ガランド・マカロン「特別な人編」

さすらいの侍

文字の大きさ
上 下
39 / 49
第Y章

◆◆◆◆◆

しおりを挟む
 「ちょ、パパ、何するの!?今いいところなんだけど!」
 「君にはまだ早いから見ちゃだめ」
 「嘘ばっかり!キスならいつもしてるじゃん、ちょっともう!」
 片手で必死に賀野の手を剥がそうとする彼がおもしろくて、くすくすと笑ってしまった。
 キス・シーンの流れかと思って賀野は悪戯を仕掛けたのだが、実際はベネディクトがふいと顔を逸らしたことでそれは叶わず、二人はただ抱き合って仲直りをしているに過ぎなかった。
 だが、彼はじたばたする鸞がおかしくて、場面が完全に切り替わるまで手をどかさなかった。
 「もう見てもいいよ」
 「もう、さっきからパパはなんで邪魔ばっかりするの⁉︎頭をかいだり目を隠したり!何が起こったのか見えなかったじゃん!」
 「…そんなに知りたいなら、私が教えてやろうか?」
 鸞をベッドヘッドの反対側に優しく寝かせると、上に覆い被さった。
 二人の目がばっちりかち合う。
 やはり賀野の甘い視線攻撃に耐えられなくなって、先にそっぽを向いたのは鸞だった。
 「…いいっ、巻き戻しするから!」
 「賢いな、そんなものまで使いこなせるのか」
 すかさずリモコンを奪って後ろに投げる。
 「それぐらい誰でもできるし、返して!」
 初めてのキスはコーラ味だった。
 二人の唇が優しく重なったかと思えば、次の瞬間には賀野がそっと離した。
 「…っ!」
 鸞は顔を真っ赤にさせて文句を言おうとしたが、そうはさせまいと再び彼に唇を奪われる。
 そして何度も鳥のように啄ばまれ、成す術のない鸞もとうとう観念し、目を閉じて大人しく受け入れた。
 キスがこんなにも恥ずかしくて、甘くて、心地いいものだとは知らなかった…。
 もはやベネディクト達が何を話しているのか、全く聞こえなくなっていた。
 賀野は彼の唇を食みながら寝間着の間に手を忍ばせ、肋骨が浮き出る脇腹を撫でた。
 しばらくしてようやく唇から離れたと思ったら、今度は首筋に顔を埋めてそこにもキスをする。腹や腰を触られてくすぐったそうに捩りながら、彼が抗議する。
 「本当にこんなことしてたの?」
 「ああ、本当だよ。キスしてこんなふうに体を触ってたんだよ」
 いけしゃあしゃあと嘘を吐く間も、無抵抗の彼の体を遠慮なく撫で回す。
 「分かったからもうやめて、オレ、そこを触られるのは好きじゃない…!」
 敏感なのだろう、鸞が眉を顰めた。
 これ以上は怒られそうだという辺りで彼も手を止めて、最後にもう一度キスをした。映画はさらに十分ほど進み、鸞は完全に置いてけぼりを喰らう。
 「今日はもう触らないでね、最後まで見たいから!」
 もちろん、彼がそれで大人しく引き下がるわけもなく、再び鸞を抱き寄せる。
 「はいはい、ごめんごめん。でもそんなに怒ることもないだろ」
 「はいは一回!ごめんも一回!」
 それでまた賀野は吹き出すのだった。
ーーーーー
【余談】
 家族に「映画は何を見て、何を食べるべきだと思う?」と聞いたら、「BLなんだから、AVを見て媚薬を飲むべきでしょ」って言われて耳を疑った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...