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第Y章
◆◆◆◆◆
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「ちょ、パパ、何するの!?今いいところなんだけど!」
「君にはまだ早いから見ちゃだめ」
「嘘ばっかり!キスならいつもしてるじゃん、ちょっともう!」
片手で必死に賀野の手を剥がそうとする彼がおもしろくて、くすくすと笑ってしまった。
キス・シーンの流れかと思って賀野は悪戯を仕掛けたのだが、実際はベネディクトがふいと顔を逸らしたことでそれは叶わず、二人はただ抱き合って仲直りをしているに過ぎなかった。
だが、彼はじたばたする鸞がおかしくて、場面が完全に切り替わるまで手をどかさなかった。
「もう見てもいいよ」
「もう、さっきからパパはなんで邪魔ばっかりするの⁉︎頭をかいだり目を隠したり!何が起こったのか見えなかったじゃん!」
「…そんなに知りたいなら、私が教えてやろうか?」
鸞をベッドヘッドの反対側に優しく寝かせると、上に覆い被さった。
二人の目がばっちりかち合う。
やはり賀野の甘い視線攻撃に耐えられなくなって、先にそっぽを向いたのは鸞だった。
「…いいっ、巻き戻しするから!」
「賢いな、そんなものまで使いこなせるのか」
すかさずリモコンを奪って後ろに投げる。
「それぐらい誰でもできるし、返して!」
初めてのキスはコーラ味だった。
二人の唇が優しく重なったかと思えば、次の瞬間には賀野がそっと離した。
「…っ!」
鸞は顔を真っ赤にさせて文句を言おうとしたが、そうはさせまいと再び彼に唇を奪われる。
そして何度も鳥のように啄ばまれ、成す術のない鸞もとうとう観念し、目を閉じて大人しく受け入れた。
キスがこんなにも恥ずかしくて、甘くて、心地いいものだとは知らなかった…。
もはやベネディクト達が何を話しているのか、全く聞こえなくなっていた。
賀野は彼の唇を食みながら寝間着の間に手を忍ばせ、肋骨が浮き出る脇腹を撫でた。
しばらくしてようやく唇から離れたと思ったら、今度は首筋に顔を埋めてそこにもキスをする。腹や腰を触られてくすぐったそうに捩りながら、彼が抗議する。
「本当にこんなことしてたの?」
「ああ、本当だよ。キスしてこんなふうに体を触ってたんだよ」
いけしゃあしゃあと嘘を吐く間も、無抵抗の彼の体を遠慮なく撫で回す。
「分かったからもうやめて、オレ、そこを触られるのは好きじゃない…!」
敏感なのだろう、鸞が眉を顰めた。
これ以上は怒られそうだという辺りで彼も手を止めて、最後にもう一度キスをした。映画はさらに十分ほど進み、鸞は完全に置いてけぼりを喰らう。
「今日はもう触らないでね、最後まで見たいから!」
もちろん、彼がそれで大人しく引き下がるわけもなく、再び鸞を抱き寄せる。
「はいはい、ごめんごめん。でもそんなに怒ることもないだろ」
「はいは一回!ごめんも一回!」
それでまた賀野は吹き出すのだった。
ーーーーー
【余談】
家族に「映画は何を見て、何を食べるべきだと思う?」と聞いたら、「BLなんだから、AVを見て媚薬を飲むべきでしょ」って言われて耳を疑った。
「君にはまだ早いから見ちゃだめ」
「嘘ばっかり!キスならいつもしてるじゃん、ちょっともう!」
片手で必死に賀野の手を剥がそうとする彼がおもしろくて、くすくすと笑ってしまった。
キス・シーンの流れかと思って賀野は悪戯を仕掛けたのだが、実際はベネディクトがふいと顔を逸らしたことでそれは叶わず、二人はただ抱き合って仲直りをしているに過ぎなかった。
だが、彼はじたばたする鸞がおかしくて、場面が完全に切り替わるまで手をどかさなかった。
「もう見てもいいよ」
「もう、さっきからパパはなんで邪魔ばっかりするの⁉︎頭をかいだり目を隠したり!何が起こったのか見えなかったじゃん!」
「…そんなに知りたいなら、私が教えてやろうか?」
鸞をベッドヘッドの反対側に優しく寝かせると、上に覆い被さった。
二人の目がばっちりかち合う。
やはり賀野の甘い視線攻撃に耐えられなくなって、先にそっぽを向いたのは鸞だった。
「…いいっ、巻き戻しするから!」
「賢いな、そんなものまで使いこなせるのか」
すかさずリモコンを奪って後ろに投げる。
「それぐらい誰でもできるし、返して!」
初めてのキスはコーラ味だった。
二人の唇が優しく重なったかと思えば、次の瞬間には賀野がそっと離した。
「…っ!」
鸞は顔を真っ赤にさせて文句を言おうとしたが、そうはさせまいと再び彼に唇を奪われる。
そして何度も鳥のように啄ばまれ、成す術のない鸞もとうとう観念し、目を閉じて大人しく受け入れた。
キスがこんなにも恥ずかしくて、甘くて、心地いいものだとは知らなかった…。
もはやベネディクト達が何を話しているのか、全く聞こえなくなっていた。
賀野は彼の唇を食みながら寝間着の間に手を忍ばせ、肋骨が浮き出る脇腹を撫でた。
しばらくしてようやく唇から離れたと思ったら、今度は首筋に顔を埋めてそこにもキスをする。腹や腰を触られてくすぐったそうに捩りながら、彼が抗議する。
「本当にこんなことしてたの?」
「ああ、本当だよ。キスしてこんなふうに体を触ってたんだよ」
いけしゃあしゃあと嘘を吐く間も、無抵抗の彼の体を遠慮なく撫で回す。
「分かったからもうやめて、オレ、そこを触られるのは好きじゃない…!」
敏感なのだろう、鸞が眉を顰めた。
これ以上は怒られそうだという辺りで彼も手を止めて、最後にもう一度キスをした。映画はさらに十分ほど進み、鸞は完全に置いてけぼりを喰らう。
「今日はもう触らないでね、最後まで見たいから!」
もちろん、彼がそれで大人しく引き下がるわけもなく、再び鸞を抱き寄せる。
「はいはい、ごめんごめん。でもそんなに怒ることもないだろ」
「はいは一回!ごめんも一回!」
それでまた賀野は吹き出すのだった。
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【余談】
家族に「映画は何を見て、何を食べるべきだと思う?」と聞いたら、「BLなんだから、AVを見て媚薬を飲むべきでしょ」って言われて耳を疑った。
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