から名乗るべきではないのかい?それが礼儀というものだよ」
「すみません…!オレは、トオトセと言います。あなたの名前を伺っても?」
「…カノだ。…翼は今は、ない」
「今は…?」
カノはそれ以上、教えてくれなかったので、トオトセも話題を変えることにした。
「カノさんはどうしてここにいるんですか?ここに置いてある本はすべて神の言葉で書かれているようですが、読めるんですか?」
「……ここは私の家のようなものだ。長いこと住んでいれば、嫌でも読めるようになるさ」
「え、すごい!神様じゃないのに、神の言葉が読めるということは上級天使なんですね!」
チトセから聞いたことがある。
上級天使は神様を支える役目なので、必ず神の言葉を習得しなければならず、神の言葉を読めるのは天使の中でも上級天使だけなのだと。
どおりでただ者ではないと感じたわけだ。
「…カノさんは上級天使だけど、翼がないんですよね?もうずっとここから出ることもなく、誰にも会ってないんですか?」
「…ああ、そうだな。ここにある本すべて読み終わるくらい、長いことこの場所に閉じ込められているな。…そろそろ新しい本でも読みたいものだ」
にわかには信じがたい話だった。
ここには星の数ほどの本がある。
全部読み終わるには膨大な時間がかかったはずだ。
その間ずっと孤独な日々を送っていたなんて、トオトセだったら耐えられない。本を読み終わる前に狂っていただろう。
カノがどれだけ寂しく辛かったかを想像すると、胸が苦しくなった。
「…だったら、オレ、カノさんのために毎日新しい本を持って来ます!それから話し相手にもなります!毎日読書だけじゃ、つまらないでしょう?」
「…君、本気かい?見たところ学生のようだが、毎日境界に来れるほど暇でもないだろ。…ここで見たこと聞いたことはすべて忘れなさい」
「大丈夫です!オレ、もうすぐ卒業するから、今の時期はそんなに忙しくないんです。だから明日も必ず来ますね!」
「いや、だから」
「どういう本が好きですか?ソフトカバーですか?それともハードカバーですか?あ、それとも巻物派ですか?」
「私の話を…」
彼がぺらぺらと話し続けるので、カノはもう何か言うのを諦めた。
この小さな天使はいったいどういうつもりなのだろう。
突然新しい気配を感じたので、何かと思ったら、現れたのはこどもの天使だった。
否、実際には青年と呼ばれる歳なのだろうが、千近く生きている自分からすれば、生まれたての赤ん坊のようにか弱い存在にしか見えなかった。
彼は整った顔立ちで、爽やかな雰囲気をまとっていた。特に、さらさらの黒髪と意志の強そうな黒い目が珍しいと思った。
天使はもっと色素が薄い生き物だが、これだけ明るくておしゃべりなので、普通と違っていてもよっぽど大切に育てられたのだろうと容易に推測できた。
「…君、今日は帰りなさい。そして、もうここに来てはいけないよ」
カノが突き放すように背を向けて言いながら、神殿の奥に姿を消した。
「カノさん!オレ、明日も絶対来ますから!」
トオトセの声だけが虚しく響く…。
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