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同時刻、別邸の前ではリサと使用人の男が揉めていた。
「最近、リョウ様に会えてないんだけど。別邸にいらっしゃるんでしょ?早く会わせなさいよ」
大きな胸を強調するように、胸元がざっくりと開いた赤いドレスを身に纏い、髪を高く結ったリサが、これまた高圧的な態度で問いただした。
「リサ様、お許しください。旦那様からは誰も別邸に近づけるなと命じられております」
使用人は娼婦風情が偉そうにと思いながらも、顔には出さないように、にこやかに答える。使用人の間では、リサの評判は最悪だった。
「何よ、ちょっとくらいいいじゃない。さっさと、どきなさいよ。それとも何か隠してるわけ?」
彼女が強引に押し入ろうとするので、使用人は慌てて阻止する。
「リ、リサ様おやめください!旦那様に叱られてしまいます!」
「やっぱり、何か隠してるのね!新しい女でしょ!」
リサは勢いよく彼を突き飛ばし、階段を駆け上がる。後ろで悲鳴が聞こえたが、構うものか。
二階に上がると、何やらきゃらきゃらと楽しそうに笑う声が聞こえた。やはり、彼は新しい女を作ったようだ。
この目で顔を見てやると忍び足でその部屋に近づき、そっと扉の隙間から中を覗き見る。
「もう、下ろしてってば!」
リサはカノが青年を抱えて戯れる姿を見て、愕然とした。
信じられない。
ようやく死んだ奥さんのことを忘れてくれてよかったと思っていたところだったのに、今度は男の愛人ですって?
女でもない男に負けたっていうの?
このあたしが?
リサは壁に爪を食い込ませながら、二人を観察し続ける。
青年はやや小柄で痩せ細っており、お世辞にも抱き心地がよさそうとは言えなかった。
カノはいったいこの男の何がいいのだろうと、リサは理解不能に陥った。強いて言えば、ちょっと顔がかわいいぐらいで、何も特別な魅力は感じられない。
美しさなら、誰にも負けない自信があったのに。
高級化粧品を買い漁り、定期的にヒロにも魔法で肌の細胞を修復させている。もっというなら、カノと出会うよりもずっと前に、顔自体を魔法で変えている。
お金も時間もたっぷりかけているのだから、誰よりもカノにふさわしいはずだった。
それにも関わらず、どうしてそんな貧相な男を選ぶのだろう。自分の何が気に食わないというのか。
悔しさと憎しみが込み上げて自分が呼吸しているのかさえ分からなくなりかけたが、ふとある考えが頭の中に浮かぶと、たちまち心が軽くなった。
そうだ、邪魔者は殺してやればいい。
簡単なことだ。
リョウ様とあたしの邪魔をするやつは何人たりとも許さない。
この世から消してやる。
リョウ様に色仕掛けしたことを後悔させてやる…。
「ラン、一緒にお昼を食べようか」
「うん…!」
カノがやっとトオトセを床に下ろす。
しかし、ふたりは離れるどころか、手を取り合ってじっと見つめ合う始末。そこだけ特別な甘ったるい空間ができあがっていた。
「…っ!」
彼はあたしだけのものなのにと忌々しく思いながら、リサは急いでその場から立ち去った。
「最近、リョウ様に会えてないんだけど。別邸にいらっしゃるんでしょ?早く会わせなさいよ」
大きな胸を強調するように、胸元がざっくりと開いた赤いドレスを身に纏い、髪を高く結ったリサが、これまた高圧的な態度で問いただした。
「リサ様、お許しください。旦那様からは誰も別邸に近づけるなと命じられております」
使用人は娼婦風情が偉そうにと思いながらも、顔には出さないように、にこやかに答える。使用人の間では、リサの評判は最悪だった。
「何よ、ちょっとくらいいいじゃない。さっさと、どきなさいよ。それとも何か隠してるわけ?」
彼女が強引に押し入ろうとするので、使用人は慌てて阻止する。
「リ、リサ様おやめください!旦那様に叱られてしまいます!」
「やっぱり、何か隠してるのね!新しい女でしょ!」
リサは勢いよく彼を突き飛ばし、階段を駆け上がる。後ろで悲鳴が聞こえたが、構うものか。
二階に上がると、何やらきゃらきゃらと楽しそうに笑う声が聞こえた。やはり、彼は新しい女を作ったようだ。
この目で顔を見てやると忍び足でその部屋に近づき、そっと扉の隙間から中を覗き見る。
「もう、下ろしてってば!」
リサはカノが青年を抱えて戯れる姿を見て、愕然とした。
信じられない。
ようやく死んだ奥さんのことを忘れてくれてよかったと思っていたところだったのに、今度は男の愛人ですって?
女でもない男に負けたっていうの?
このあたしが?
リサは壁に爪を食い込ませながら、二人を観察し続ける。
青年はやや小柄で痩せ細っており、お世辞にも抱き心地がよさそうとは言えなかった。
カノはいったいこの男の何がいいのだろうと、リサは理解不能に陥った。強いて言えば、ちょっと顔がかわいいぐらいで、何も特別な魅力は感じられない。
美しさなら、誰にも負けない自信があったのに。
高級化粧品を買い漁り、定期的にヒロにも魔法で肌の細胞を修復させている。もっというなら、カノと出会うよりもずっと前に、顔自体を魔法で変えている。
お金も時間もたっぷりかけているのだから、誰よりもカノにふさわしいはずだった。
それにも関わらず、どうしてそんな貧相な男を選ぶのだろう。自分の何が気に食わないというのか。
悔しさと憎しみが込み上げて自分が呼吸しているのかさえ分からなくなりかけたが、ふとある考えが頭の中に浮かぶと、たちまち心が軽くなった。
そうだ、邪魔者は殺してやればいい。
簡単なことだ。
リョウ様とあたしの邪魔をするやつは何人たりとも許さない。
この世から消してやる。
リョウ様に色仕掛けしたことを後悔させてやる…。
「ラン、一緒にお昼を食べようか」
「うん…!」
カノがやっとトオトセを床に下ろす。
しかし、ふたりは離れるどころか、手を取り合ってじっと見つめ合う始末。そこだけ特別な甘ったるい空間ができあがっていた。
「…っ!」
彼はあたしだけのものなのにと忌々しく思いながら、リサは急いでその場から立ち去った。
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