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たっぷりと二度を寝した後、再びのそのそと起き上がった。
帰って来た時に、私服だったら学校をさぼったことがもろにばれてしまうので、白のブレザーに着替える。
机の上に置いてあった果物をぱっと掴むと、窓から飛び立った。
白く大きな翼が気持ちよさそうに、空いっぱいに広がる。
宙を漂いながら、果物を一口かじった。
今日はどうしようかと頭の中で計画を立てる。
天界はある程度隅々まで見て回ったので、そろそろ飽きてきた頃だ。思い切って天界の外に出てみようか。
天界の外には悪魔がいるらしい。
トオトセみたいな下級天使は神聖な力がまだ弱いので、悪魔と接触するとその邪悪な力に負けて堕天してしまうと学校で習ったが、本当かよと思う。
そんなちょっと接触しただけで堕天するなら、今頃天使なんてとっくに絶滅しているだろ。それにオレは特別天使の輪がきれいだから、そこらへんのざこ悪魔なんかには負けない。
ちょっとくらいなら外に出たって大丈夫だろ。
彼は若者特有の根拠のない自信に満ち溢れていたので、大人達の言葉を軽んじてしまい、天界の外を目指すのであった。
「…なんだよ、何もねーじゃんかよ」
空を飛ぶこと、数時間。
ずいぶん遠くまで来たはずなのに、なぜか大人達が言っていたような悪魔はどこにも見当たらなかった。
教科書でしか見たことはないが、悪魔は頭に角があって、顔もしわくちゃで、こうもりみたいな翼を持っていたはずだ。
しかし、どこにもそれらしき者はなかった。もしいたら倒して、友達に自慢してやろうと思ったのに。
「まさか、ここは境界だから何もないのか?」
天界と魔界の境目。
二つの世界が交わるどっちつかずの空間。
おそらくこの先には魔界があるのだろう。
さすがにそこまで近づくのは、大人に言われなくても危険だと分かるため、トオトセは引き返すことにした。
いつの間にか夕方近くになっていた。そろそろ帰らなければまずい。
もと来た道を引き返していると、来る時には気づかなかったが、ぼんやりと打ち捨てられた神殿のような建物が雲の中に浮かんでいるのが見えた。なんだろうと思って近づき、着地する。
辺りを見回してみると壁という壁はいっさいなく、柱のみで屋根を支えていた。柱も床もすべて水晶でできており、つるつるぴかぴかに輝いている。ここはとても大きな水晶の柱廊だった。
そして、至る所にたくさんの本が積み上がっていたり、宙でくるくる回ったりしていた。
「す、すげえ…」
試しに一冊本を手に取ってめくってみたが、全く読めなかった。他にも確認してみたが、どうやら全て「神の言葉」で書かれているらしい。
ここは神様専用の施設なのだろうか。いや、でも、神様は天界の一番高いところに住んでいるはず。こんな所に来るなんてありえるのか。
そんなことを考えながら奥に進むと、誰かがそこで本を読む姿を見つけた。
トオトセはその幻想的な美しさに、あっさりと目と心を奪われてしまう。
帰って来た時に、私服だったら学校をさぼったことがもろにばれてしまうので、白のブレザーに着替える。
机の上に置いてあった果物をぱっと掴むと、窓から飛び立った。
白く大きな翼が気持ちよさそうに、空いっぱいに広がる。
宙を漂いながら、果物を一口かじった。
今日はどうしようかと頭の中で計画を立てる。
天界はある程度隅々まで見て回ったので、そろそろ飽きてきた頃だ。思い切って天界の外に出てみようか。
天界の外には悪魔がいるらしい。
トオトセみたいな下級天使は神聖な力がまだ弱いので、悪魔と接触するとその邪悪な力に負けて堕天してしまうと学校で習ったが、本当かよと思う。
そんなちょっと接触しただけで堕天するなら、今頃天使なんてとっくに絶滅しているだろ。それにオレは特別天使の輪がきれいだから、そこらへんのざこ悪魔なんかには負けない。
ちょっとくらいなら外に出たって大丈夫だろ。
彼は若者特有の根拠のない自信に満ち溢れていたので、大人達の言葉を軽んじてしまい、天界の外を目指すのであった。
「…なんだよ、何もねーじゃんかよ」
空を飛ぶこと、数時間。
ずいぶん遠くまで来たはずなのに、なぜか大人達が言っていたような悪魔はどこにも見当たらなかった。
教科書でしか見たことはないが、悪魔は頭に角があって、顔もしわくちゃで、こうもりみたいな翼を持っていたはずだ。
しかし、どこにもそれらしき者はなかった。もしいたら倒して、友達に自慢してやろうと思ったのに。
「まさか、ここは境界だから何もないのか?」
天界と魔界の境目。
二つの世界が交わるどっちつかずの空間。
おそらくこの先には魔界があるのだろう。
さすがにそこまで近づくのは、大人に言われなくても危険だと分かるため、トオトセは引き返すことにした。
いつの間にか夕方近くになっていた。そろそろ帰らなければまずい。
もと来た道を引き返していると、来る時には気づかなかったが、ぼんやりと打ち捨てられた神殿のような建物が雲の中に浮かんでいるのが見えた。なんだろうと思って近づき、着地する。
辺りを見回してみると壁という壁はいっさいなく、柱のみで屋根を支えていた。柱も床もすべて水晶でできており、つるつるぴかぴかに輝いている。ここはとても大きな水晶の柱廊だった。
そして、至る所にたくさんの本が積み上がっていたり、宙でくるくる回ったりしていた。
「す、すげえ…」
試しに一冊本を手に取ってめくってみたが、全く読めなかった。他にも確認してみたが、どうやら全て「神の言葉」で書かれているらしい。
ここは神様専用の施設なのだろうか。いや、でも、神様は天界の一番高いところに住んでいるはず。こんな所に来るなんてありえるのか。
そんなことを考えながら奥に進むと、誰かがそこで本を読む姿を見つけた。
トオトセはその幻想的な美しさに、あっさりと目と心を奪われてしまう。
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