ヒカルカ「永い眠りより目醒めし 絆」

わくらば編

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　祓除学校では文字どおり、異形を祓い除く術を学ぶ。少しづつ友好を取り戻そうとしていると言っても、まだまだ緊張状態は続いており、互いに入国を制限していた。
　終戦後から、日本では人間を獲物としか思っていないような異形や異人が不法入国したり、報復目的で無差別に人を襲ったりする事件が急増していた。
　そもそも、世界大戦が始まる前の日本における異形討伐の二大労働力は、陰陽師と異人だった。その異人が月本に帰って日本からきれいさっぱり消え、全ての皺寄せが陰陽師に行くこととなった。
　ところが、律令制度が施行されていた時代から日本には陰陽師がいたわけだが、彼らは明治時代に西洋のグレゴリウス暦が登場したことによって既に衰退していた。陰陽師の主な仕事の一つは暦を作成することだったので、その仕事を奪われて社会的地位が下がり、自ら陰陽師を辞める者も少なくなかったのだ。当たり前のことだが、残された者達だけでは到底全ての異形を退くことは不可能であった。
　陰陽師の数が激減し、異人という戦力も失った後で、日本はやっと治安を維持できなくなっていることに気づいた。されど、いまさら陰陽師を増やすこともできなかった。彼らは先祖の代より神と契約して神力を借りて異形を退治するので、誰も彼もがなれるわけではなく、もはや全国的に見ても一万人程度しか残されていなかった。
　そこで朝鮮戦争(1950~53)が勃発したのをきっかけに、1950年に警察予備隊(のちの自衛隊)と祓除隊が創隊された。
　本土に駐留していた米軍が駆り出されて、日本には軍事的空白が生じてしまい、このままでは外国から攻撃される恐れがあったし、国内でも異形に侵略される可能性があったので、その空白を埋めるべくこの二隊が創られた。
　祓除官は異形討伐の人手不足を補う形で創られたのである。
　祓除官は陰陽師とは異なり、家柄や信仰する神は一切関係ない。全くの素人ばかりが集められ、一から教えてもらえる。誰でもなれる可能性があった。
　そして現代では祓除学校で二年間厳しい訓練と研修に耐え抜いた暁には、付喪神が宿る武器を貸与される。この付喪神が霊力を発揮して、人ならざるものを祓ってくれるのだ。

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【補足】
・異形:科学では説明がつかない不思議な存在で、人を喰らうものもいれば友好的なものもいる。長い年月を経て異人になることができる。いわゆるあやかし、妖怪の類。知能の高さはまちまち。
・異人:異形の中でも人と意思疎通ができ、とても高い知能を持つ者。たいてい人型に近い容姿であることが多い。昔は人間と共存していたが、今や操異術を恐れて人間を憎んでいる。