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第Z章

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 卒業後、父の右腕と言う西川さいかわのもとに預けられ、ヤクザとして修行を積み始めた。
 勿論少し前まで遊んでばかりいたので、西川についていくのもやっとだった。そこで心を入れ替え、シノギ方を盗もうと一生懸命に勉強した。他人が酒だ女だと遊んでいる時に、今度は彼が本や新聞などを読み漁った。貪欲に経営・法律の知識を吸収していく。
 二十八歳になると、父に呼び戻されて正式に天童会の若頭として迎え入れられた。任されたシノギだけではなく、次々に新しいシノギを発掘して、組織の発展に大きく貢献した。
 同時に三人の愛人を囲うだけの経済力も持った。彼は父と同じ道を歩もうとしていた。
 三人とも飲み屋で出会ったキャバ嬢やホステスだった。賀野が口説いたと言うよりは、言い寄られて交際が始まったという感じで、別に彼女らでなくても他の女性に言い寄られていれば、その女性を愛人にしていただろう。
 どうせならシノギにしてやろうと、彼女らにスナックを経営させた。初期投資は全て彼が負担したがそれもすぐに回収でき、毎月安定した収益を上げるようになった。
 シノギも、恋愛も何もかもが上手くいっていた。全てが思い描いた通りになる。唯一悲しいことといえば、マリーゴールドが死んだことで、それもバークを生んでくれていたから、徐々に薄れていった。
 賀野は我が子のようにバークを可愛がった。こまめに美容院に連れて行き、常に美しく清潔であるように保った。
 そしてバークがきっかけで、妻と出会った。彼女がバーク行きつけの美容院で新しく働き始めたのだ。見たこともない美人だった。彼は一目で心を奪われ、すぐに愛人達と縁を切り、あの手この手を尽くして彼女を手に入れようとした。
 ところがちっとも上手くいかなかった。連絡先を聞いても、デートに誘っても、プレゼントを贈っても全て遠回しに断られた。
 簡単に手に入ると思っていた彼は、燃えに燃えた。好きは好きだったのだろうけれど、途中から半分は面子の為にも彼女を落とそうと躍起になっていた。
 いっそのこと、攫ってしまおうか…いやいやそれではますます嫌われてしまう…などと考えているうちに、彼女のもう一つの顔を知ることに。
 ある日、管轄地区のクラブで揉め事が発生したと連絡を受け、急いで駆け付けると彼女がいた。
 これは好機だと問題客を叩き出し、彼女と飲んでみると少しだけ自分のことを話してくれた。それが嬉しくて、正和のように足繁くクラブに通った。助けられた恩も感じてか、間もなくして二人は交際を始めた。
 そして三十一で一家名乗りをした時、彼女と結婚する。
 されど、その幸せは長くは続かなかった。妻は二年後に病で儚くもこの世去り、賀野を独りにしてしまったのだ。
 結局賀野は日々シノギを拡大させることで妻を失った悲しみを紛らわすしかなく、十才の登場により、四十四で逮捕された…。
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