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そのひとは柱にもたれかかって、床に脚を投げ出して座っていた。金の長い長い髪が床で渦を描く。
そばには古くて分厚い本が積まれており、いくつもの小さな柱が立っていた。
ぱらりと白い指が本を捲る。
どうやらかなりの読書好きらしいが、どこかつまらなさそうな表情をしている。文字を追う横顔とつややかな髪が夕陽に照らされて、宝石のように輝く。
その光景は、それこそ本の挿絵のように美しかった。
ずっと眺めていたい。
何を読んだら、こんなに知的できれいになれるのだろう。
義兄も容姿端麗で、このひととは対照的な白銀の髪と鋭い瞳を持っていた。チトセ級の美形はそうそういないだろうなと思っていたが、まさかこんな所に隠れていたなんて。
「…はぁ」
思わず甘い吐息が溢れる。
このひとはいったい何者なのだろうか?
天使のような見た目をしているが、トオトセのように頭上の輪も白い翼も持っていない。もちろん悪魔のように、鋭い角も黒いこうもり型の翼も持たない。
もしかして、神様とか?神様が気まぐれでこんな所にひとりでいるのだろうか?
「そこにいるのは誰だい?」
ぱたり。
突然本が閉じられた。
トオトセはどきりとする。
ずっと熱い視線を向けていたので、ばれてしまったようだ。
中性的な顔立ちに長い髪だったので、性別がどちらかは分からなかったが、声を聞いて確信した。彼は男だった。
「……」
「……」
トオトセは迷った末に、柱の影からそっと顔を半分だけ覗かせた。こんな美人相手に、何を言えばいいのか全く分からない。
二人の間に沈黙が流れる。
しかし、トオトセは彼の美貌に見惚れていたので、まったく苦ではなかった。やはりきれいなものは真正面から見てもきれいだった。
「…天使がなぜこんな所へ?ここは天界と魔界の境界だろう、まさか知らなかったわけではあるまい」
「…散歩をしていたら偶然たどり着きました。そういうあなたは…神様ですか…?」
彼が立ち上がってこちらに近づいて来たので、トオトセも柱の影から姿を現した。
「君には私が神に見えるのか?」
「はい…違いますか?」
「…私が神だったら、今頃こんな所にはいないさ」
彼は自嘲気味に答えた。本を読んでいる時と表情が似ている。
そばには古くて分厚い本が積まれており、いくつもの小さな柱が立っていた。
ぱらりと白い指が本を捲る。
どうやらかなりの読書好きらしいが、どこかつまらなさそうな表情をしている。文字を追う横顔とつややかな髪が夕陽に照らされて、宝石のように輝く。
その光景は、それこそ本の挿絵のように美しかった。
ずっと眺めていたい。
何を読んだら、こんなに知的できれいになれるのだろう。
義兄も容姿端麗で、このひととは対照的な白銀の髪と鋭い瞳を持っていた。チトセ級の美形はそうそういないだろうなと思っていたが、まさかこんな所に隠れていたなんて。
「…はぁ」
思わず甘い吐息が溢れる。
このひとはいったい何者なのだろうか?
天使のような見た目をしているが、トオトセのように頭上の輪も白い翼も持っていない。もちろん悪魔のように、鋭い角も黒いこうもり型の翼も持たない。
もしかして、神様とか?神様が気まぐれでこんな所にひとりでいるのだろうか?
「そこにいるのは誰だい?」
ぱたり。
突然本が閉じられた。
トオトセはどきりとする。
ずっと熱い視線を向けていたので、ばれてしまったようだ。
中性的な顔立ちに長い髪だったので、性別がどちらかは分からなかったが、声を聞いて確信した。彼は男だった。
「……」
「……」
トオトセは迷った末に、柱の影からそっと顔を半分だけ覗かせた。こんな美人相手に、何を言えばいいのか全く分からない。
二人の間に沈黙が流れる。
しかし、トオトセは彼の美貌に見惚れていたので、まったく苦ではなかった。やはりきれいなものは真正面から見てもきれいだった。
「…天使がなぜこんな所へ?ここは天界と魔界の境界だろう、まさか知らなかったわけではあるまい」
「…散歩をしていたら偶然たどり着きました。そういうあなたは…神様ですか…?」
彼が立ち上がってこちらに近づいて来たので、トオトセも柱の影から姿を現した。
「君には私が神に見えるのか?」
「はい…違いますか?」
「…私が神だったら、今頃こんな所にはいないさ」
彼は自嘲気味に答えた。本を読んでいる時と表情が似ている。
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