5 / 16
໒꒱
しおりを挟む
「じゃあ、天使ですか?でも、あなたには翼がない…どうして?」
「…ひとの正体を探る前に、まず君から名乗るべきではないのかい?それが礼儀というものだよ」
「すみません…!オレは、トオトセと言います。あなたの名前を伺っても?」
「…カノだ。…翼は今は、ない」
「今は…?」
カノはそれ以上、教えてくれなかったので、トオトセも話題を変えることにした。
「カノさんはどうしてここにいるんですか?ここに置いてある本はすべて神の言葉で書かれているようですが、読めるんですか?」
「……ここは私の家のようなものだ。長いこと住んでいれば、嫌でも読めるようになるさ」
「え、すごい!神様じゃないのに、神の言葉が読めるということは上級天使なんですね!」
チトセから聞いたことがある。
上級天使は神様を支える役目なので、必ず神の言葉を習得しなければならず、神の言葉を読めるのは天使の中でも上級天使だけなのだと。
どおりでただ者ではないと感じたわけだ。
「…カノさんは上級天使だけど、翼がないんですよね?もうずっとここから出ることもなく、誰にも会ってないんですか?」
「…ああ、そうだな。ここにある本すべて読み終わるくらい、長いことこの場所に閉じ込められているな。…そろそろ新しい本でも読みたいものだ」
にわかには信じがたい話だった。
ここには星の数ほどの本がある。
全部読み終わるには膨大な時間がかかったはずだ。
その間ずっと孤独な日々を送っていたなんて、トオトセだったら耐えられない。本を読み終わる前に狂っていただろう。
カノがどれだけ寂しく辛かったかを想像すると、胸が苦しくなった。
「…だったら、オレ、カノさんのために毎日新しい本を持って来ます!それから話し相手にもなります!毎日読書だけじゃ、つまらないでしょう?」
「…君、本気かい?見たところ学生のようだが、毎日境界に来れるほど暇でもないだろ。…ここで見たこと聞いたことはすべて忘れなさい」
「大丈夫です!オレ、もうすぐ卒業するから、今の時期はそんなに忙しくないんです。だから明日も必ず来ますね!」
「いや、だから」
「どういう本が好きですか?ソフトカバーですか?それともハードカバーですか?あ、それとも巻物派ですか?」
「私の話を…」
彼がぺらぺらと話し続けるので、カノはもう何か言うのを諦めた。
この小さな天使はいったいどういうつもりなのだろう。
突然新しい気配を感じたので、何かと思ったら、現れたのはこどもの天使だった。
否、実際には青年と呼ばれる歳なのだろうが、千近く生きている自分からすれば、生まれたての赤ん坊のようにか弱い存在にしか見えなかった。
彼は整った顔立ちで、爽やかな雰囲気をまとっていた。特に、さらさらの黒髪と意志の強そうな黒い目が珍しいと思った。
天使はもっと色素が薄い生き物だが、これだけ明るくておしゃべりなので、普通と違っていてもよっぽど大切に育てられたのだろうと容易に推測できた。
「…君、今日は帰りなさい。そして、もうここに来てはいけないよ」
カノが突き放すように背を向けて言いながら、神殿の奥に姿を消した。
「カノさん!オレ、明日も絶対来ますから!」
トオトセの声だけが虚しく響く…。
「…ひとの正体を探る前に、まず君から名乗るべきではないのかい?それが礼儀というものだよ」
「すみません…!オレは、トオトセと言います。あなたの名前を伺っても?」
「…カノだ。…翼は今は、ない」
「今は…?」
カノはそれ以上、教えてくれなかったので、トオトセも話題を変えることにした。
「カノさんはどうしてここにいるんですか?ここに置いてある本はすべて神の言葉で書かれているようですが、読めるんですか?」
「……ここは私の家のようなものだ。長いこと住んでいれば、嫌でも読めるようになるさ」
「え、すごい!神様じゃないのに、神の言葉が読めるということは上級天使なんですね!」
チトセから聞いたことがある。
上級天使は神様を支える役目なので、必ず神の言葉を習得しなければならず、神の言葉を読めるのは天使の中でも上級天使だけなのだと。
どおりでただ者ではないと感じたわけだ。
「…カノさんは上級天使だけど、翼がないんですよね?もうずっとここから出ることもなく、誰にも会ってないんですか?」
「…ああ、そうだな。ここにある本すべて読み終わるくらい、長いことこの場所に閉じ込められているな。…そろそろ新しい本でも読みたいものだ」
にわかには信じがたい話だった。
ここには星の数ほどの本がある。
全部読み終わるには膨大な時間がかかったはずだ。
その間ずっと孤独な日々を送っていたなんて、トオトセだったら耐えられない。本を読み終わる前に狂っていただろう。
カノがどれだけ寂しく辛かったかを想像すると、胸が苦しくなった。
「…だったら、オレ、カノさんのために毎日新しい本を持って来ます!それから話し相手にもなります!毎日読書だけじゃ、つまらないでしょう?」
「…君、本気かい?見たところ学生のようだが、毎日境界に来れるほど暇でもないだろ。…ここで見たこと聞いたことはすべて忘れなさい」
「大丈夫です!オレ、もうすぐ卒業するから、今の時期はそんなに忙しくないんです。だから明日も必ず来ますね!」
「いや、だから」
「どういう本が好きですか?ソフトカバーですか?それともハードカバーですか?あ、それとも巻物派ですか?」
「私の話を…」
彼がぺらぺらと話し続けるので、カノはもう何か言うのを諦めた。
この小さな天使はいったいどういうつもりなのだろう。
突然新しい気配を感じたので、何かと思ったら、現れたのはこどもの天使だった。
否、実際には青年と呼ばれる歳なのだろうが、千近く生きている自分からすれば、生まれたての赤ん坊のようにか弱い存在にしか見えなかった。
彼は整った顔立ちで、爽やかな雰囲気をまとっていた。特に、さらさらの黒髪と意志の強そうな黒い目が珍しいと思った。
天使はもっと色素が薄い生き物だが、これだけ明るくておしゃべりなので、普通と違っていてもよっぽど大切に育てられたのだろうと容易に推測できた。
「…君、今日は帰りなさい。そして、もうここに来てはいけないよ」
カノが突き放すように背を向けて言いながら、神殿の奥に姿を消した。
「カノさん!オレ、明日も絶対来ますから!」
トオトセの声だけが虚しく響く…。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜
𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。
だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。
そこで出逢った簫 完陽に料理人を料理を教えてもらうことに。
そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?!
料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風料理BLファンタジー。ここに開幕!

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる